【専門家が解説】化学流産のすべてを知ろう!原因、予防、症状、そして次の妊娠に向けて

化学流産は、妊娠初期に起こる流産の一種で、多くの女性が経験する可能性があります。しかし、その症状や原因、予防方法については十分に知られていません。本記事では、専門家が化学流産について解説します。原因から予防策、症状の見分け方、そして次の妊娠に向けたアドバイスまで、化学流産に関するすべてを知って、より安心して妊娠・出産に臨むための知識を身につけましょう。

化学妊娠(化学流産)とは?

化学妊娠(化学流産)とは、 妊娠検査薬 で陽性反応が確認されるものの、超音波検査で 胎嚢 (赤ちゃんが育つための袋)が見つからない状態を指します。化学流産で起こる出血は 生理 に似ており、そのため 妊娠 に気付かないこともあります。現在、化学流産は妊娠が確定した後の流産と区別するために、生化学的妊娠とも呼ばれています。

化学妊娠(化学流産)の状態では、受精卵子宮内膜着床したものの、正常な発育が進まずに自然に流れることが起こります。そのため、妊娠初期の段階で終わってしまうことが多く、多くの女性が気づかずに過ごすことも少なくありません。

教えて!化学流産って何ですか?

化学流産が起こる5つの原因と、そのリスクを持つ人の特徴

化学流産は、妊娠初期の非常に早い段階で発生する 流産 の一種です。妊娠12週未満で発生する「早期流産」には、化学流産 も含まれます。以下に、早期流産(化学流産を含む)の主要な5つの原因と、リスクが高まる人の特徴を挙げます。

1.赤ちゃんの染色体異常

妊娠初期に発生する流産の約60〜80%は、赤ちゃんの染色体異常が原因です。これは、精子や卵子の生成過程や受精後の過程で偶発的に起こることが多いです。この場合、必ずしも両親自身の染色体に異常があるわけではありません。
赤ちゃんの染色体異常が原因で起こる 流産 は、主に染色体の数や構造が正常でない場合に発生します。これは、卵子 や 精子 の染色体分離が不完全に行われたり、受精 後の細胞分裂の過程で染色体が正しく分配されなかったりすることが原因です。染色体異常による流産は、両親自身の染色体に異常があるわけではなく、卵子や精子の生成や受精後の細胞分裂の過程で偶然起こることが多いです。

2.母親が高齢である

母親の年齢が高いほど、流産 のリスクが高まるのは、加齢に伴って卵子の質 が低下し、染色体異常の確率が増加するためです。40代の母親では、卵子の染色体異常の確率が高くなり、流産率が20代と比較して大幅に上昇します。例えば、20代での流産率は約10%ですが、40代では40%以上に上昇するとされています。高齢出産にはリスクが伴うため、医師と相談しながら適切な対策を取ることが重要です。

3.子宮の異常

子宮形態異常(先天的に子宮の形が正常と異なる状態)や子宮筋腫 など、子宮に関連する疾患も流産の原因となります。
子宮形態異常は、子宮の形が生まれつき正常と異なる状態で、妊娠や出産に影響を与えることがあります。子宮筋腫は、子宮の筋肉層に良性の腫瘍ができる病気で、大きさや位置によっては流産の原因となることがあります。子宮の異常が疑われる場合は、婦人科医と相談し、適切な検査や治療を受けることが重要です。

4.母体の内分泌異常

ホルモンが分泌されすぎたり、反対に分泌されにくくなったりする糖尿病や甲状腺の機能異常なども、流産との関連があるとされています。内分泌異常が疑われる場合は、専門医と相談し、適切な治療や管理が必要です。

5.母体の自己免疫疾患

自己免疫疾患は、免疫システムが誤って自分の体の正常な細胞や組織を攻撃してしまう病気です。この結果、炎症や組織損傷が生じ、さまざまな症状が現れます。
抗リン脂質抗体症候群は、自己免疫疾患の一つで、血液凝固異常や血管の炎症が起こり、流産 や胎児の発育不全につながることがあります。

流産が繰り返される場合、抗リン脂質抗体症候群が原因である可能性が考えられます。この症候群は、特定の抗体(抗リン脂質抗体)が血液中に過剰に存在することで、血液の凝固性が高まり、血栓ができやすくなります。これによって、胎盤の血流が悪化し、胎児に十分な酸素や栄養が届かなくなり、流産や胎児の発育不全が引き起こされることがあります。

抗リン脂質抗体症候群が疑われる場合は、血液検査によって抗リン脂質抗体の存在を確認し、適切な治療や管理が必要です。治療には、抗凝固薬やステロイドなどの免疫抑制薬が用いられることがあります。また、妊娠中の定期的な検診や胎児の成長のモニタリングが重要となります。

引用元)厚生労働省研究班(東京大学医学部藤井班)監修 女性の健康推進室ヘルスケアラボ
>流産の原因は何ですか?

繰り返す化学流産の対処法と予防策

化学流産後、多くの場合は次回の妊娠が順調に進むことがありますが、まれに化学流産が繰り返されるケースも存在します。何度も化学流産を経験した場合、婦人科の受診をおすすめします。詳細な検査を受けることで原因が明らかになり、次の妊娠へ向けた対策が立てやすくなります。

化学流産の予防方法として確実なものはありませんが、妊娠中に注意すべきリスクを減らすことが重要です。例えば、飲酒やカフェイン摂取の過剰、激しい運動などは避けるように心がけましょう。健康的な生活習慣を維持し、ストレスを適切に管理することも、妊娠の健康をサポートするために役立ちます。

教えて!化学流産って何ですか?

化学流産の症状と起こる時期

化学流産が確認される時期は、妊娠初期の非常に早い段階で、通常は妊娠4週から5週の間です。しかし、症状は個人差が大きく、全ての人が同じ症状を感じるわけではありません。化学流産の典型的な症状は以下の通りです

  • ・出血:生理のような出血が起こることがありますが、出血量や痛みは個人差があります。
  • ・腹痛:下腹部に痛みや鈍痛を感じることがあります。
  • ・妊娠検査薬の陽性反応:妊娠初期に陽性反応が出るものの、その後陰性に変わることがあります。

化学流産後の基礎体温の変動は?

基礎体温は通常、低温期と高温期のサイクルを繰り返します。これは女性ホルモンの働きによるもので、高温期は12~14日続きます。もし、高温期が16日以上続いた場合は、妊娠の可能性に気づけるでしょう。

化学流産が起こった場合、基礎体温は通常、高温期から低温期へと下がります。これは、化学流産によってプロゲステロンの分泌が減少し、体温調節が通常のサイクルに戻るためです。プロゲステロン は黄体ホルモンとも呼ばれ、妊娠を維持するために重要な役割を果たします。妊娠が成立すると、プロゲステロンの分泌が増加し、基礎体温が高温期に維持されます。

しかしながら、個人差があり、すぐに低温期へ戻らない場合もあります。これは、化学流産が完全に終わっていない場合や、ホルモンバランスの回復に時間がかかる場合が考えられます。また、ストレスや生活習慣の変化、体調不良なども基礎体温の変動に影響を与えることがあります。

化学流産後の基礎体温の変化を把握することは、自身の体調や妊娠の進行状況を理解する上で役立ちます。基礎体温がなかなか低温期へ戻らない場合や、体温の変動が気になる場合は、医師に相談することをお勧めします。

引用元)厚生労働省研究班(東京大学医学部藤井班)監修 女性の健康推進室ヘルスケアラボ 基礎体温

妊娠検査薬の陽性反応期間は?

妊娠検査薬 の陽性反応期間は、個人差がありますが、一般的には最終月経開始日から約14日後から出現します。これは、排卵後に 受精 が成功し、着床 が行われることで、妊娠ホルモンである ヒト絨毛性ゴナドトロピン( hCG )が分泌されるためです。妊娠検査薬は、尿中のhCG濃度を測定して陽性反応を判定します。

化学流産 の場合、最初に陽性反応が出ることがありますが、その後数日から1週間程度で陰性に変わることがあります。これは、受精卵 が 着床 したものの、正常に発育しなかったり、染色体異常があったりするため、自然に流産が起こることが原因です。流産が始まると、hCG の分泌が徐々に減少し、尿中のhCG濃度が下がり、妊娠検査薬の反応が陰性に戻ります。

化学流産が疑われる場合や、妊娠検査薬の結果に不安がある場合は、医師に相談して、血液検査や超音波検査などで妊娠の状況を確認することをお勧めします。これにより、より正確な妊娠の進行状況を把握することができます。

引用元)渋谷区薬剤師会 区民の方へ -お薬について-

化学流産する確率はどのくらい?

一般的に、妊娠した女性の約50%が早期流産を経験すると言われており、そのうちの大半が化学流産です。早期流産とは、妊娠12週未満で起こる流産のことを指します。
化学流産は、妊娠が成立したものの胎嚢が確認できない状態で、出血が生理と似た症状であるため、気づかずに流産してしまうケースが多い一方、精度のよい妊娠検査薬が身近になり、いわゆるフライング検査(生理予定日から1週間より前での検査)でも陽性を示したものの病院での検査で胎嚢が確認できず、本来気づかないはずの化学流産に気づいてしまうケースもあります。

化学流産の確率は、年齢や健康状態、遺伝的要因などによって異なります。例えば、年齢が高い女性や、過去に流産の経験がある女性は、化学流産のリスクが高くなることが知られています。

また、妊娠初期の染色体異常が原因で化学流産が起こることが多く、これは偶然起こるケースがほとんどで、両親自身の染色体に異常があるわけではありません。しかし、習慣的流産(3回以上連続で流産が起こること)がある場合は、遺伝的要因や免疫異常が関与している可能性があります。

総じて、化学流産の確率は個々の状況によって異なりますが、妊娠初期の流産の中で最も一般的な形態であることは確かです。

教えて!化学流産って何ですか?

妊娠に関する不安や疑問がある場合の病院を受診するタイミング

もし妊娠に関して心当たりや不安がある場合、病院を受診しましょう。
病院受診の適切な時期は、生理開始予定日の2週間後(妊娠6週頃)です。妊娠5週頃には、超音波検査 で 胎嚢 が確認できるようになります。さらに、妊娠5週後半から6週頃には、胎嚢内に 胎芽 (小さな赤ちゃん)が確認できるようになります。この時期に 胎嚢 が見えない場合、化学流産の可能性が考えられます。ただし、既に産婦人科で診察を受けている方は、担当医の指示に従ってください。

排卵時期がずれると、妊娠週数も変わることがあります。そのため、赤ちゃんがまだ小さくて確認できない場合もあります。このような状況で受診時期を遅らせることを検討する方もいるかもしれませんが、受診が遅れると異所性妊娠( 子宮外妊娠 )や胞状奇胎(異常な受精卵や胎盤の組織が子宮内で増殖しすぎる疾患)の発見が遅れるリスクがあります。

病院受診のタイミングは、早すぎても遅すぎても良くありません。適切な時期に受診することが重要です。このことを念頭に置いて、妊娠の疑問や不安に対処しましょう。

化学流産後の対処法と再妊娠の可能性

化学流産後、特別な治療が必要な場合は少なく、自然に回復することがほとんどです。しかし、何度も化学流産が繰り返される場合は、原因を調べるために医師と相談することが重要です。
再妊娠の可能性は個人差がありますが、多くの場合、化学流産後も再び妊娠することができます。化学流産後の対処法と再妊娠の可能性については以下の通りです。

  1. 体調の回復
    体調を整えるために、十分な休息をとり、バランスの良い食事を摂ることが重要です。ストレスや過労も避けるようにしましょう。
  2. 健康状態のチェック
    妊娠前からの健康管理が大切です。定期的な健康診断を受け、必要に応じてサプリメントや薬を服用しましょう。
  3. 医師との相談
    何度も化学流産が繰り返される場合は、婦人科医や生殖医療の専門医と相談し、適切な検査や治療を受けることが大切です。原因が特定されれば、治療法や予防策を適切に選択することができます。
  4. 再妊娠のタイミング
    化学流産後、すぐに再妊娠を望む場合もあれば、ある程度の期間を空けてから再妊娠を望む場合もあります。医師のアドバイスに従い、自分に合ったタイミングで再妊娠を目指しましょう。
  5. 妊活の見直し
    生活習慣や食生活を見直し、ストレスを軽減することも妊娠に良い影響を与えます。また、排卵日の把握や基礎体温の測定を続けることも再妊娠のサポートになります。

化学流産は辛い経験ですが、適切な対処法を取ることで再妊娠の可能性は高まります。自分の体調や状況に合わせて、医師と相談しながら適切なケアを行いましょう。

助産師より

本記事では、化学流産の原因、症状、診断のタイミング、再発リスク、予防策について解説しました。化学流産は早期流産の一種で、染色体異常や母体の高齢、子宮の異常などが原因となることがあります。症状としては、基礎体温の変化や妊娠検査薬の陽性反応期間の短さが挙げられます。

病院を受診するタイミングは、生理開始予定日の2週間後(妊娠6週ごろ)が適切です。早すぎる受診や遅すぎる受診は、異所性妊娠や胞状奇胎の発見の遅れにつながることがあります。

化学流産が繰り返される場合は、婦人科を受診し、詳細な検査を受けることが重要です。予防策としては、確実な方法はないものの、飲酒やカフェインの摂りすぎ、激しい運動を避けることが望ましいです。健康的な生活習慣の維持とストレス管理が、妊娠の健康をサポートします。

 

この記事を書いた人

田村 由美

子授かりネットワーク 編集長