はじめに
赤ちゃんの誕生は誰にとっても嬉しいことです。健やかに育って欲しいと皆が願うことでしょう。しかし時には機嫌が悪かったり、元気がなんとなくないときは不安になるものです。この記事では、赤ちゃんの目の異常について、原因、症状、診断、治療法、予防方法などを詳しく解説します。赤ちゃんが健やかに育つためには、早期の発見と適切な対応が必要です。赤ちゃんのご家族や周りの方々が正しい知識と情報を知り、赤ちゃんの目の健康を守っていけるように、ぜひお読みください。
赤ちゃんの目の異常の一般的な原因
赤ちゃんの目に異常があれば心配になります。訴えが自分で伝えられない赤ちゃんのために、早期に発見し適切な治療を受けることが大切になってきます。早期発見に繋がるように赤ちゃんの病気の原因について理解をしてみましょう。
先天性の原因
先天性の原因とは、赤ちゃんが生まれる前から眼の発達に問題があることを意味します。赤ちゃんが子宮内で正常に成長できなかったり、遺伝的な問題がることが原因です。先天性の目の異常には、網膜色素変性症、先天性白内障、網膜弛緩症などがあります。
環境要因
環境要因とは、具体的には赤ちゃんが過度に紫外線にさらされると、網膜や視神経に損傷を与えることがあります。または煙草の煙や家庭内の化学物質(塗料・排気ガス)など有害物質は眼の発達に影響を与える可能性があります。
感染症やアレルギー
感染症やアレルギーは、赤ちゃんの目の健康に深刻な影響を及ぼすことがあります。一般的な感染症としては、結膜炎や角膜炎などがあります。これらは細菌やウイルスによって引き起こされ、目の充血や痛み、光に対する過敏性などの症状を引き起こします。
赤ちゃんは、まだ免疫力が十分に発達していないため、感染症に罹りやすく、症状が重くなりやすいとされています。アレルギーは、花粉やハウスダスト、ペットの毛などに反応して、目のかゆみや充血、涙目、結膜炎などの症状を引き起こすことがあります。
赤ちゃんの目の異常の症状と診断
赤ちゃんの目の異常にはさまざまな症状があります。赤ちゃんの保護者が注意を払って観察し、早期に発見することが重要です。
よく見られる症状
一般的なよく見られる症状は、以下のようなものです。
- ・目の充血
- ・目が充血している
- ・目が腫れている
- ・目やまぶたが炎症を起こしている
- ・眼球が動かない
- ・目やにが出ている
- ・目をこする
- ・視線が合わない
- ・目が内側に寄っている
- ・目で物を追ったりしない
注意深く観察して、気になるところがあれば眼科医に相談しましょう。
診断方法と検査
以下のような検査を行い診断します。
- ・目の視力検査: 赤ちゃんの目の機能を評価するために、光を使って目に投影された図形や文字を認識する能力を測定します。
- ・瞳孔拡張検査: 瞳孔を拡張する点眼薬を使い、眼底検査や視神経の機能を調べる検査です。瞳孔を拡張することで、眼の内部をより詳しく観察することができます。
- ・眼圧測定: 眼圧が高くなると緑内障などの病気を引き起こすことがあるため、眼圧を測定する検査も大切です。
- ・血液検査: 一部の目の病気は、遺伝子異常や代謝異常が原因の場合があります。病気の原因を特定するため行う検査です。
これらの検査は、眼科医師が適切な検査を選択し、正確な診断を行うために必要な場合に行われます。
事例とエピソード
赤ちゃんの目の病気には、多くの種類がありますがその中でもよく見られる事例とエピソードを3つ上げます。どの事例にも当てはまりますが、早期発見と治療が大切です。
事例1: 先天性白内障とその経過
白内障といえば高齢者でよく聞く病気ですが、実は生まれつき水晶体が濁る病気もあります。それが先天性白内障です。成長に伴い発症し、進行するものもあります。原因は遺伝や子宮内感染(風疹・トキソプラズマ)などです。
先天性白内障は早期発見して治療を開始しなければ、視機能の発達途上の大切な時に視覚刺激が閉ざされて弱視が進む可能性があります。出生後より白内障が高度に見られる場合は、水晶体と硝子体前部を切除する手術が必要になってきます。
しかし、2歳未満では眼内レンズが合わなくなる可能性が高いので、レンズを挿入せずに、術後にはコンタクトレンズや無水晶体用の眼鏡が必要です。2歳以降、成長に伴い白内障が進行し、手術する場合は眼内レンズを挿入します。ただし、度数の変化はあるので術後は眼鏡で矯正が必要です。
白内障の程度が軽度であれば、手術適応とまでは行きませんが、定期的に眼科で進行の具合を検査する必要があります。先天性白内障で手術治療後にも、視機能を発達させていくために、家庭で弱視に対する練習が大切です。
時には緑内障や、網膜剥離などを発症する場合もあり、成人となっても眼科で定期検査を受けて目の健康を守っていくことになります。
引用)日本小児眼科学会 先天白内障
事例2: 斜視とその経過
斜視は、両眼の視線が同じ方向を向かず、右眼と左眼が違う方向を向いている状態のことをいいます。斜視は両眼で見る視機能が低下し、立体や奥行きの感覚が低くなります。両眼の機能は発達しにくくなるので、弱視になる場合もあります。斜視は子どもの2%に現れ、よく見られる病気です。原因は色々ありますが、眼球を動かす筋肉・神経の病気、遠視や、視力不良により起こるとされています。
斜視の治療は、手術とそれ以外の方法があります。手術は乳幼児では全身麻酔で行います。目を動かす筋肉の場所をずらすことで眼の位置を調整します。手術以外の方法は、コンタクトレンズや眼鏡を使う方法があります。
他には、眼帯やアイパッチで良い方の眼を遮蔽する方法などがあります。子どもの斜視は放置しても治りません。赤ちゃんの場合は内側に目が寄っていることもあり、斜視と間違いそうな偽斜視というものがあります。これは成長と共に治りますが、本当の斜視は自然と治りません。少しでもおかしいなと思うことがあれば早めに相談することをおすすめします。
引用)日本眼科医会 子供の弱視・斜視
事例3: 弱視とその経過
人の視力は3歳ごろには大人と同じ視力まで発達すると言われています。この視力の発達時期になんらかの異常があり、視力の発達が止まり、眼鏡をかけてもあまり見えないという状態が弱視です。原因としては遠視・屈折異常・斜視・白内障や眼科腫瘍などがあります。
弱視は視力検査できる年齢3歳ごろまでは弱視と診断するのは困難で、視力検査だけでなく、屈折検査や斜視検査など総合して弱視と診断します。診断後、予防的に治療を始めます。治療は眼に合った眼鏡を装着、異常を矯正する眼鏡を使用します。白内障などの病気による弱視であれば病気に応じた手術や治療を行います。
視力の成長は10歳ごろまでにはピークを迎え、以後は治療の効果も難しくなってきます。そのため、早期に治療を開始するほど、反応もよくなり視力の改善につながります。
引用)日本弱視斜視学会 弱視
治療法と対処法
赤ちゃんの目の異常に対する治療法や対処法は、その異常の原因や症状によって異なります。医学的な治療法と自宅でできる対処法を行うとより、治療も進みます。また、医師との連携が重要であり、適切な治療法や対処法をしていくには、症状や経過について詳しく伝えることが大切です。ここでは、それぞれの治療法や対処法について詳しく解説します。
医学的治療法
赤ちゃんの目の病気には、医学的治療法があります。治療法は、病気の種類によって異なりますが、以下に一般的な治療法を示します。
- ・眼軟膏や点眼薬の使用:細菌感染による結膜炎など、目の病気に対して抗生物質の点眼薬やステロイド点眼薬が使われる場合があります。
- ・抗アレルギー薬の使用:アレルギー性結膜炎に対しては、抗ヒスタミン薬やステロイド点眼薬が使用されます。
- ・手術:病気の重症度や種類によっては、手術が必要な場合があります。例えば、白内障の治療には人工水晶体の挿入が必要です。
- ・経過観察:一部の病気は、自然治癒することがあります。経過観察が必要な場合もあります。
これらの医学的治療法は、眼科医や小児科医の指導の下、適切な方法で行われる必要があります。自己判断での治療は、病気の悪化や合併症のリスクがあるため、必ず眼科の診察を受けて指示に応じてください。
自宅でできる対処法
赤ちゃんの目の異常でよく見られるのは、斜視やさかさまつげ、その他にも先天性白内障など先天性のものもあります。自宅でできる対処法は一番は異常の早期発見です。赤ちゃんは症状を訴えることができません。そのため家族や周りの方が注意深く観察することが大切です。
おかしいなと思う症状があればすぐに眼科医の診察を受けてください。早期発見は早期治療につながる可能性が大きいです。以下のような症状に気をつけてください。
- ・めやにが多い
- ・白目が赤くなっている
- ・いつも涙が出ている
- ・まぶしそうにしている
- ・目が内側や外側に寄っている
- ・目の真ん中が白くなっている
- ・目で動くものを追わない
- ・目を細めて見たり、本やテレビを近づいて見る
- ・頭を傾けて横目で見る
眼科医や小児科医との連携
赤ちゃんの目の異常の病気については、早期発見と適切な治療がとても重要です。そのため、眼科医や小児科医との連携が欠かせません。保護者が赤ちゃんの目の異常を感じた場合は、まずはかかりつけの小児科医に相談することをおすすめします。小児科医が必要に応じて眼科医や専門医の紹介をしてくれることもあります。
また、眼科医や小児科医との連携がスムーズに進むように、赤ちゃんの保護者自身が症状や経過についてメモを取っておくことも大切です。例えば、症状の出現時期や程度、痛みやかゆみの有無、目の充血の程度、視力の変化などを記録することで、医師に適切な情報を提供できます。
眼科医や小児科医との連携で病気の経過を追いながら適切な処置を行うことで、赤ちゃんの目の異常が改善される可能性が高くなります。保護者は、赤ちゃんの目の異常に関して不安を感じた場合は、専門家のアドバイスを仰ぎながら適切な対処を行うことが大切です。
予防方法
赤ちゃんの目の異常を見つけ、悪化を未然に防ぐためには、早期発見が非常に重要です。また、定期的な健康診断や日常生活での注意も欠かせません。以下にそれぞれの詳細について説明していきます。
早期発見の重要性
赤ちゃんの目は発達途中であり、何らかの異常がある場合、それが放置されると将来的に視力の低下や視機能の障害を引き起こす可能性があります。また、病気の進行によっては、治療が難しくなることもあります。
赤ちゃんの目の異常に気づいたら、早急に医療機関を受診し、専門家の診断と治療を受けることが大切です。
定期的な健康診断
赤ちゃんの健康診断は、病気を早期に発見するためにとても重要です。定期的に医師に診てもらうことで、症状が出る前に病気を発見できる可能性が高くなります。赤ちゃんは成長が早いため、定期的に診てもらい、病気の早期発見につなげましょう。
日常生活での注意点
赤ちゃんの目の健康を守るためには、日常生活の中で注意することがあります。例えば、タバコの煙や花粉、ほこりなどの刺激物から赤ちゃんの目を守ることが大切です。また、長時間の紫外線も目に良くないので、日差しが強い時は帽子や日よけで紫外線を防いでください。最近ではテレビやスマートフォンの画面を至近距離で見せないようにしましょう。
小児科医と眼科医からのアドバイス
赤ちゃんの目の異常に関して、小児科医や眼科医のアドバイスを受けることはとても大切です。小児科医と眼科医それぞれの意見について見ていきましょう。
小児科医の意見
小児科医として、赤ちゃんのご家族が安心して相談できるように、適切なアドバイスや情報提供を行っています。赤ちゃんの成長や発達に合わせて、定期的な健康診断の受診や、目の異常に関する不安や疑問がある場合には、いつでも相談に応じます。
また、目の異常が疑われる場合には、専門的な知識を持つ眼科医との連携も大切と感じています。赤ちゃんの目の異常について、正しい知識を持ち、早期に発見・治療することが大切です。私たち小児科医も、赤ちゃんの成長をサポートするために、親御さんと一緒になって取り組んでいきたいと思います。
眼科医の意見
赤ちゃんの目に異常がある場合、適切な治療を受けるためには眼科専門医に相談することが大切です。眼科医は、正しい診断と治療法を提供することができます。また、網膜剥離や白内障などの病気がある場合は、手術が必要な場合もあります。その際には、専門的な知識と技術が必要になります。
また、定期的な健康診断も非常に重要です。目の異常がなくても、視力検査を受けることで、早期に視力低下を発見することができます。赤ちゃんの目の健康は、日々のケアと早期の診断と治療にかかっています。眼科医と小児科医の連携を大切にし、気にかけていることや不安なことがあれば、いつでも相談してください。
まとめ
赤ちゃんの目に異常があれば不安になることもあるでしょう。赤ちゃんはどうしても異常を訴えることが難しいので、周りの人が気付いてあげることが大切です。そして早期発見が何より治療の成功につながります。また、定期的な健康診断赤ちゃんの目の異常を早期に発見するためにも重要です。可愛い赤ちゃんの健やかな目を皆で守っていきましょう。