自然妊娠とはどのようなことをいうのでしょうか。赤ちゃんが欲しいなと思った時、できれば自然妊娠で授かりたいと思う方も多いと思います。心身や費用の負担をかけずスムーズに妊娠できたら嬉しいですよね。今回は自然妊娠をするために知って欲しいことを解説していきます。
自然妊娠の仕組み
妊娠の仕組みを正しく知ることが、妊活や不妊治療を行う際にも役立ちます。
妊娠ができるタイミングというのは毎月決まっています。自然妊娠はそのタイミングに夫婦生活があると自然妊娠が成立します。
妊娠とは、卵子と精子が受精をして、受精卵ができて子宮内に着床することをいいます。
- 1)卵巣から 排卵 をする
- 2)排卵した卵子を卵管采で受け取り、卵管を通っている間に精子と出会い受精をする
- 3)受精卵が卵管を通る間に細胞分裂をして成長しながら子宮に到着する
- 4)子宮内膜のふかふかな厚みのある場所に着床することで妊娠に至る
これが自然妊娠の過程です。この4つのどこかの過程がうまくいかないと、自然妊娠に至ることが難しくなります。なかなか自然妊娠をしないという方は、これらのプロセスのどこに原因があるかを探しつつ、不妊治療が適応になることがあります。
排卵とは、卵子は、卵巣の中の卵胞という袋の中で排卵される日を待ちます。脳の下垂体という器官から分泌されるホルモンの刺激によりいくつかの卵胞が成熟しはじめますが、左右どちらかの卵巣から選ばれたたった1つの卵胞だけが成熟し、この成熟卵胞から卵子が排出されることをいいます。
排卵は、月経周期が28日の人の場合おおよそ14日目におこります。排卵された卵子の寿命は約24時間といわれています。
自然妊娠と年齢
自然妊娠と年齢は大きく関係しています。閉経(月経が完全に終わること)は平均50歳ですが、月経があれば何歳でも妊娠が可能ということではありません。特に女性の場合は一般的に35歳を過ぎると、年齢が上がるごとに妊娠率は低下していきます。産まれた時から、生涯の卵子の数は決まっており、毎月少しずつ減っていき増えることはありません。また、卵子の質も低下していきます。卵子の数の減少よりも卵子の質の低下が妊娠率を下げていくのです。
男性も加齢により精子の数や運動率は低下しますが、女性ほど顕著ではありません。
テレビやネットで、40代後半の女性が妊娠したという報道が時々見受けられます。このニュースだけを見ると、「40代の妊娠は珍しくない」と錯覚してしまいがちですが妊娠までの経緯や期間などは伝えられていません。実際にはスムーズに妊娠出産に至った方はとても少ないと感じます。このような報道を鵜呑みにしてしまい「私もまだまだ大丈夫」と妊娠を後回しにした結果、赤ちゃんが欲しいときになかなか授かれないという方も多いのです。
年齢が上がると、受精ができても染色体異常が増加します。
こちらは高度生殖補助医療の年齢別の妊娠率や流産率を表したグラフです。自然妊娠も同じように年齢の上昇に伴い妊娠率は低下しますが流産率は上昇します。妊娠ができても妊娠を継続し出産できることとはイコールではないのです。妊娠がゴールではなく、健やかな出産までを目標に妊活に取り組むことがとても大切です。
自然妊娠の確率
妊孕生(にんようせい)が正常なカップルの場合、3ヶ月で約50%、6ヶ月で70~80%、1年で約90%が妊娠します。そのため、1年以上避妊せず夫婦生活をしているのにも関わらず妊娠に至らない場合も不妊症と呼び、クリニックの受診が勧められます。35歳以上の女性では半年妊娠に至らなければクリニックの受診をお勧めします。2018年には5.5組に1組が不妊症であると言われており、その割合は年々、増えています。
不妊治療が増えても劇的に妊娠率が上昇するわけではありません。仕事やプライベート、結婚のタイミングにもよりますが、妊娠を考えている方は、年齢も意識してライフプランを考えていくことはとても大切です。
まとめ
自然妊娠は排卵周期に合わせて夫婦生活を行い、卵子と精子が受精し子宮内に着床することをいいます。また、妊娠に至るまでには4つのステップがあり、この過程が正常だと自然妊娠となります。妊娠は卵子の質が重要で年齢によって妊娠率の低下、流産率の上昇、染色体異常増加のリスクは上がります。自然妊娠に向けて自身の体やライフプランを見直すことが大切です。
助産師からのメッセージ
赤ちゃんが欲しいタイミングでスムーズに自然妊娠ができたらこんなに嬉しいことはありません。ただ、妊娠の仕組みを考えると、1ヶ月に自然妊娠ができる期間は数日しかありません。妊娠ができるというのは奇跡なのです。
現在は不妊治療も年々増加していますが、その背景には晩婚化や婦人科疾患の上昇、夫婦生活の減少、男性不妊の増加も挙げられます。妊活をしている期間、年齢、ライフプランなどを見つめ直し、大切な時間を無駄にしないためにも、自然妊娠にこだわりすぎずに、クリニックに行ってみることもスムーズな妊娠に繋がる可能性もあります。
妊娠の方法が赤ちゃんの健康状態や出産、育児に影響が出るわけではありません。パートナーともよく話し合い自然妊娠に向け取り組んでいきましょう。