不妊治療のステップアップで「次はAIH(人工授精)?それとも体外受精に進むべき?」と迷っていませんか?
実は、そのどちらを選ぶかの前に、あなたの治療の選択肢を大きく変えるかもしれない方法があります。それが「FT(卵管鏡下卵管形成術)」です。
FTはまだ広く知られていない治療法ですが、卵管に原因がある場合に限定すれば、AIHや体外受精の前に受けることで、自然妊娠の可能性を取り戻せることがあります。
この記事では、以下のポイントをわかりやすく解説します。
- 不妊治療のステップアップにおけるFTの位置づけ
- AIH・体外受精とFTを比較した場合の選択基準
- FTが特に有効なケース・向かないケース
- まず何を確認すべきか(HSG検査について)
- FT治療の一般的な流れ
不妊治療の「ステップアップ」とFTの位置づけ
治療の選択肢を整理するために、まず不妊治療の全体像とFTの位置づけを確認しましょう。
一般的なステップ:タイミング法 → AIH → IVF
多くのクリニックでは、以下のようなステップで不妊治療が進んでいきます。
Step 1:タイミング法(排卵指導)
↓ 6ヶ月〜1年で妊娠しなければ
Step 2:人工授精(AIH)
↓ 3〜6回で妊娠しなければ
Step 3:体外受精(IVF)・顕微授精(ICSI)
このステップアップは多くの方に適していますが、卵管に原因がある場合は例外です。卵管が閉塞・狭窄していると精子が卵子に届かないため、AIHを重ねても妊娠率が大きく下がります。
FTはどこに位置するか
【卵管因子がある場合の治療の流れ(例)】
HSG検査で卵管閉塞・狭窄が確認
↓
FT(卵管鏡下卵管形成術)← ここに位置する
↓
卵管が開通 → タイミング法・AIHで自然に近い妊娠を目指す
↓ 6ヶ月経過しても妊娠しなければ
体外受精(IVF)へステップアップ
FTは体外受精の保険枠(6回・3回)を消費しません。詳しくは不妊治療の保険適用回数の数え方をご覧ください。

AIHを検討している方へ:FTとの比較
AIHを始めようとしている方に、まず確認してほしいことがあります。
AIHが効きにくいケース(卵管が原因の場合)
卵管が詰まっている、または卵子が通りにくい方は、人工授精は適切な治療選択とはなりません。卵管は卵子と精子が出会う重要な場所であり、受精後の受精卵を子宮まで運ぶ役割も担っているためです。
| 治療法 | 卵管が閉塞・狭窄している場合 |
|---|---|
| タイミング法 | 効果を得にくい(精子が卵子に届かない) |
| AIH | 効果を得にくい(卵管を通過できない) |
| FT | 卵管を開通させることで上記の問題を解消できる可能性 |
| 体外受精 | 卵管を使わないため卵管因子を回避できる |
HSG検査の結果で異常があった方に特に有効
HSG(子宮卵管造影検査)で片側または両側の卵管閉塞・狭窄が確認された方は、FTの適応を担当医と相談することをおすすめします。
FTで卵管を開通させた後の妊娠率
FTで卵管が開通した後のタイミング法・AIHによる 妊娠率は、複数クリニックの報告によると 術後6ヶ月以内で30〜50%程度とされています。 人工授精の妊娠成功率は健康な男女でも 1回あたり5〜10%程度と報告されています。
先にFTか、先にAIHか? 判断の基準
| 状況 | 推奨される選択 |
|---|---|
| HSGで卵管閉塞・狭窄が確認されている | まずFTを検討 |
| HSGで異常なし・軽度の男性因子あり | AIHから始める |
| 卵管の状態が未確認 | まずHSG検査を受けてから判断 |
| 年齢35歳以上・AMH値が低い | FT+AIHか体外受精を担当医と相談 |

体外受精を検討している方へ:FTとの比較
「もう体外受精に進もうと思っている」という方も、一度FTという選択肢を確認してみることをおすすめします。
IVFのメリット・デメリット
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| メリット | 卵管因子を回避できる・妊娠率が高い(1回あたり20〜40%)・卵子の質・受精の状態を直接確認できる |
| デメリット | 身体的負担が大きい(採卵・移植)・費用が高い・保険適用には回数上限がある |
体外受精の妊娠率は人工授精(AIH)など 他の不妊治療と比べると高めで、 1回の胚移植あたりで約20〜40%の 妊娠率が期待できるとされています。 ただし費用や身体への負担、精神的な面も 含めて検討が必要です。
FTを先に受けると「自然妊娠の可能性が残る」
体外受精は卵管を使わずに受精させる方法です。FTを先に受けて卵管を開通させることで、体外受精を経ずに自然妊娠できるチャンスが生まれます。
【FTを先に受けることで得られること】
✅ 自然妊娠・AIHでの妊娠の可能性が生まれる
✅ 体外受精の保険枠(6回・3回)を温存できる
✅ 身体的・経済的負担を体外受精より抑えられる可能性
✅ 卵管の状態を卵管鏡で直接確認できる(診断としても有用)
保険の回数を温存できる
FTは体外受精の保険適用回数にカウントされません。詳しくは不妊治療の保険適用回数の数え方をご覧ください。
FTではなくIVFが向く場合
| 状況 | 理由 |
|---|---|
| 両側卵管が高度に損傷・瘢痕化 | FTで開通しても卵管機能が回復しにくい |
| 卵管水腫を伴う重症例 | 体外受精の妊娠率を下げる液体が残る可能性 |
| 年齢38歳以上・AMH値が低い | 時間的な観点から体外受精を優先 |
| 重度の男性因子不妊 | 卵管を開通しても自然妊娠・AIHの確率が低い |
| AIHを複数回行っても妊娠しない(卵管以外の原因) | 体外受精で原因特定と治療を同時に行う |

FTが特に有効なケース
以下に当てはまる方は、FTの適応について担当医に相談してみることをおすすめします。
- HSG検査で卵管閉塞・狭窄が確認された方(特に子宮側〔間質部〜峡部〕の閉塞)
- クラミジア感染の既往がある方
- 原因不明不妊で卵管因子が疑われる方
- 自然妊娠・AIHでの妊娠を強く希望している方
- 体外受精の保険枠を温存したい方
- 年齢が比較的若く(34歳以下)、卵巣予備能が良好な方
FTが向かないケース
| 状況 | 推奨される治療 |
|---|---|
| 重度の子宮内膜症による高度癒着 | 腹腔鏡手術または体外受精 |
| 精子の問題が主な不妊原因(重度男性不妊) | 顕微授精(ICSI)が優先 |
| 年齢38歳以上・AMH値が低い | 早めに体外受精へ |
| 卵管采(末梢側)の完全閉塞 | 腹腔鏡手術が第一選択 |
| 卵管水腫の重症例 | 体外受精(卵管切除後) |
| 抗精子抗体陽性 | FTの適応外 |

まず何を確認すべきか?
HSG(子宮卵管造影検査)の受け方
FTの適応を判断するためには、HSG(子宮卵管造影検査)が基本となります。
FT治療の一般的な流れ(初診から手術まで)
① 初診・カウンセリング
→ 不妊の原因・治療歴・希望を確認
② 術前検査
→ 血液検査(感染症・凝固機能・血液型)・超音波・HSG
③ FT適応の判断
→ 担当医が術前検査の結果をもとに判断
④ 手術当日
→ 局所麻酔または静脈麻酔で実施(30〜60分・日帰り)
⑤ 術後フォロー
→ 抗生剤服用・翌周期からタイミング法・AIHを開始
⑥ 妊活再開
→ 術後6ヶ月を目安にタイミング法・AIHを継続
→ 6ヶ月経過しても妊娠しなければ体外受精を検討

よくある質問(FAQ)
Q. HSG検査を受けていないのですが、FTを相談できますか?
A. はい、相談できます。他院のHSG検査結果をお持ちの方はご持参いただくと、より具体的なご案内が可能です。HSGをこれから受ける方には検査の手順についても丁寧にご説明します。
Q. AIHを数回受けたがうまくいかない場合、FTは有効ですか?
A. AIHを繰り返しても妊娠に至らない場合、卵管因子が関与している可能性があります。人工授精を5〜6回繰り返しても妊娠しない場合には体外受精・顕微授精を選択肢として考慮することが賢明です。その「隠れた原因」が卵管閉塞・狭窄の場合、FTが有効な選択肢となることがあります。
Q. FTとAIHを同じ周期に受けることはできますか?
A. クリニックの方針・術後の状態によって異なりますが、FTを受けた同周期に排卵が来た場合、タイミング法やAIHを実施できることがあります。一般的には術後の回復を確認したうえで翌周期からの妊活再開を推奨するクリニックが多いです。担当医にご確認ください。
まとめ
| 確認事項 | 内容 |
|---|---|
| FTが有効な場合 | HSGで卵管閉塞・狭窄が確認された方・クラミジア既往・原因不明不妊 |
| FTが向かない場合 | 重度子宮内膜症・重度男性因子・高年齢・AMH低値・卵管采閉塞 |
| AIHとの関係 | 卵管閉塞があるとAIHの効果は期待しにくい。先にFTを検討 |
| IVFとの関係 | FTで自然妊娠の可能性を残しつつ、保険枠を温存できる |
| まず確認すること | HSG検査で卵管の状態を把握する |
| FTの位置づけ | 体外受精の保険枠を消費しない。AIHの前に検討できる |
(参考)
※本記事の情報は一般的な医学知識に基づいており、個々の症状・治療方針については必ず担当医にご相談ください。
助産師より

不妊治療をしていると焦りも出てきたり、周囲の人と比べてしまうこともあると思います。ですが、ステップアップは決して「早く進めばよい」というものではありません。あなたの体の状態・原因・年齢・希望をきちんと整理したうえで、最も合った道を選ぶことが大切です。
卵管に問題がある場合、AIHをいくら重ねても結果につながりにくいことがあります。そのような方にとって、FTは「一度立ち止まって、自然妊娠の可能性を取り戻す」大切な選択肢になり得ます。
まず卵管の状態をきちんと把握すること。それが、遠回りのようで実は一番の近道になることもあります。一人で悩まず、いつでも相談してくださいね。























