「なかなか妊娠しない…」「生理周期が安定しない…」――そんな悩みを抱える方の中には、身体の“冷え”を放置しているケースが多いです。実は、子宮や卵巣をはじめとする女性の生殖器官は、血流不足が大敵。温かい状態を保つことでホルモンバランスが安定し、妊娠に適した環境をつくりやすくなります。
近年、身体を内側から温めるアプローチとして“漢方”に注目が集まっています。漢方には体質改善を通じて体温を底上げする処方が多く、冷え性の改善に向いているといわれています。本記事では、妊活中の方ができる「体温アップのための5つの対策」をご紹介。漢方と日常習慣を組み合わせて、冷え性を克服し、妊娠力を高めていきましょう。

なぜ「冷え」は妊娠を妨げるのか?
冷え性があると血の巡りが悪くなり、子宮や卵巣への栄養と酸素の供給が滞りがち。さらに、体温が低いとホルモンバランスも乱れやすく、生理周期や排卵のタイミングをつかみにくくなる場合があります。ここでは、冷えが妊娠にどう影響するのか、その具体的なメカニズムを確認してみましょう。
冷えが招く悪影響
冷え性の方は子宮や卵巣への血流が滞りがちになり、卵子の質や子宮内膜の厚みに悪影響を及ぼすと考えられています。さらに、体温が下がると自律神経の働きが不安定になり、ホルモンバランスが崩れる要因にも。妊娠は卵子と精子の出会いだけでなく、着床しやすい子宮内膜の状態や、安定したホルモン環境が不可欠です。
“冷え性”のサインに要注意
- 基礎体温が低め:体温が36°未満
- 手足や下半身の冷え:冬場だけでなく、夏場の冷房でも冷えを強く感じる
- 生理痛が重い:レバー状の血の塊が出る、経血量が少ない
- 下痢や便秘になりやすい:冷えで内臓の機能が落ちている可能性も
- 顔色や爪、唇の色が悪い:皮膚の血行不良
- イライラしやすい:冷えると交感神経が有意な状態が続く
- 肩こり、緊張性頭痛:疲れやすさにも影響あり
これらが思い当たる方は、冷え対策を急ぐことで妊娠力を底上げできる可能性があります。

漢方で体を温めるメリット
冷えの解消には、ひざ掛けや厚着などの「外から温める工夫」も大事ですが、根本から体質を変えて体温を上げるには限界があります。そこで注目したいのが「漢方」。身体のバランスを整えつつ、冷えとストレスを同時にケアすることで、妊娠しやすい“温かい体”へと導いてくれます。ここでは、そのメリットや代表的な処方を見てみましょう。
体質を根本から改善
西洋医学の場合、直接的な対症療法(排卵誘発剤や人工授精など)がメイン。一方、漢方は全身のバランスを整えながら“温かい体”に導く点が強みです。たとえば、気(き)・血(けつ)・水(すい)のバランスを調整する処方を使い、血行を促進しつつ冷えやストレスもまとめてケアできます。
代表的な「温め」漢方の例
- 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):女性特有の体調不良をバランスよく整えてくれる処方。原因不明の下腹部痛にも応用される。
- 当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう):手足の冷え、しもやけ、スーパーの冷凍食品売り場などで冷えて腹痛が起きやすい人に。
- 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):瘀血(血の滞り)を解消する代表的な処方。肩こりが気になる人の生理不順に。
漢方薬は体質や症状に合った処方を選ぶことが重要。冷えと一口に言っても、原因や程度は人それぞれなので、専門家のカウンセリングを受けるのがおすすめです。

体温を上げる5つの対策
いよいよ、具体的な方法を順に紹介します。漢方薬だけに頼るのではなく、日々の生活から改善することで、より効果的に冷えを克服できます。
対策1 ~ 半身浴&足湯で体を芯から温める
半身浴のメリット
- 下半身を集中的に温められる
お湯につかるのはみぞおちのあたりまで。のぼせにくく長時間入浴可能なので、体の芯から温まります。 - 副交感神経が優位になりリラックス
ストレス緩和にも効果的で、ホルモンバランスの安定に寄与。
足湯の手軽さ
- 夜や隙間時間に5~10分
お湯につかるだけでも冷えに効果的。 - 漢方薬の吸収を高める作用も
入浴が難しい時でも気軽に実践でき、漢方薬を服用中は有効成分が巡りやすくなることが期待されます。
対策2 ~ 食事で体を温める温活レシピ
温性食材を積極的に摂る
- ショウガ、ネギ、にんにく、山椒などの薬味、シナモン、根菜類(にんじん、れんこん、ごぼう等)、発酵食品(味噌、納豆など)
これらは身体を内側から温める作用があるとされ、漢方の考え方でも重宝されます。 - スープや鍋料理の活用
ショウガ入りの味噌汁、根菜たっぷりの煮込み料理など、毎日の献立で体を温める工夫を。ショウガは熱を加えることで、体を温める成分が増加します。 - 不足しがちなタンパク質
肉、魚、卵、豆類などのタンパク質は、体の材料としても大切です。糖質とともに摂ることで、熱エネルギーを産生します。
避けたい“冷やす食材”
- スムージーや果物、冷たい飲み物を過剰に摂取するのはNG。
基本、旬の野菜や果物を摂取することが大切。例えば、冬場にきゅうりやトマトなどの夏野菜をたくさん食べるのは避けましょう。バナナなどの南国フルーツや氷の入ったスムージーは、根菜スープや温野菜に置き換えることで、体への負担が減ります。
対策3 ~ 運動とストレッチで巡りを改善
軽い有酸素運動が冷え性に効く理由
- ウォーキングやヨガ
血流を促進するだけでなく、適度な筋肉量を維持することで基礎代謝が上がり、冷えを予防。電車通勤時に、エスカレーターは使わず階段にすることから始めるのもよい。 - 運動不足が続くと下半身が冷えやすい
デスクワーク中心の方は、1日30分のウォーキングを目標にしてみましょう。無理ない範囲で日常生活を楽しめることが大切。
下半身ストレッチの基本
- 骨盤周りのストレッチ
骨盤の歪みは血流を阻害し、冷えや生理不順の原因に。寝る前に骨盤まわりをほぐすだけでも効果的。 - ふくらはぎのマッサージ
“第二の心臓”と呼ばれるふくらはぎを刺激し、末端まで血液を送り届けやすくする。階段や坂道を歩くことも、ふくらはぎを鍛える手段として有効。
対策4 ~ 漢方薬の上手な続け方
自己判断は禁物!専門家に相談
- 漢方薬は人によって合う・合わないがあるため、医師や薬剤師のカウンセリングを受けるのがベスト。
- 定期的に基礎体温や体調を確認し、飲み方や処方を調整してもらうと効果が実感しやすい。
- 漢方薬は西洋薬と比べると副作用が少ないものの、人によっては気をつける必要がある。
煎じ薬 vs エキス剤 vs 錠剤
- 煎じ薬:効果が高いとされるが、味や手間が最大のネック。漢方薬局によっては、自宅で煎じる手間のかからないレトルトパックタイプもある。
- エキス剤・錠剤:外出先でも服用しやすく、保険適用の可能性も高い。
大衆薬の漢方エキス剤の場合、使用される生薬の種類や加工方法が違うので、味や舌触り、体感に違いがあることも。 - その人の症状や状況、ライフスタイル、費用面を考慮し、納得できる漢方を選ぶことが成功の鍵。
対策5 ~ ライフスタイル全般を温活仕様に
衣類・寝具の見直し
- レッグウォーマーや腹巻きの活用
下半身の血流を止めないようにするサポートも冷え対策につながる。 - 寝具のあたたかさ
特に冬場は布団をしっかりあたためる。寝る前に湯たんぽを使うのもおすすめ。
メンタルケアも重要
- ストレスが冷えを悪化させる
妊活はどうしても精神的プレッシャーが大きいが、心の緊張が血流を滞らせることも。 - 夫婦で協力しながら取り組む
病院や専門家を訪ねる際には、夫婦二人で話を聞けるのがベスト。一人で抱えこまず、パートナーや家族と情報を共有し合うのが効果的。

まとめ:冷えを撃退して、妊娠しやすい身体へ
冷えは妊活を遠ざける大きな要因の一つですが、漢方を取り入れながら生活習慣を見直すことで、妊娠しやすい体づくりは十分可能です。
- 漢方で内側から温める:当帰芍薬散、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、桂枝茯苓丸などの他にも、体を温める処方が漢方にはあります。個人の体質に合った処方を選ぶ
- 半身浴・足湯・食事・運動・衣類の5つの視点で冷え対策:日常習慣をトータルに改善し、血流を促進
- 専門家との定期的な相談:漢方薬は自己判断では合わない処方を続けてしまうリスクあり。漢方に詳しい婦人科医や薬剤師等の専門家にフォローアップしてもらうと安心
- メンタル面をケアする:ストレスは冷えを加速させる可能性があるので、リラックスを心がける
焦りやすい妊活こそ、コツコツと体質改善に取り組むことが結果につながる近道です。まずは、小さな一歩として、お風呂に長めにつかる、温かい食材を意識して摂るなど、できることから始めましょう。体がポカポカ温まってくると、自然と心にも余裕が生まれ、妊娠に適した環境づくりがぐっと進んでいくはずです。
引用元:厚生労働省 働く女性の心とからだの応援サイト https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/health/column-18.html
専門家より

村田 明美
今回は冷え改善にフォーカスしてお伝えしましたが、必ずしも「冷えていると妊娠できない」というわけではありません。ただ、女性の体は冷えやすくできており、妊活中に冷えを放置することは体づくりの妨げにもなり得ます。
「妊娠しないのは冷えの影響あるかも…」と感じた時は、冷え以外の要因も含めて複合的に見直していくことが大切です。漢方は、そうした“全体を見て整える”アプローチが得意です。焦らず、自分に合った方法を専門家と一緒に探してみませんか。
