タイミング法で妊娠しない原因と、それからの対策

子供を授かるためには多くの方法がありますが、その中でも「タイミング法」は一般的に用いられる手法の一つです。しかし、 タイミング法 でなかなか妊娠できないとお悩みの方も少なくありません。この記事では、 タイミング法 で妊娠しない原因と、それに対する具体的な対策を、医学的なエビデンスに基づいて詳しく解説します。不妊の原因を探している方、 タイミング法 を試しているが成功しない方にとって、一歩を踏み出すための大きなヒントになるでしょう。

タイミング法での妊娠について

 タイミング法 は、妊娠を希望する多くのカップルにとって最初に試す方法の一つです。しかし、この方法が必ずしも成功するわけではありません。以下では、タイミング法の基本と、なぜ妊娠しない可能性があるのかについて、解説します。

タイミング法とは何か?

タイミング法とは、女性の月経周期に合わせて最も妊娠しやすい時期、すなわち「排卵日」を予測し、その時期に性交渉を持つ方法です。一般的には、月経周期の14日目前後が排卵日とされています。この方法は、特別な医療介入が不要であり、自然な妊娠を望むカップルにとっては手軽な選択肢となっています。

タイミング法で妊娠しない可能性があることの認識

しかし、 タイミング法 にはいくつかの限界があります。第一に、排卵日は個々の女性で異なる場合があり、一概に14日目とは言えません。また、ストレスや生活習慣の影響で排卵が不規則になることも考えられます。第二に、男性側にも問題がある場合があります。例えば、精液の質に問題があったり、性交渉のタイミングが適切でない場合、妊娠の確率は低くなる場合です。また、心理的なプレッシャーも影響を与えることがあります。妊娠に対する過度な期待や焦りは、不妊の原因となることも少なくありません。

タイミング法で妊娠しない原因と、それからの対策

一般的な妊娠のメカニズム

妊娠に至るまでの過程は、非常に複雑で緻密なメカニズムによって成り立っています。このセクションでは、 排卵 から 受精 、そして着床に至るまでの一連のプロセスを科学的な観点から詳しく解説します。

排卵のプロセス

 排卵 は、女性の月経周期の中で最も重要なフェーズの一つです。この時期に 卵巣 から 卵子 が放出され、 子宮 へと移動します。 排卵 は一般的に月経周期の中央、約14日目に起こるとされていますが、これは個々の女性やその月の体調によって変わることがあります。 排卵 を制御するホルモンは主に FSH(卵胞刺激ホルモン) とLH(黄体形成ホルモン)です。これらのホルモンのバランスが崩れると、 排卵 が不規則になる可能性があります。

受精と着床

 排卵 が行われた後、放出された 卵子 は 卵管 を通って子宮に向かい、この間に、男性の精子と出会い 受精 することで妊娠が成立します。受精卵はその後、約4~5日かけて子宮に到達し、子宮内膜に  着床 します。 着床 は妊娠の成立を意味する非常に重要なプロセスです。この時期には、 プロゲステロン というホルモンが大量に分泌され、子宮内膜を厚くして受精卵がしっかりと固定できるようにします。しかし、受精卵が正常に 着床 できない場合、 流産子宮外妊娠 といった問題が起こる可能性があります。これらは、子宮の形状や内膜の状態、さらには免疫系の働きに影響されることが多いです。

参考)病気がみえる9・婦人科 妊娠のながれと不妊 p.231

妊娠しない原因1: 排卵日の誤判定

タイミング法で妊娠しない一つの大きな原因は、排卵日の誤判定です。排卵日を正確に把握することは、妊娠確率を高めるために非常に重要です。

排卵日の特定の困難性

​​排卵日を特定することは、一見簡単に思えますが、実際には困難なことが多いです。一般的に、 排卵 は 月経周期 の中央に起こるとされていますが、ストレスや生活習慣、病気などによって排卵日は変動する可能性があります。また、排卵日自体が不規則である場合、 タイミング法 での妊娠はさらに難しくなります。特に、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)などの疾患がある場合、 排卵 が不規則または 排卵 されない可能性が高くなるでしょう。

排卵日を正確に知る方法

排卵日を正確に知るためには、以下のような方法が有効です。

  • 基礎体温 の測定: 毎朝、起床時に体温を測定し、グラフに記録する方法です。排卵後に体温が上昇するため、これを利用して排卵日を特定します。
  • ・排卵検査キット: 尿中の LH(黄体形成ホルモン) 濃度を測定することで、 排卵 が近いことを知らせてくれます。
  • ・超音波検査: 医療機関で行われるこの検査により、 卵胞 の成熟度や 子宮内膜 の厚さを確認することができます。
  • ・血液検査: FSH(卵胞刺激ホルモン)やLH(黄体形成ホルモン)、 エストラジオール などのホルモンレベルを測定し、排卵日をより正確に予測します。

以上の方法は、一般的に医療機関で推奨されています。特に、複数の方法を組み合わせることで、より高い精度で排卵日を特定することが可能です。

妊娠しない原因2: 生活習慣の影響

妊娠に影響を与える要素として、生活習慣も非常に重要です。特に食生活とストレスは、妊娠成功率に直接的な影響を持つことが多いです。

食生活と妊娠

妊娠において特に、ビタミンやミネラル、 葉酸 などの栄養素が不足すると、排卵障害や着床失敗、流産のリスクが高まる可能性があります。

  • ・ 葉酸 : 妊娠初期に葉酸が不足すると、神経管閉鎖障害のリスクが上がる。
  • ・オメガ-3脂肪酸: 炎症反応を抑制し、妊娠成功率を高める可能性がある。
  • ・糖質の過剰摂取: 糖質を過剰に摂取すると、インスリン抵抗性が高まり、 PCOS(多嚢胞性卵巣症候群) のリスクが増加します。

ストレスと妊娠

ストレスもまた、妊娠に悪影響を与えると考えられています。ストレスが高まると、コルチゾールというストレスホルモンが分泌され、これが 排卵 や妊娠に影響を与えることがあります。高いストレスレベルは、排卵を抑制する可能性があり、ストレスが高いと、子宮内膜の状態が悪くなり、着床が困難になる可能性があります。ストレス管理の方法としては、リラクゼーションテクニック、運動、十分な睡眠が推奨されているので試してみるのも一つの手段です。

参考)日本産婦人科医会 2・ストレスホルモン 

妊娠しない原因3: 医学的な問題

妊娠しない原因として、医学的な問題も考慮する必要があり、これには、女性側と男性側の両方の問題が含まれます。

女性側の医学的な問題

女性側で妊娠に影響を与える医学的な問題は多岐にわたります。

  • 子宮内膜症 :子宮内膜が子宮外に発生する症状で、これが 排卵 や 着床 に影響を与える可能性があるでしょう。
  • ・ 卵管 障害:  卵管 が詰まっているか、炎症を起こしている場合、 受精卵 が 子宮 に到達できない可能性があります。
  • ・PCOS(多嚢胞性卵巣症候群): 既に説明した通り、排卵障害や月経異常を引き起こす場合があります。
  • 早発閉経 : 通常より早く閉経してしまう状態で、これが原因で自然な妊娠が困難になる場合もあるので注意が必要です。

これらの症状は、超音波検査やホルモン検査、卵管造影などで診断されます。

男性側の医学的な問題

  • 男性側でも、妊娠に影響を与える医学的な問題が存在します。
  • ・精子の質: 精子の数、運動性、形状などが妊娠に影響を与えるでしょう。
  • 精索静脈瘤: 精巣静脈が滞り、血管が拡張することで、精子の質が低下する可能性があります。
  • 性機能障害: 勃起不全や早漏など、性機能に問題があると、自然な妊娠が困難になる場合があります。

男性側の問題は、精液検査や超音波検査、ホルモン検査などで診断されますので、医師にご相談ください。

参考)病気が見える9・婦人科 男性因子p.244

タイミング法で妊娠しない原因と、それからの対策

妊娠しない原因4: タイミングと頻度

妊娠に成功するためには、性行為のタイミングと頻度も重要な要素です。適切なタイミングで性行為を行わないと、妊娠の確率は低くなります。

性行為の頻度

妊娠の確率を高めるためには、性行為の頻度が非常に重要です。しかし、頻度が低すぎると、妊娠の確率は自然と低くなります。具体的には、月に1~2回程度の性行為では、妊娠の確率は非常に低くなるとされています。頻度が多すぎるとよくないとの意見もみられ、禁欲を考える方もいると思いますが、禁欲の期間が長いと精子の質を下げる可能性があるので注意しましょう。個人により禁欲期間は違いもあるので、詳細は医師にご相談ください。一般的には、排卵日の数日前から排卵日にかけて、2~3日おきに性行為を行うのが最も妊娠しやすいとされています。このタイミングを逃さないように、排卵日を予測する方法も多く存在します。

最適なタイミング

妊娠を希望する場合、最適なタイミングで性行為を行うことが非常に重要です。最適なタイミングとは、女性が排卵する日に近い日に性行為を行うことを指します。排卵日は、月経周期の中で最も妊娠しやすい日とされています。この日を特定するためには、排卵テストキットや基礎体温の測定が有用です。また、医療機関での超音波検査も排卵日を特定する確実な方法とされています。排卵日の2~3日前から排卵日にかけてが、最も妊娠しやすい期間とされています。この期間に性行為を行うことで、受精卵が着床する確率が高まります。

妊娠しない原因5: 精神的・心理的な要因

心の健康や人間関係も、妊娠に影響を与える可能性があるのでみていきましょう。

メンタルヘルスの影響

メンタルヘルスが不安定であれば、それはホルモンバランスに影響を及ぼし、妊娠に悪影響を与える可能性が高まります。特にストレスは、妊娠に関わるホルモンと密接な関係があります。過度なストレスがコルチゾールというホルモンの分泌を促すと、排卵や月経周期に影響が出ることが多いです。心の健康を保つためには、適度な運動や十分な睡眠が大切となります。また、リラクゼーションテクニック(瞑想や深呼吸など)も効果的です。さらに、心療内科やカウンセリングの利用も考慮に入れるとよいでしょう。

パートナーシップとコミュニケーション

妊娠は二人の問題であり、パートナーとのコミュニケーションが不足していると、それがストレスになり妊娠に影響を与える可能性があります。例えば、タイミング法での妊娠を目指す場合、お互いの体調や気持ち、タイミングなどをしっかりと共有することが重要です。コミュニケーションが不足すると、それが精神的な負担となり、結果として妊娠の確率を下げる可能性があります。タイミングを合わせようとして、プレッシャーとなり ED(勃起不全・勃起障害) となる男性もみられます。パートナーとのコミュニケーションを深めるためには、カウンセリングやセラピストの協力を得ることも一つの方法です。以上の点を考慮することで、精神的・心理的な要因からくる妊娠の障害を少なくすることができるでしょう。

タイミング法で妊娠しない原因と、それからの対策

対策と次のステップ

タイミング法で妊娠しない場合、次に考慮すべき対策とステップについて解説します。

医療機関での検査と相談

タイミング法で妊娠が難しい場合、最初のステップとして医療機関での検査と相談が重要です。一般的な検査には、血液検査、超音波検査、ホルモンレベルのチェックなどがあります。これらの検査によって、排卵障害や 子宮 ・ 卵管 の問題、さらには男性側の精子の状態など、妊娠に影響を与える可能性のある要因を特定できます。相談する際には、これまでの生活習慣やストレスレベル、性行為の頻度なども医師に伝えるとよいでしょう。それによって、より適切な治療方針が立てられます。

タイミング法以外の不妊治療方法

タイミング法での妊娠が難しい場合、他の不妊治療方法も考慮に入れるべきです。例えば、 人工授精体外受精 (IVF)などの高度な医療技術も選択肢となります。これらの方法は、特に排卵障害や精子の問題がある場合に有効です。また、漢方薬やサプリメントを用いた治療も一定の効果が報告されていますが、これらは医師の指導のもとで行うことが望ましいです。医療機関での相談を通じて、自分に合った最適な治療を見つけましょう。

まとめ

タイミング法で妊娠しない場合、その原因は多岐にわたる可能性があります。排卵日の誤判定、生活習慣、医学的な問題、性行為の頻度とタイミング、さらには精神的・心理的な要因まで、多くの要素が影響を与えることが考えられます。重要なのは、一つ一つの要因をしっかりと検証し、必要ならば医療機関での検査と相談を行うことです。そして、タイミング法以外の不妊治療方法も視野に入れ、最適な治療を選ぶことが求められます。適切な情報と医療機関でのサポートを得ることで、妊娠への道が開かれるでしょう。

この記事を書いた人

東岡 えりこ

理学療法士
医療ライター