卵子は、女性だけが作ることのできる生命の元です。卵子の中に男性が作り出した精子が入り、受精することで新しい命が生み出されます。では、卵子はいつどこで作られるのでしょうか?そして、どれだけの寿命を持つのでしょうか?くわしく解説します。
卵子とは?
卵子とは、精子 と 受精 することで生命を生み出すことのできる細胞で、卵巣 から 排卵 されます。
女性の卵巣の中には、卵子の元になる「 原始卵胞 」という細胞があります。原始卵胞は、ホルモンの影響を受けて、順番に発育・成熟します。成熟した卵胞の中は卵胞液で満たされていて、排卵を待つ卵子が入っているのです。
排卵時には、卵胞から卵子が飛び出し、卵管の端にある 卵管采(らんかんさい)にキャッチされ、卵管膨大部(らんかんぼうだいぶ)という場所で精子の到着を待ちます。
卵子と妊娠の仕組み
卵子の中に精子が入り、1つの細胞になることを「 受精 」といいます。妊娠は、卵子と精子が受精することで始まります。
排卵と受精のプロセス
基本的に毎月1個の卵子が排卵され、卵管膨大部で精子の到着を待ちます。この排卵のタイミングで卵管膨大部に精子が到着しているか、卵子が寿命を迎えるまでに精子が到着すれば、受精がおこる可能性があります。
しかし、卵子の寿命は、精子に比べて短いため、受精のチャンスは決して多くはないのです。
卵子の寿命:どのくらいの期間がある?
卵子は排卵されてからどのぐらい寿命があるのでしょうか?
排卵後の寿命
排卵された卵子は、約24時間しか寿命がありません。精子の寿命は個人差がありますが、約72時間といわれています。
妊娠の確率を上げるには卵子と精子、どちらも元気な状態であることが必要なため、排卵時期を知って性交のタイミングを合わせることが大切です。
女性の一生での卵子の数
女性が一生で排卵する卵子の数は、400~500個ほどです。月経の回数も同じです。
出産回数が多い場合や、初経年齢が遅い場合、閉経年齢が早い場合には、排卵回数が少なくなるため、排卵される卵子の数は少なくなります。
引用元)日本生殖医学会 Q1. 妊娠はどのように成立するのですか?
東邦大学医療センター 卵の数はどのくらい??
卵子の数は限られている
卵子の数に限りがあるというのは本当でしょうか?
女性の年齢と卵子の関係
卵子の元である原始卵胞は、生まれるころには200万個ほどあります。それが思春期になると20万~30万個に数が減少し、30代で2~3万個、閉経を迎えるころにはほとんどゼロの状態に。
「30代で2~3万個あるなら十分では?」と思う人もいるかもしれません。しかし、原始卵胞がすべて成熟して排卵されるわけではなく、約500~1000個の原始卵胞のうち、排卵されるのは1個と考えられています。
さらに、年齢を重ねるほどに、卵子の質が低下することも問題となります。
卵子の老化とその影響
卵子は、女性が年齢を重ねることで老化し、質が低下していきます。妊娠にどんな影響があるのでしょうか?
h3 老化卵子による妊娠リスク
卵子は胎児のころにすでにできているため、加齢と共に、質が低下していきます。卵子の質が低下すると、受精する力が弱かったり、染色体や遺伝子の異常がおきやすかったりします。
そのため、妊娠率の低下や流産率の上昇、染色体異常の発生率の上昇などがおこるのです。
妊娠率や出産の影響
年齢によって妊娠率はどう影響を受けるのでしょうか? 体外受精 や 顕微授精 などの 生殖補助医療 を受けた場合の妊娠率(治療あたりの妊娠率)を見てみると、20代後半~35歳まで25%を超えていますが、36歳以降は低下スピードが増し、39歳で20%を切り、42歳で約10%となっています(2020年体外受精・胚移植等の臨床実施成績より)。
治療あたりの出産率も見てみましょう。20代後半から33歳までは30%を超えていますが、36歳で25%、41歳で約10%です。
卵子の老化だけでなく、母体の老化も、年齢による妊娠率や出産率の低下に関係しています。
質の良い卵子の特徴
質の良い卵子とは、どんな卵子のことをいうのか見てみましょう。
健康な卵子の条件
健康な卵子の条件は以下のとおりです。
- ・受精する力がある
精子と卵子が出会っても、受精がおこらない場合があります。精子が卵子の中に入れなかったり、入れても卵子と精子のそれぞれの染色体が合わさる反応が見られなかったりすることがあります。
- ・育つ力がある
精子と卵子が受精すると、細胞が1つから2つ、2つから4つとどんどん分裂する反応がみられます。しかし、受精してもこの反応が見られなかったり、途中で細胞分裂が止まってしまったりする場合があります。
受精する力と育つ力は、卵子だけでなく精子にも必要です。2つの力が合わさって無事に受精卵が子宮までたどり着き、着床できれば妊娠成立となります。
引用元)病気がみえるvol.10産科(第4版) 19ページ
メラトニンの抗酸化作用と生殖
質の良い卵子を維持・向上させる方法
卵子の質は年齢による影響を大きく受けます。年齢が若いうちに妊娠したいところですが、さまざまな理由で若いうちの妊娠が難しいことは少なくありません。妊婦や子どもを取り巻く環境や、子育てと仕事のバランスなどを考えると、仕方のないことでしょう。
そこで、卵子の質の低下の要因となる、過剰な活性酸素を避けることが大切です。活性酸素は、体内で起きる代謝の過程で必要なものですが、過剰な活性酸素は卵子に悪影響を与え、不妊の原因にもなります。がんや生活習慣病との関連も指摘されており、活性酸素が過剰な状態は避けたいところです。
具体的にどうすればいいのか、みてみましょう。
生活習慣の改善
活性酸素が過剰にならないよう、下記のように生活習慣を改善しましょう。
- ・禁煙する
喫煙は、活性酸素の産生を促す要因となります。卵子の質の低下を避けるには、禁煙することが望ましいです。
また、禁煙することで、将来の妊娠のリスクや胎児へのリスクを減らすことができます。喫煙すると、胎児や胎盤への酸素が少なくなり、胎児の発育が遅れたり、早産や胎盤の異常などの妊娠合併症がおこりやすくなったりします。母子の命にかかわることもあるため、今のうちから禁煙し、将来の自分と赤ちゃんの命を守りましょう。
- ・適度な運動習慣を身につける
適度な運動は、活性酸素ができるのを抑制する効果があります。しかし、運動習慣を身につけたいと思ってもできていない人は多く、その理由として「仕事(家事、育児など)が忙しい」という回答が最も多くなっています(令和元年国民健康・栄養調査結果の概要より)。
そこでおすすめなのが「ながら運動」です。仕事をしながら、家事をしながら、軽い運動やストレッチを取り入れる方法です。パソコンでの作業が多い人なら、モニターの位置を高くして、立ったままやスクワットしながらキーボードを打つ、洗濯物をたたむときに開脚しながらする、片足立ちで靴下をはく、階段を一段飛ばしでのぼるなどの方法があります。
- ・十分な睡眠をとる
活性酸素による酸化ストレスからからだを守るには、抗酸化システムを活性させることが大切です。適度な運動習慣とともに大切なのが、十分な睡眠をとることです。ついつい夜更かししてしまう場合は、タイマー設定をして寝る時間を決めておきましょう。
また、スマートフォンの見すぎは、ブルーライトによって睡眠の質に悪影響をもたらすため、寝る前には使わないほうがよいでしょう。
- ・ストレスを解消する
過度なストレスは、活性酸素の産生を促してしまいます。日ごろからストレスが溜まりすぎないように、こまめに解消することが大切です。趣味の時間を設けたり、家族や友人と過ごす時間を意識的にとったりするとよいでしょう。
引用元)厚生労働省 活性酸素と酸化ストレス
厚生労働省 女性の喫煙・受動喫煙の状況と、妊娠出産などへの影響
厚生労働省 令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要
ミズノ ながら運動
栄養バランスとサプリメント
活性酸素を溜めすぎないように、抗酸化物質を多く含む食品をとりましょう。抗酸化物質は、ビタミンCやビタミンE、カロテノイド(β-カロテンやリコピンなど)などがあり、野菜や果物に多く含まれています。特に下記の食品に多く含まれています。
- ・ビタミンC
緑黄色野菜、柑橘類、キウイフルーツ、イチゴなど
- ・ビタミンE
ナッツ類、ほうれん草、ブロッコリーなど
- ・カロテノイド
緑黄色野菜、柑橘類、マンゴー、パパイヤなど
食事で取り入れたいところですが、難しい場合にはサプリメントで取り入れるのもよいでしょう。ただし、サプリメントの摂りすぎは体に良くないため、摂取量には注意しましょう。
引用元)厚生労働省 ビタミンC
厚生労働省 ビタミンE
厚生労働省 カロテノイド
h2 専門家から
卵子の寿命は、排卵されるとたった24時間しかありません。この時間内に精子と出会えれば、妊娠の確率は高くなりますが、卵子や精子の状態によっては難しい場合もあります。卵子の質は、加齢のほか、過剰な活性酸素にさらされることで低下してしまうため、生活習慣を改善することが大切になります。生活習慣を改善し、卵子の質の低下を防ぎ、少しでも状態の良い卵子を維持できるようにしましょう。