タイミング法の流れとスケジュール:何を、いつやるべきか 

不妊の悩みは深刻な問題となりつつありますが、その解決策の一つとして「タイミング法」があります。ここでは、タイミング法の基本から具体的なスケジュール、さらには成功しなかった場合の対策まで、総合的に解説します。タイミング法を試してみたいと思っている方や 不妊治療 を考えている方はぜひお読みください。

タイミング法とは?

タイミング法とは、不妊治療の一つであり、女性の排卵日を特定し、そのタイミングで性交渉を持つことを目的とした治療法です。この方法は、特に高度な医療技術や薬物治療が必要ない場合に選択されることが多いです。具体的には、女性の月経周期を把握し、排卵が起こるであろう日を予測し、その日に合わせて性交渉を持つことで、 妊娠 の確率を高めます。

参考)病気がみえる9・婦人科 不妊治療 p.248

タイミング法の基本的な概念

タイミング法の基本的な概念は、女性の「 排卵 周期」を理解し、その周期に合わせて性交渉を計画することです。この方法のメリットは、比較的低コストであり、体への負担も少ない点です。また、自宅での自然な方法で 妊娠 を試みることができるため、精神的なストレスも少ないと言えます。しかし、この方法には限界もあります。例えば、排卵日が不規則であったり、精子や卵子に問題がある場合、成功率は低くなります。そのため、一定期間(通常は約半年)タイミング法で妊娠しない場合は、より高度な不妊治療が必要とされることが多いです。

タイミング法の基礎知識

 タイミング法 に取り組む前に知っておくべき基礎知識について解説します。

排卵周期とは

排卵周期とは、女性の 卵巣 が成熟した 卵子 を放出する周期のことを指します。一般的には、月経の最初の日から次の月経の最初の日までを1周期とし、その平均的な長さは約28日です。この周期は大きく分けて、卵胞期、排卵日、黄体期の3つのフェーズに分かれます。

  1. 卵胞期:  月経 が始まった日から排卵日まで。この期間中に 卵胞 が成熟していきます。
  2. 排卵日: 卵胞が破れ、成熟した 卵子 が放出される日。
  3. 黄体期: 排卵日から次の 月 経が始まるまで。この期間中に妊娠が成立するかどうかが決まります。

排卵周期を理解することは、タイミング法での成功に非常に重要です。周期を把握する方法としては、基礎体温の測定や排卵検査薬の使用が一般的です。

タイミング法の成功率

タイミング法の成功率は、多くの要因に依存しますが、一般的には1回の試行で約10%~20%、半年経過後にはおよそ50%、1年後には大体60%のカップルが妊娠するとされています。とされています。この数字は、排卵日を正確に把握し、その日に性交渉を持った場合の確率です。成功率を高めるためには、以下のポイントが重要です。

  • ・正確な排卵日の把握:  基礎体温 の測定や 排卵検査薬 を用いて、排卵日を正確に特定する。
  • ・適切なタイミングでの性交渉: 排卵日の数日前から当日にかけて、性交渉を持つ。
  • ・健康な生活習慣: ストレスの管理、適度な運動、バランスの良い食事など。

ただし、タイミング法で一定期間(通常は6ヶ月〜1年)成功しない場合、他の不妊治療方法を検討することが推奨されます。

引用)日本産婦人科医会 9・タイミング

タイミング法の流れとスケジュール:何を、いつやるべきか

周期の始め:生理期間中

月経周期の始まり、すなわち生理期間中に何をすべきかについて詳しく説明します。生理の日数を記録する重要性や基礎体温の測定についても触れるのでお読みください。

生理の日数を記録する

 生理 の日数を記録することは、タイミング法で成功するための基本です。生理周期(月経周期)は、生理の第一日から次の生理の第一日までを1周期とします。この周期を正確に把握することで、排卵日を予測しやすくなります。生理の日数とは、生理が始まってから終わるまでの日数です。これを記録することで、自分の月経周期が一定であるか、不規則であるかを知る手がかりになります。特に、生理周期が不規則な場合は、その原因を探るためにも医療機関での相談が必要です。

基礎体温の測定を始める

基礎体温とは、目覚めた直後の口腔の体温を指します。この体温は、排卵日や妊娠の有無によって微妙に変動するため、毎日同じ時間に測定して記録することが推奨されます。基礎体温の測定を始める最適なタイミングは、生理が始まった日です。生理が始まると、体温が下がる傾向にあり、この低い体温が続く「低温期」と呼ばれる期間が始まります。この低温期から体温を測り始めることで、次の排卵日や高温期(排卵後)を正確に把握することが可能です。基礎体温の測定は、専用の体温計を使用し、毎朝起床直後に行うのが一般的です。測定結果は、基礎体温表に記入していくと、自分の体調や周期についての理解が深まるでしょう。

排卵に備える:生理後〜排卵前

生理が終わった後から排卵日までの期間、いわゆる「排卵に備える期間」に何をすべきかについて詳しく説明します。

排卵テストキットの使用

排卵テストキットは、尿中の LH(黄体形成ホルモン) の濃度を測定することで、排卵日を予測するツールです。LHは、排卵の24〜48時間前に急激に増加するため、このホルモンの濃度を測定することで、排卵日をかなり正確に予測することが可能です。排卵テストキットの使用方法は以下の通りです。

  1. 生理が終わってから数日後、毎日同じ時間に尿を採取します。
  2. 採取した尿にテストキットを浸し、結果を読み取ります。
  3. LHの濃度が高くなっている場合、排卵が近いと判断できます。

この方法を用いることで、性交渉のタイミングをより正確に計画することが可能です。

セックスのタイミング

排卵日を特定したら、次はその情報を用いてセックスのタイミングを計画します。一般的には、排卵日の2〜3日前から当日にかけて、性交渉を持つと妊娠の確率が高まります。精子は体内で数日間生存することができるため、排卵日前後で性交渉を持つことが理想的です。

参考)日本産婦人科医会 4.排卵の予測

タイミング法の流れとスケジュール:何を、いつやるべきか

排卵日

排卵日に焦点を当て、その特定方法と排卵日に行うべきことについて詳しく説明します。

排卵日の特定方法

排卵日を特定するためにはいくつかの方法がありますが、以下は主な方法です。

  •  ・基礎体温 の測定: 基礎体温は 排卵 前後で変動します。低温期から高温期への移行が見られた場合、それが排卵日である可能性が高いです。
  • ・排卵テストキットの使用: このキットは尿中のLH(黄体形成ホルモン)濃度を測定し、排卵が近いかどうかを判断します。
  • ・超音波検査: 医療機関で行う方法です。卵胞の成長を確認し、排卵日を予測します。
  • ・月経周期からの予測: 月経周期が一定である場合、前回の生理開始日から数えて14〜16日目を排卵日とする方法です。

排卵日に行うべきこと

排卵日が特定できたら、次はその日に何をすべきかです。以下に主なポイントを挙げます。

  • ・性交渉のタイミング: 排卵日の数日前から当日にかけて性交渉を持つと、妊娠の確率が高まります。
  • ・ストレスの管理: 高いストレスは妊娠に悪影響を及ぼす可能性があります。リラックスする時間を作ることが重要です。
  • ・健康的な生活習慣: 妊娠に良い影響を与えるために、バランスの取れた食事と適度な運動が必要です。
  • ・医療機関での相談: タイミング法がうまくいかない場合、医療機関での相談を考えることも一つの方法です。
  • H2: 排卵後:妊娠の可能性を高める

排卵日が過ぎた後も、妊娠の可能性を高めるためにできることはあります。

排卵後の行動

排卵後は、妊娠を確実にするために以下のような行動が推奨されます。

行動内容
適度な運動過度な運動はストレスを引き起こす可能性がありますが、適度な運動は血行を良くし、妊娠に有利です。
バランスの良い食事ビタミンやミネラルが豊富な食事は、妊娠に必要な栄養素を提供します。
ストレスの軽減リラクゼーションや十分な睡眠は、妊娠に有利なホルモンの分泌を促します。
性交渉の続行排卵後すぐに妊娠が確認できるわけではありません。そのため、排卵後も適度に性交渉を持つことが推奨されます。
排卵後の行動

症状の観察

 排卵後 には、妊娠の兆候がいくつか現れる可能性があります。以下はその主な症状です。

症状内容
基礎体温の変化高温期が続いている場合、妊娠の可能性が高まります。
乳房の張り妊娠ホルモンの影響で、乳房に張りや痛みが生じることがあります。
つわり妊娠初期によく見られる症状で、食欲不振や吐き気を感じることがあります。
頻尿妊娠すると、尿の回数が増えることが一般的です。
症状の観察

これらの症状が現れた場合は、妊娠の可能性が高いと考えられます。ただし、これらは個人差があり、必ずしも妊娠を意味するわけではありません。不安な場合は、医療機関での検査をお勧めします。

タイミング法の流れとスケジュール:何を、いつやるべきか

タイミング法のスケジュール例

タイミング法を成功させるためには、しっかりとしたスケジュールが必要です。このセクションでは、28日周期の場合と不規則な周期の場合について、それぞれのスケジュールを詳しく説明します。

28日周期の場合

周期の日数行動・注意点
生理1日目〜5日目生理期間中に、基礎体温の測定を始めます。
生理後6日目〜13日目排卵に備える期間で、排卵テストキットを使用します。
14日目排卵日とされる日です。この日に性交渉を持つことが推奨されます。
15日目〜28日目排卵後の期間で、妊娠の可能性を高める行動を取ります。
28日周期の場合

この表を参考に、タイミング法におけるスケジュールを計画してみてください。

不規則な周期の場合

不規則な周期の場合、以下のようなスケジュールが考えられます。

周期のフェーズ行動・注意点
生理1日目〜終了日生理期間中で、基礎体温の測定を始めます。
生理後排卵テストキットを頻回に使用して、排卵日を特定します。
排卵日確認後確認された排卵日に性交渉を持つことが推奨されます。
排卵後排卵後の期間で、妊娠の可能性を高める行動を取ります。
不規則な周期の場合

不規則な周期の場合は、医療機関での相談も考慮に入れてください。

タイミング法と医療機関

タイミング法は自宅でも行える方法ですが、医療機関でのサポートがあると、より確実な結果が期待できます。

通院するタイミング

タイミングは以下の3つを考えてください。

  • ・生理開始時: 初めての通院であれば、生理が始まったらすぐに医療機関を訪れることが推奨されます。
  • ・排卵前: 排卵が近づいてきたら、再度医療機関での検査が必要です。
  • ・排卵後: 排卵が終わった後も、妊娠の確認や次のステップについて相談するために通院します。

医療機関での検査内容

医療機関での一般的な検査です。

  • ・基礎体温のチェック: 自宅で測定した基礎体温を医師に見せ、評価を受けます。
  • ・血液検査: ホルモンバランスをチェックするための血液検査が行われます。
  • ・超音波検査: 卵胞の成長状況や子宮内膜の厚みを確認します。
  • ・精子検査: 必要に応じて、パートナーの精子の質も検査されます。

以上が、医療機関での通院タイミングと検査内容です。これを参考に、自分に合ったスケジュールと検査を選んでみてください。

タイミング法がうまくいかない場合の対策

タイミング法は比較的簡単に始められる不妊治療の一つですが、必ずしも全てのカップルに効果があるわけではありません。もし数ヶ月〜1年以上、タイミング法を試しても妊娠に至らない場合は、次のステップを考慮する時期かもしれません。

他の不妊治療方法への移行

他の不妊治療としては以下の方法があります。

  • 人工授精 : タイミング法がうまくいかない場合、次に考慮される方法が 人工授精 です。これは、医療機関で精子を直接子宮内に送り込む方法です。
  • 体外受精 :  人工授精 でも結果が出ない、または何らかの理由で人工授精が適していない場合は、 体外受精 が選択されることが多いです。
  • ・薬物療法: ホルモンバランスの調整や 排卵 促進のための薬物もあります。ただし、副作用や費用がかかる場合もあるため、医師とよく相談してください。
  • ・カウンセリング: 精神的なストレスも妊娠に影響を与える可能性があります。心の健康も考慮に入れ、必要であれば心理的なサポートを受けることも重要です。

タイミング法がうまくいかない場合は、必ずしもその方法が悪いわけではありません。体質や状況によっては、他の治療法が適している場合もありますので、適切な医療機関での相談が必要です。

まとめ

タイミング法は、排卵周期に合わせて性交渉を行うことで妊娠確率を高める自然な不妊治療法です。基礎体温の測定、排卵テストキットの使用、そして医療機関での検査とサポートが、成功への鍵となります。しかし、タイミング法が全てのカップルに効果的であるわけではありません。成功しない場合は、人工授精や体外受精など、他の不妊治療方法への移行も考慮する必要があります。不妊治療は精神的にも肉体的にも負担が大きいものです。そのため、医療機関での適切なアドバイスとサポートがを得て取り組んでいきましょう。

この記事を書いた人

東岡 えりこ

理学療法士
医療ライター