卵子の質を上げるには?

女性は、30歳を過ぎると年齢が高くなるほど、妊娠しにくいと言われています。その大きな理由のひとつが「卵子の質の低下」です。そのため、妊娠を希望する場合、卵子の質をできる限り保つことが大切です。卵子の質を保つには、どのようなことに気をつけて生活すればいいのか、くわしく解説します。

卵子の質を上げるには?

卵子の質とは?

一般的に 卵子の質 とは、卵子の発育状態や染色体の状態を指します。卵子の中には発育が未熟なものや、染色体の本数や構造に異常があるものがあります。成熟した卵子で、染色体が正常であれば、その卵子は質が良い状態だと言えるでしょう。

近年、妊娠・出産年齢の高年齢化が進んできたことで「卵子の質」について話題に上がることが増えました。加齢によって体が衰えるように、卵子も加齢によって質が低下します。そして、卵子の質の低下は、妊娠にさまざまな影響を及ぼすことがわかっています。

引用元)日本受精着床学会 Q10. 卵子の質、胚の質とはどういう意味ですか?

卵子の質が妊娠にどのように影響するの?

卵子の質は、 妊娠率や流産率、先天性疾患を持つ子どもが生まれるリスクに影響することがわかっています。

卵子の質が低いと、妊娠が成立しにくかったり、 流産 しやすかったりすると言われています。また、妊娠したとしても、先天的な異常を持つ赤ちゃんが生まれるリスクが高まるおそれも。卵子の質を良い状態に保つことは、元気な赤ちゃんを産むために大切なことだと言えるでしょう。

質が良い卵子の特徴

質が良い卵子には、以下のような特徴があります。

  • ・ 受精 できる
    卵子と精子が出会えば、必ず 受精 が起こるわけではありません。受精がおきるには、卵子の質が影響していると考えられています。もちろん、精子の質も関係しているため、受精には質の良い卵子と精子が出会うことが必要と言えるでしょう。
    ただし、質が良いと判定された卵子と精子であっても、受精しないこともあり、受精にはさまざまな要因が関係していることがわかります。
  • ・受精後、順調に細胞分裂できる
    精子と卵子が受精すると、 胚 ( 受精卵 )になります。胚が順調に細胞分裂を繰り返すと、赤ちゃんの姿に近づいていきます。
    しかし、質が低下した卵子の場合、受精したとしても細胞分裂が上手くいかず、正常な妊娠経過とならないこともあるでしょう。

一般的に、卵子の質を見た目で判断することは難しいことです。受精し、胚が細胞分裂を繰り返す過程を見て、胚の質( グレード )が判断されます。そのため、受精や細胞分裂が確認できてはじめて、卵子の質の良さを知ることになるのです。

卵子の質を上げるには?

卵子の質の低下の原因

卵子の質が低下する大きな原因のひとつが、加齢です。加齢による卵子の質の低下は、不妊症の原因にもなります。年を重ねるとなぜ卵子の質が低下するのか、くわしいことはわかっていません。しかし可能性のひとつに「年齢とともに体内で活性酸素が増えすぎること」が原因として考えられています。

加齢のほか、活性酸素を増やす原因となる生活習慣の乱れや過度なストレスなども、卵子の質を低下させる原因です。卵子の質の低下を抑えたい方は、生活習慣を整えることを意識してみましょう。具体例については、のちほどご紹介しますので参考にしてみてくださいね。

引用元)日本生殖医学会 Q24.加齢に伴う卵子の質の低下はどのような影響があるのですか?

卵子の質はいつ決まる?

卵子の質は、 排卵日 までに決まると考えられます。
卵子のもとになる細胞は 卵胞 (らんぽう)と呼ばれ、すでに胎児のときには 原始卵胞 (げんしらんぽう)という形で卵巣内に存在するのです。

46本の染色体を持つ原始卵胞は、細胞分裂によって適切に染色体を切り離し、排卵前には46本から23本に減った状態になります。

原始卵胞の細胞分裂は胎児の時期に始まりますが、途中で成長が止まるため、卵胞は思春期頃まで休眠した状態に。思春期になりホルモンバランスが変化すると、眠っていた卵胞が順番に細胞分裂を再開し、成熟したものから排卵されて卵子へと姿を変えます。

しかし、原始卵胞も年月とともに数が減り、老化していきます。老化が進んだ原始卵胞は、染色体の切り離しが上手くいかず、卵子の染色体の数に過不足が生じるおそれがあるのです。すると、質の低い卵子が生まれ、不妊や流産の原因になったり、先天性異常を持った子どもが生まれたりするリスクが高まると考えられています。

つまり、卵子の質が決まるのは、染色体の切り離しが行われるまでの期間であると言えるでしょう。染色体の切り離しは排卵直前に完了するため、卵子の質は排卵までに決まると考えられます。

卵子の質と年齢との関係はあるの?

先ほどご紹介したとおり、卵子の質は年齢に大きく左右されます。若い女性ほど卵子の質が良い傾向にあり、35歳ごろから急速に質が低下するとの報告もあります。

そもそも、排卵のたびに卵子が新しく作られるわけではありません。卵子のもとになる原始卵胞は、生まれる前にまとめて一生分作られます。

女性は一生分の原始卵胞を卵巣に持った状態で生まれ、排卵のたびに保存している卵子を使っていくというわけです。たとえば、40歳のときに排卵した卵子は、自分の年齢とほとんど変わらない、40歳くらいの細胞だと考えるとわかりやすいでしょう。

卵子の質をチェックする検査とは?

卵子の質を評価する検査は、現段階ではありません。
卵子の状態をチェックする検査としては「 抗ミューラー管ホルモン ( 卵巣予備能検査 、 AMH )」があります。この検査では血中のホルモン量を測定し、卵子が卵巣内にどのくらい残っているかを推定できます。ただし、AMHは卵子の量をチェックする検査であるため、卵子の質のレベルを判定することはできません。

検査とは少し異なりますが、不妊治療の中でも 顕微授精 (顕微鏡を通して、1個の精子を卵子に注入する治療)の場合、採卵した卵子の質を受精前に確認できます。卵子の構造を顕微鏡で拡大しながらチェックし、受精できる状態の卵子かどうかを判断します。

卵子の質を上げるには?

卵子の質とミトコンドリアの関係

卵子の質がどのようにして低下していくのか、くわしいメカニズムは今のところわかっていません。しかし、卵子に含まれる「 ミトコンドリア 」という器官が関わっている可能性があることがわかっています。

ミトコンドリアは、体を動かすエネルギー( ATP )を作り出す重要な器官です。ミトコンドリアは、卵子の細胞内にも存在しています。

卵子が老化すると、ミトコンドリアの働きが悪くなり、エネルギーが十分に作られなくなります。エネルギー量が減れば、卵子自体の働きも悪くなるため、卵子の質の低下に関連しているのではないか、と考えられているのです。

そして、ミトコンドリアの働きが悪くなる原因として考えられているのが、活性酸素です。活性酸素は、体内で増えすぎると細胞を傷つけ、生活習慣病やがん、老化の原因になることで知られています。

加齢や生活習慣の乱れによって活性酸素が過剰に作られたり、処理しきれなくなったりすると、卵子のミトコンドリアの機能が低下し、卵子の質の低下につながると考えられています。

そのため、卵子の質の低下を防ぐには、活性酸素を増やしすぎないことがポイントです。

引用元)厚生労働省 e-ヘルスネット 活性酸素と酸化ストレス

卵子の質は改善できる?

卵子の質を改善するということは、卵子の染色体を異常な状態から正常な状態に戻すことを意味するでしょう。しかし現在のところ、染色体を治す治療法は残念ながらありません。
また、卵子の質は年齢とともに自然と低下するため、加齢による老化を食い止めることも難しいでしょう。

しかし、卵子の質が低下したからといって、卵子すべてに染色体異常があるわけではありません。主治医とよく相談しながら不妊治療を進めていきましょう。

また、先ほど紹介したように、卵子の質の低下は活性酸素の増えすぎが原因のひとつだと考えられています。活性酸素が増える原因には、食事やストレス、運動などが関わっています。そのため、生活習慣を整えることは、卵子の質を保つ助けになるでしょう。

質の良い卵子に育てるには?

卵子の質を保つには、過剰な活性酸素を体内に溜めないことが大切です。生活習慣の面で、取り組める対策をいくつか紹介します。

食べ物

抗酸化物質が豊富な栄養素(ビタミンA・ビタミンC・ビタミンEなど)を積極的に取り入れましょう。抗酸化物質は活性酸素の産生や作用を抑えてくれます。ビタミンAは緑黄色野菜など、ビタミンCは柑橘類やパプリカなど、ビタミンEはアボカドやナッツ類などに多く含まれます。

運動

適度な運動は健康のためには欠かせません。しかし、極端に激しい運動は活性酸素を増やすことが知られています。日頃から、無理なく適度に体を動かすようにしましょう。

ストレス

精神的ストレスも活性酸素の産生を促す原因のひとつです。心当たりがある場合には、ストレスの原因を取り除いたり、積極的にリフレッシュしたりするよう意識すると良いでしょう。

漢方

主治医の方針によっては、不妊治療の方法として漢方薬を処方されることもあります。漢方薬は、何種類かの生薬を組み合わせたものです。漢方は個人の体質に合わせて処方されるため、自己判断での購入・内服は控えたほうがいいでしょう。

専門家より

卵子の質という言葉を聞くとドキッとしてしまいますよね。年齢を重ねるほど、卵子の質が低下していくことは自然なことではあります。ですが妊娠を目指すには少しでも卵子の質を維持していきたいですよね。特別な方法はありませんが、日々の生活習慣の見直すことが卵子の質だけでなく妊娠力アップにもつながります。40代で妊娠されている方の中には、日々の運動習慣がある方が多いように感じます。まずはウォーキングなどできることから始めてみましょう。年齢だけにとらわれず内側からの健康が妊娠への近道です。

この記事を書いた人

田村 由美

子授かりネットワーク 編集長

この記事を監修した人

中 友里恵