卵子凍結は何歳まで可能ですか?

将来の妊娠に向けて、社会的適応による卵子凍結を行う女性が増えています。何歳まで卵子凍結を受けられるのか、年齢制限はあるのか、気になる人も多いでしょう。卵子凍結を受ける場合の年齢に関する疑問について、くわしく解説します。

卵子凍結とは?

最近、よくニュースや記事などで目にする「卵子凍結」。卵子凍結 には2種類あり、最近話題になっているのが「社会的適応による卵子凍結」であり、もうひとつが「医学的適応による卵子凍結」です。どちらも卵子凍結の方法としては同じで、卵巣から採取した卵子を超低温で保存することをいいます。

医学的適応による卵子凍結は、がんや病気の治療によって将来の妊娠が難しくなることが予想される場合に行われます。以前は治療によって妊娠を諦めなければならなかった人が、将来の妊娠に希望をつなげるようになっているのです。

医学的適応に対し、年齢を重ねることで起こる、妊娠率や卵子の質の低下への備えとして行われるのが、社会的適応による卵子凍結です。妊娠・出産にはタイムリミットがあり、女性は35歳を過ぎると妊娠率の低下と流産率の上昇スピードが増します。

しかし、子どもが欲しいと考えていても、全員が35歳までに妊娠・出産が可能な状態にあるとは限りません。特に女性の社会進出が進んでから、仕事と妊娠・出産を天秤にかけざるを得ないケースが増えました。

この問題に対して、卵子凍結という選択肢ができたことは大きな意味を持ちます。からだの老化は止められませんが、加齢による卵子の質の低下という問題からは解放されるようになったのです。

卵子凍結ができるようになったことで、将来の選択肢が増えた人も多いことでしょう。

引用元)日本生殖医学会 Q24.加齢に伴う卵子の質の低下はどのような影響があるのですか?

アメリカでは卵子凍結をする20代女性が急増

卵子は女性の年齢と同じだけ年をとり、染色体異常の確率も年齢とともに高くなります。20代で卵子凍結できれば、良質な卵子を保存でき、いつでもその卵子で妊娠できるようになるのです。

アメリカでは、30代後半以上での卵子凍結が主流だったのが、20代での卵子凍結が急増しています。GAFAなど主要な企業で卵子凍結が福利厚生として受けられるようになっていることも、ひとつの要因でしょう。

日本でも「将来の妊娠・出産のために若いうちに卵子を凍結保存しておく」という考え方が、これからのスタンダードになるかもしれません。

卵子凍結は何歳まで可能ですか?

卵子凍結をする背景

社会的適応による卵子凍結は、特別な人しか受けられないわけではありません。仕事や趣味に打ち込みたい人、パートナーが現在いない人、家族の介護がある人、病気やケガで療養中の人など、今すぐに妊娠できる状況にはないけれど、将来的に子どもが欲しいと考えている女性が対象です。

妊娠・出産のタイムリミットがあることで、結婚を焦ったり、昇進や転職を諦めたり、子どもを持つことを諦めたりする女性は少なくありません。そんな女性の悩みを緩和してくれるのが、卵子凍結です。

日本の卵子凍結事情

日本では、医学適応による卵子凍結は以前から行われており、病気治療後の妊娠を可能にしてきました。その技術が今、多くの女性の未来を変える技術として広まりつつあります。

日本の企業でも、福利厚生として卵子凍結を取り入れるところがでてきています。2022年12月には、小池都知事が「社会的適応による卵子凍結支援の検討」を名言しました。

少しずつ、社会的適応による卵子凍結が受け入れられようとしています。

日本産科婦人科学会の報告によると、2020年に日本で行われた卵子凍結は約900例です。その数は年々増加しており、凍結された卵子を用いた妊娠・出産例も増えています。

また、融解した凍結卵子を用いた移植は155例で、そのうち約25%が出産にいたっています。

さらに技術の進歩が進むことで、出産率の向上も期待できるでしょう。

引用元)2020年 体外受精・胚移植等の臨床実施成績
2020年 体外受精・胚移植等の臨床実施成績

卵子凍結は何歳までできる?

社会的適応による卵子凍結にかかわるガイドラインでは、卵子凍結の推奨年齢として、成人女性で 採卵 時の年齢が40歳以上は推奨できないとされています。

また、凍結保存した卵子を用いた妊娠は、45歳以上は推奨されていません。

ただ、明確な制限ではなく推奨であるため、病院やクリニックによっては独自の判断で行っているところもあります。

凍結保存した卵子の保管期限についてはガイドラインに示されていませんが、45~50歳までとする医療機関が多いです。

引用元)社会的適応による未受精卵子あるいは卵巣組織の凍結・保存のガイドライン

卵子凍結における年齢制限について

卵子凍結の実施と、凍結した卵子を用いた妊娠に推奨年齢が設けられているのには理由があります。

卵子凍結に推奨年齢がある理由

卵子は年齢とともに質が低下するため、高年齢で採卵された卵子は質の低下が進んでいる可能性が高くなります。卵子の質の低下は、染色体異常や発育が止まってしまうなどのトラブルにつながりやすいです。

引用元)高齢妊娠に伴う諸問題

凍結卵子による妊娠に推奨年齢がある理由

卵子凍結で卵子の質は保たれていても、母体の老化は避けられないため、妊娠合併症がおこりやすくなります。妊娠高血圧症候群(母体の血圧が異常に高くなり、お母さんや赤ちゃんに悪影響を及ぼす状態)や妊娠糖尿病(妊娠中に糖尿病を発症した状態)、前置胎盤 (胎盤の位置が低く、子宮口を塞いだ状態)、早産 などのリスクが高くなります。これらは、母子ともに命にかかわる可能性のある合併症です。できるだけ年齢が若いうちに出産することが勧められます。

卵子凍結は何歳まで可能ですか?

年齢制限を超えて卵子凍結を行う場合のリスクと注意点

卵子凍結の推奨年齢である40歳を超えても、医療機関によっては卵子凍結を受けられる場合があります。推奨年齢を超えることでどんな問題が生じるのか見てみましょう。

卵子凍結を検討する際の注意点

卵子凍結は、必ず 妊娠 を約束するものではないことを知っておきましょう。凍結卵子を用いて妊娠できる確率は約30%です。この数字には20歳代や30歳代の場合も含まれます。婦人科疾患の発症率が高く、ホルモンバランスが乱れやすい40歳以上では、さらに確率が低くなることが考えられます。

また、高齢妊娠は妊娠できた場合にも、妊娠合併症のリスクが高いため、思わぬタイミングで入院が必要になったり、長期入院が必要になったりする場合も。帝王切開になる可能性も年齢とともに上がるため、妊娠中や産後のサポート体制をしっかり整えておくことが大切です。

引用元)2020年 体外受精・胚移植等の臨床実施成績

妊娠を希望する時期

卵子は年齢とともに老化するため、卵子凍結をしようと思ったタイミングが最も若い状態と言えます。もし、40歳を超えているなら悩む前にまず、社会的適応による卵子凍結を行っている医療機関に相談・受診しましょう。

医師による診察や検査の結果、卵子凍結ができる状態かどうかが判断されます。

卵子凍結にかかる費用

社会的適応による卵子凍結では、保険適用外になるため、全額自己負担となります。医療機関によって差はありますが、採卵に15~50万円、卵子凍結に1~5万円(卵子1個あたり)程度かかります。さらに、凍結した卵子の保存費用が年間2~3万円程度必要です。

健康状態と卵子凍結の相性

健康状態によっては、卵子凍結が難しい場合があります。卵巣機能が低下して 排卵誘発剤排卵を促す薬)に反応しない場合や、ホルモン異常や婦人科疾患などによって妊娠が難しい場合などが考えられます。

卵子凍結できる状態かは、医師の診察が必要になりますので、まずは医療機関を受診しましょう。

卵子凍結は何歳まで可能ですか?

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助産師からのメッセージ

中友里恵

社会的適応の卵子凍結が広まってきたことは、現代の女性にとって選択肢が増え良いことだと感じます。未来のことはわからないことも多いと思いますが、しっかりと向き合い考えていくことが彩り豊かな人生のためにも重要です。個々の妊娠適齢期は誰にもわかりません。10年後の自分が笑顔でいられるような選択をしていきたいですね。

この記事を書いた人

田村 由美

子授かりネットワーク 編集長

この記事を監修した人

中 友里恵