赤ちゃんの目の病気:白内障 – いろいろなタイプと対処法

赤ちゃんが生まれた時、親としては赤ちゃんの健やかな成長が気にかかるものです。しかし赤ちゃんは自分で異常を訴えることが難しいので、なかなか気づきにくいところがあります。その中でも赤ちゃんの目の健康や、どのような目の病気があるのか、またそれらに対してどのように対処すればいいのか、理解している方は多くありません。

赤ちゃんの目の病気の中でも、注意が必要なのは白内障です。白内障といえば加齢に伴い現れる病気と思われがちですが、赤ちゃんも白内障となることがあります。この記事では、白内障のタイプや原因、異常の見つけ方や治療法について解説します。異常を見逃さないようにして、赤ちゃんの大切な目を守っていきましょう。

白内障って何?

白内障とは、眼の中のレンズの役割を果たしている水晶体が濁ってしまい、視界がぼやけてしまう病気です。赤ちゃんにとっては、この病気が進行すると視力低下につながり、成長や学習に影響を与える可能性があります。

白内障が起こる理由や要因については、まだはっきりとわかっていませんが、赤ちゃんが白内障になりやすい要素があります。この要素を理解すれば、赤ちゃんの白内障予防や早期発見につながる可能性があります。

白内障が起こる理由

白内障が起こる理由には様々な要因があります。一般的には先天性の白内障が多く、遺伝や染色体異常、子宮の中での感染(風疹など)、全身疾患など理由はさまざまです。その他にも、新生児期に起こる目の病気が発展して白内障が引き起こされることもあります。

白内障は早期発見が大切であり、赤ちゃんの定期的な検診を受けることが推奨されています。赤ちゃんの目に気になる点がある時は、すぐに眼科医に相談することが大切です。

引用)日本小児眼科学会 先天白内障

赤ちゃんが白内障になりやすい要素

赤ちゃんが白内障になる要素はいくつかあります。まず、遺伝的な要素があります。また、妊娠中にお母さんが感染症(風疹・サイトメガロウイルスなど)にかかると、生まれた後に白内障を発症するケースやさまざまな全身疾患・症候群、外傷などに伴って起こるものもあります。

白内障は赤ちゃんでも発症する可能性がある病気です。しかし、早期発見と適切な治療で視機能の低下を防ぐことができます。周囲の人が注意して観察し、定期的に医師の検診を受けることが大切です。

赤ちゃんの目の病気:白内障 - いろいろなタイプと対処法

 先天性白内障

赤ちゃんが生まれた時から白内障であることを「先天性白内障」と言います。赤ちゃんにとっては、視機能を発達させるために大切な時期に白内障であると、視力の発達に問題を生じることがあります。そのため、早期発見・治療が重要となります。

先天性白内障が起こる原因

先天性白内障は、赤ちゃんの眼のレンズの発達が正常に進まなかったり、損傷を受けたりすることによって引き起こされます。具体的な原因はわかっていませんが、以下のような要因が関与していると考えられています。

まず、遺伝的な原因があります。例えば、親のどちらかが先天性白内障である場合、その子供が発症する可能性が高くなります。また、ある種の遺伝子変異や染色体異常が白内障を引き起こすこともあります。次に、母親の妊娠中の疾患や風疹に感染することが原因となることがあります。

以上のような要因が考えられていますが、まだ完全な原因は解明されていません。先天性白内障は予防できないため、早期発見が重要です。定期的な眼科検診や遺伝性が気になる場合は、早めに眼科専門医にご相談ください。

先天性白内障の兆候

赤ちゃんは自覚症状を伝えることができないため、周りの方がしっかり観察することが重要です。以下の兆候に気をつけてみてください。

  • ・白色瞳孔:通常では黒く見える瞳孔が、白色になります。この白い部分は、水晶体が濁っているために生じています。
  • ・斜視:片方の眼の視線がずれているようにみえます。水晶体の白濁でよく見えないため起こります。
  • ・眼振:目が揺れます。こちらも水晶体の白濁で見えにくくなるため起こります。

先天性白内障の兆候は、生後数日から数週間で現れる場合もありますが、発症の時期は様々です。また、片目だけが白内障になることもあるため、赤ちゃんの両目を比較することが重要です。なお、先天性白内障の症状は他の目の病気や先天性疾患と混同されることがあるため、専門医の診断が必要です。

親や周囲の方が赤ちゃんの目をよく観察し、瞳のにごり等気になるところが見られた場合は、早期に眼科を受診することが大切です。早期発見・早期治療が視力の回復につながり、赤ちゃんの成長・発達にとても重要です。

参考)病気がみえる 眼科 p.175 先天白内障

先天性白内障の見つけ方と治し方

先天性白内障の発見方法は、新生児期の定期的な眼科検査が重要です。一般的に、新生児は生後1か月以内に初めての眼科検査を受けます。その後、定期的に検査を受けることが推奨されています。

しかし、検査では見つからなかった場合でも、赤ちゃんが不自然な目の動きをしていたり、瞳の中が白濁している場合は早期に眼科専門医に相談し、適切な検査を受ける必要があります。また、親や兄弟姉妹で先天性白内障の方がいる場合は、出産後すぐに眼科医の受診をした方が良いでしょう。

治療方法は、手術が基本となります。混濁や視機能の発達の程度を評価して手術の適応や時期を決めます。手術は混濁した水晶体と硝子体の前の部分を切除する方法が一般的です。

2歳未満では眼内レンズを挿入しても、眼の成長に伴い度数が合わなくなることが問題となるのでレンズを挿入しないことが多く、術後にコンタクトレンズや無水晶体用眼鏡で屈折調整が必要となります。

2歳以降に白内障が進行した場合は、眼内レンズを挿入の手術をすることもありますが、度数が変化するため、眼鏡による矯正が必要です。また、良い視機能を得るためには、術後の視機能訓練が大切です。家庭でも弱視訓練に取り組むなど医師や視能訓練士の支援で進めていきます。

引用)日本小児眼科学会 先天白内障

赤ちゃんの目の病気:白内障 - いろいろなタイプと対処法

小児白内障

小児白内障は、生後数か月から数年以内に発症する発症する白内障のことを指します。さまざまな原因により通常は透明な水晶体が濁ってしまうことで視力低下を引き起こしてしまいます。しかし、早期発見・治療を行うことで、視力低下を抑えることができます。

小児白内障が起こる原因

原因にはさまざまなものがあります。代表的なものとして

  • ・特発性:白内障の原因がはっきりしない
  • ・遺伝性:ご家族、兄弟姉妹に小児白内障の方がいる
  • ・全身疾患:ダウン症候群や代謝性疾患などに伴うもの

などが挙げられます。特発性では片眼に発症することが多く、遺伝性・全身疾患が原因では両眼に症状が見られます。

引用)日本小児眼科学会 小児の白内障

小児白内障の兆候

小児白内障は、生後数か月から数年で発症することが多く、視力障害が進行する前に早期発見が重要です。小児白内障の兆候には、目の瞳孔が白っぽく見える、目が光るように見える、光に対する反応が遅れる、視線が合わない、斜視(より目)、眼振(眼の揺れ)などが挙げられます。

これらの兆候が見られた場合は、早期治療が必要なため、遅れることなく小児眼科や総合病院の眼科を受診し、専門医の受診をおすすめします。

小児白内障の見つけ方と治し方

小児白内障の見つけ方は、新生児期から目の検査を受けることが重要です。定期健診で眼科検査を受けることができます。また、家庭でも、赤ちゃんの目の様子を注意深く観察し、異常があれば早期に医師に相談することが大切です。

水晶体は、黒目の中心、瞳孔の奥にあります。白い濁りが強いとすぐに異変に気付けますが、部分的な白濁では異常は見つけにくく、斜視や眼振で異常に気が付くこともあります。(黒目の中心部分より外の部分が濁っているものは白内障ではなく角膜の病気です)

治療法には、手術と保守療法の2種類があります。保守療法は、眼帯を使用して弱い眼の視力を強くするトレーニングを行う方法です。手術は、白内障を取り除き、人工レンズを眼に挿入する方法です。

ただし、先天白内障の手術で説明した通り、小さい眼には眼内レンズは大きく、術後のトラブルにもつながることがあります。生後1歳から2歳未満の子どもには合うレンズがないことが多く、術後はコンタクトレンズや特殊な眼鏡で視力の発達を促すことになります。

赤ちゃんの目の病気:白内障 - いろいろなタイプと対処法

早めに気づいて治療が大切

赤ちゃんの白内障は、放置すると弱視につながる可能性があるため、早期に発見し治療を行うことが非常に大切です。特に、赤ちゃんは自分で症状に気づくことができず、家族が早めに気づくことが必要です。早期治療に結びつけるために気を付けることを解説します。

親が見逃さないためのサイン

赤ちゃんの白内障を早期発見するためには、赤ちゃんからの以下のようなサインに注目することが重要です。

  • ・黒目の中心に白い点が見える
  • ・目を動かすと揺れる(眼振)
  • ・より目になっている(斜視)
  • ・目を細める
  • ・光に反応が薄い
  • ・視線が合わない

などがあります。赤ちゃんのこのようなサインに気がついた場合は早急に眼科の医師に相談することが大切です。

眼科の定期検診の大切さ

赤ちゃんの白内障は早期発見が治療の鍵となります。そのため、定期的な眼科検診は非常に重要です。また、検査で他の目の問題も同時に確認できます。

定期検診は、赤ちゃんの目の健康を守るために必要不可欠です。特に、すでに述べてきた先天性白内障や小児白内障の原因に思い当たるところがある場合は、白内障のリスクが高いので定期検診を受けましょう。

まとめ

子どもの視機能は、生後すぐから6、7歳頃までの間に発達すると言われています。そのため、白内障に気付かずそのままにしていると、正常な視力の発達に影響が出る可能性があります。早期に発見し、適切な治療を行うことが、子どもの将来の視力や生活に大きく関わります。

赤ちゃんの目に気になることがあれば、すぐに眼科の受診しましょう。また、定期的な眼科検診も非常に大切です。子どもの成長に合わせて、定期的に検診を受けることで、早期発見・早期治療が可能となります。ぜひ赤ちゃんの健やかな瞳を守るために、気をつけていきましょう。

この記事を書いた人

東岡 えりこ

理学療法士
医療ライター