妊娠が成立するためにはいくつもの過程を乗り越える必要があります。そのプロセスのひとつが着床です。
今回は着床・着床出血についての解説と不安な時期の過ごし方について解説していきます。
着床とは?
まず最初に、着床とは、卵管から移動してきた受精卵が子宮内膜に到着し、中にもぐりこむまでをいいます。排卵期以降は子宮内膜は8~10mm程度まで厚くなり、受精卵が着床しやすいよう暖かくふかふかなベッドの役割をしてしています。着床すると、赤ちゃんになる部分とお母さんの体から酸素や栄養をもらうための胎盤のもと(絨毛)になる部分に別れて作られていきます。
着床のタイミング(受精から着床まで)はいつ起こるの?
次に、着床はどのタイミングで起こるのでしょうか?体の外からはわかりませんが、体内では奇跡の連続が起こっています。自然妊娠と胚盤胞に分けて、受精から着床までのプロセスをみてみましょう。
① 自然妊娠の場合
妊娠は、卵子と精子が出会い受精するところから始まります。
実は精子が卵管までたどり着くには膣から子宮を通って卵管を進む必要があり、ほとんどの精子が途中で力尽きます。射精された精子は2~4億個ほど(個人差あり)ですが、卵子のいる卵管の一番奥にたどり着くころには60~200個ほどに数が減ります。
さらに排卵された卵子の寿命は約24時間、精子は約72時間〜1週間といわれているため、タイミングが合わないと受精には結びつきにくいのです。
引用元)東京都 妊活課
② 「胚盤胞」の着床時間
胚盤胞(はいばんほう)は受精卵が成長したもので、丸い卵の状態から着床ができる状態に変化していく段階です。受精卵が卵管から子宮へと移動する間、受精卵の中では細胞が2分割、4分割、8分割と分裂を繰り返してどんどん増え、受精から3日目頃には桑実胚(そうじつはい)と呼ばれる状態になります。
たくさんの細胞が詰まった桑実胚は、胎盤と胎児になる部分に分かれていき、5日目頃にはその境界がはっきりわかるようになります。この状態が胚盤胞です。
そして受精から6日目ごろに胚盤胞が子宮内膜に到着し、着床が始まります。
ARTと呼ばれる生殖補助医療の場合、採卵から5〜6日の時に、胚盤胞まで成長した胚を子宮内に移植することで妊娠率が高まると言われています。
着床すると起こるサインと体の変化
「着床」することで、体に下記のような変化がみられることがあります。ただし、症状には個人差があり、なにも症状がない場合も少なくありません。症状がないからと落ち込む方もいらっしゃいますが、その後妊娠反応が見られるケースも見られますので、結果を急がずに生理が来るかどうかを待ちましょう。
「おりもの」
「着床」が起こる時期は、次回の生理予定日の数日前です。この時期のおりものは粘り気があり、色が白っぽくなります。
「着床」のサインとしては、おりものに少量の血が混じったり、ピンクや茶色になったりする場合があります。
引用元)千葉県 妊娠・出産の基礎知識
下痢・腹痛・頭痛・吐き気
「受精卵」が着床して胎盤が作られ始めると、hCGホルモン(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンが分泌されます。妊娠検査薬で陽性が出るのは、尿中に現れたhCGホルモンが反応するためです。
「hCGホルモン」は、女性ホルモンのエストロゲンやプロゲステロンの分泌を増やす働きを持ち、このホルモンの変化が下痢・腹痛・頭痛・吐き気などの症状を引き起こすことがあります。また強い眠気を感じることもあります。
ただ、これらの症状は生理前にみられる症状でもあるため、着床のサインではない可能性もあります。どちらにしても無理をせずにゆったりと過ごすようにしましょう。
痛み
「着床」時に、着床痛という下腹部の痛みが起きると聞いたことのある人もいるかもしれません。「痛くはないけれどお腹の中からチクチクと針を刺されるような感じ」と表現する人もいます。
しかし、こちらも生理前の症状や体調などによって、下腹部に痛みが起きる原因はいろいろありますので、痛みの有無で着床を判断することは難しいかもしれません。痛みがあった場合、薬を飲むべきか迷いますよね。妊娠初期(4〜7週)胎児の器官形成期であり、薬が胎児の発育や奇形に影響する時期です。妊娠の可能性がある場合は念の為、痛み止めなどの内服は控えておくと安心です。
着床時期はどんなことに注意して過ごせばいいの?
「着床」すると胎盤ができ始め、お母さんから酸素や栄養をもらうようになっていきます。それと同時に、アルコールや薬の成分、一部のウイルスなど、赤ちゃんにとって有害なものも入れるようになります。
そのため、着床時期を含め、妊娠の可能性がある場合には下記の行動を避けた方が良いでしょう。
・アルコールの摂取
・喫煙
・自己判断での薬の内服
・家族との食器やお箸などの共有
・生物を控える
妊娠初期は特に様々な感染症に気をつけたい時期です。人混みは避けて、手洗いうがいも丁寧に行いましょう。もともと持病があり薬を内服している場合は、かかりつけ医に相談をしてみましょう。
また、転倒や落下、接触などの危険性のある運動や激しい運動も避けたほうが望ましいでしょう。具体的には、下記のスポーツが該当します。
・サッカー
・バスケットボール
・ホッケー
・ボクシング
・レスリング
・スキー
・ハングライダー
・スキューバダイビング
・激しいラケットスポーツ
・乗馬
・スケート など
過度な安静は必要ありませんが、「着床」時期は、ヨガやピラティス、ウォーキングなどで心身をリラックスさせ、ゆったりと過ごすことを心がけましょう。
「着床」の確率は何%ですか?
「受精卵」が無事に着床する確率は何%なのか、気になる方も多いでしょう。
「自然妊娠」で着床する確率を知ることは難しいですが、排卵日前後に避妊をしないでセックスをした場合の妊娠率は、20代前半で30%、30歳で20%、35歳で10%といわれています。思ったより確率が低いと感じるかもしれません。
定期的な夫婦生活があれば1年間で80%が妊娠すると言われていますが、年齢とともに妊娠率は低下します。1年以上、妊娠に至らない場合には不妊症と定義され、30代に入ると不妊治療を選択される方が増えます。不妊治療の中で、精子や卵子を体外に取り出して体外で受精させる治療法が生殖補助医療です。
「生殖補助医療」(ART:体外受精・顕微授精法・胚移植・凍結胚移など)を受けた場合の妊娠率をみてみましょう。
女性の年齢 | 妊娠率 |
30歳 | 28 % |
35歳 | 26 % |
40歳 | 16 % |
45歳 | 3 % |
このように、受精卵が着床し、妊娠が成立する確率は年齢との関係が大きいことがわかります。また、生殖補助医療を行っても、妊娠率が格段に上がるわけではありません。
「着床」で起こるトラブルはどんなことがあるの?
「着床」は、子宮体部(子宮の上2/3ほど)の子宮内膜で起こりますが、稀に違う場所で受精卵が育ってしまう場合があります。この場合を異所性妊娠(子宮外妊娠)といいます。
全妊娠の1%くらいの頻度で起こります。
異所性妊娠は、卵巣や子宮頸部、などで起こることもありますが、卵管に着床してしまう卵管妊娠が最も多いです。妊娠反応はみられるけれど、受診をしても赤ちゃんの袋(胎嚢)が見えない状態です。気づかず週数が進んでいくと、激しい腹痛や出血がみられ命に関わることもあります。適切な時期に病院を受診することもとても大切なことなのです。
「自然妊娠」だけでなく、生殖補助医療での妊娠も異所性妊娠の可能性はあります。クリニック卒業となるまでは、継続的に受診を行いましょう。
「着床出血」について知りたい
「受精卵」が子宮内膜に着床するとき、出血が起こることがあります。これが着床出血です。
前回の生理開始日から約3週間後(生理周期が28日の場合)にみられます。出血の量は生理よりも少なく、おりものがピンクや茶色になる程度の場合もあります。1日〜数日でなくなることがほとんどです。
全員に起こるものではありません
「着床出血」は必ず起こるものではないため、着床出血の有無で妊娠を判断することはできません。生理がいつもの周期よりも早くおこった可能性や、出血であったりするケースがあることを知っておきましょう。
「着床出血」と生理出血の違いと見分けるポイントを解説
「着床時期」と生理開始時期は数日〜1週間ほどの違いのため、どちらか迷うこともあるかもしれません。見分け方のポイントをみてみましょう。
- ・出血の期間
- 着床出血は1~2日程度であることが多いですが、生理による出血は3~7日以内です。
- ・出血の色
- 着床出血は赤や薄いピンク、茶色で、生理による出血は濃い赤や茶色です。
- ・出血の量
- 着床出血は、小さな受精卵が子宮内膜にもぐりこむときに起こる出血なので少量です。生理では、厚くなった子宮内膜がはがれ落ちるため、出血の量が多くなります。
- ・基礎体温など
出血が着床によるものか、生理によるものかを判断する方法として、基礎体温のチェックがあります。
「基礎体温」は、排卵後に高温期になり、生理が始まると低温期になります。そのため、妊娠をしている場合は高温期が持続します。妊娠に至らず生理が起きる頃は体温は下がっているため着床しているかの目安になります。
「基礎体温」は毎日測り続けることで高温期や低温期の変化がわかるため、日ごろから基礎体温を測って記録する習慣をつけておくことが大切です。可能であれば毎朝、目覚めて起き上がる前に計測してみましょう。3ヶ月程度、計測を続けると自分の基礎体温のリズムがわかってきます。
妊娠超初期に起こる不正出血について知りたい
妊娠3週目までを妊娠超初期と呼ぶ場合がありますが、この時期は市販の妊娠検査薬では反応がみられないことも多く、妊娠しているかどうか判断が難しいです。そのため、妊娠超初期の不正出血は妊娠によるものである場合と、それ以外の病気やホルモンバランスの異常などである場合があります。
「不正出血」とは
「不正出血」とは、病気やホルモンの異常などにより生理以外の理由で性器から出血することをいいます。妊娠に関連するものも含まれます。
「不正出血」が起こる婦人科系のさまざまな疾患の解説
「不正出血」が起こる病気を知っておきましょう。病気の症状がある場合には、早めに病院を受診しましょう。
- ・絨毛膜下血腫
絨毛膜は、赤ちゃんを包む卵膜(3層の膜)の中間の層です。絨毛膜下血腫は、この絨毛膜と外側の層(脱落膜)の間に血が溜まった状態をいいます。不正出血や子宮の収縮の原因となります。妊娠初期に見られることがありますが自然に吸収されていくことが多いです。 - ・異所性妊娠(子宮外妊娠)
卵管や子宮頸部、卵巣など、子宮体部の子宮内膜以外に受精卵が着床した状態です。不正出血や下腹部の痛みなどの症状が現れます。妊娠5~8週頃に症状が出ることが多く、卵管妊娠の場合には破裂の危険性があります。 - ・胞状奇胎
胞状奇胎は受精のときに異常が起こり、胎盤のもとになる絨毛がたくさんのつぶつぶ(のう胞)となって増えていく状態です。不正出血やつわりのような症状がみられます。妊娠反応はでますが正常な妊娠ではないため、子宮内容除去術という手術が必要です。胞状奇胎は、異常な絨毛が子宮の筋層や血管に入り込んでしまう侵入奇胎や、がん化して絨毛がんになることがあり、抗がん剤を使った治療が必要になる場合があります。 - ・子宮膣部びらん
子宮膣部びらんは、子宮の入り口部分が赤くただれた状態です。病気ではありませんが、初期の子宮頸がんの場合があります。1年に1回は子宮頸がん検診を受けましょう。 - ・子宮頸がん
子宮頸がんは、子宮頸部(子宮の下1/3ほど)にできるがんです。20歳代後半から増え始め、30歳代後半からピークに入ります。早期にはほとんど症状はありませんが、進行すると不正出血や性交時の出血、下腹部の痛みなどがみられます。子宮頸がんの主な原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染です。子宮頸がんワクチンを接種することで発症率は抑えられますが、性交経験のないうちに接種することが望ましいです。ワクチンを打っても、最低でも2年に1回は子宮頸がん検診を受けるようにしましょう。
- ・子宮頸管ポリープ
子宮頸管ポリープは、子宮頸部の組織の一部がいぼのように膨らんだ状態です。無症状であることが多いですが、出血や感染の原因となる場合があります。 - ・子宮筋腫
子宮筋腫は子宮にできる良性の腫瘍です。大きさや筋腫ができる位置によって症状が違いますが、生理時の出血量が多くなる、月経痛がひどいなどが主な症状です。妊娠しにくい、流産しやすいなどの原因になる場合もあるため、適切な治療を受けることが必要になります。
- ・性感染症
- クラミジア、淋菌、梅毒などの性感染症に罹患した場合、無症状のことが多いですが、症状が進行すると不正出血を伴うこともあります。不妊症や子宮外妊娠、流産などのリスクになったり、気付かないまま妊娠をすると赤ちゃんの成長発達に影響が出ることもあるので治療が必要です。
「着床」は、妊娠において重要なステップです。
体のサインに気づく方もそうでない方も、体の中では赤ちゃんが育っていくために大きな変化が起きています。
体のサインの有無に敏感になりすぎてもストレスや不安につながることがあるので、まずは体調に合わせて体を休ませたり、妊娠検査薬で判定ができる時期まで待ってみましょう。
私自身は、下腹部がチクチクする感じや、ほてり、眠気などの体の変化を感じました。
また、着床出血はありませんでした。出血は妊活をしているととても敏感になってしまいますよね。
「妊娠初期」は少量の出血がみられることは珍しいことではありません。生理が来たと思ったら1日で出血が止まり、妊娠していたケースもあります。
生理開始予定日から1週間程度は様子を見てみましょう。
1週間をすぎて、妊娠反応がある様であれば、病院を受診してみてくださいね。