子宮筋腫と不妊:原因、症状、そして対策

はじめに

いつかは子供も生まれて幸せな家族をと夢を持っていても、時には予期せぬことが起こります。その中でも、女性にとっては問題となるのが子宮筋腫です。 子宮筋腫 は、日本の女性の約3人に1人が抱えていると言われる疾患です。良性腫瘍ではありますが、その大きさや位置によってさまざまな症状を引き起こすことがあります。特に、妊娠を希望している方々にとっては、その影響が気になることでしょう。この記事では、子宮筋腫を抱えつつも、妊娠 を望む多くの方々へ向けて、その関連性や対策について詳しく解説します。

子宮筋腫とは

子宮筋腫は、子宮 の筋肉層にできる良性の腫瘍です。つまり、がんではなく、一般的には命に危険を及ぼすことはありません。しかし、筋腫の大きさや位置によって、さまざまな症状や影響をもたらす可能性があります。これらの腫瘍は、子宮の内側または外側、あるいは子宮の筋肉の中にできることがあり、大きさはごく小さいものから直径10cm以上にまで及ぶこともあります。腫瘍が子宮の内腔に位置する場合は、「子宮腺筋症」とも呼ばれることがあります。

子宮筋腫の主な原因はまだ完全に解明されていませんが、女性ホルモンである エストロゲン の影響が関与していると考えられています。一般的に、子宮筋腫は生理周期に伴って成長し、妊娠中や更年期には縮小することが多いですが、中には症状が持続するケースもある病気です。

子宮筋腫の症状

子宮筋腫は、さまざまな症状を引き起こすことがあります。ただし、全ての女性が症状を経験するわけではなく、無症状のままであることもあるので注意が必要です。以下に、一般的な子宮筋腫の症状をいくつかご紹介します。

症状具体例
月経異常子宮筋腫が子宮内腔に位置すると、生理の出血量や期間が増加する
生理痛の悪化特に大きな腫瘍や子宮内腔に位置する腫瘍が関連します
腹部の膨らみや圧迫感子宮筋腫が大きくなると、周囲の臓器や組織に圧迫をかけるため、腹部に膨らみや圧迫感が生じる。
頻尿や尿意子宮筋腫が膀胱に圧迫をかけることで、頻尿や尿意が生じる
便秘や腹痛子宮筋腫が腸に圧迫をかけることで、便秘や腹痛が起こる
性行為時の痛み性行為時に痛みを感じることがあれば、子宮筋腫を疑う
子宮筋腫の症状

これらの症状は、一般的なものですが、必ずしも全ての人が経験するわけではありません。子宮筋腫の症状が個人によって異なるため、自身の体の変化に注意を払い、症状の変化がある場合は医師の診断を受けることが大切です。

子宮筋腫と不妊の関連性

子宮筋腫があるが、妊娠を望む多くの方々にとって、不妊の問題は大きな悩みとなることでしょう。実際に、子宮筋腫が不妊の要因となるケースが存在します。子宮筋腫が不妊に影響を与える主なメカニズムの一つは、子宮内腔の形状やサイズの変化です。子宮内腔が変形してしまうことで、受精卵 が正しく 着床 できない場合があります。また、子宮筋腫が子宮の適切な収縮を妨げ、受精卵の着床や胎児の成長に支障をきたす可能性も考えられます。

 子宮筋腫は生理周期にも影響を及ぼすため、排卵受精 が適切に行われないこともあるでしょう。ただし、全ての子宮筋腫が不妊の原因となるわけではありません。軽度の筋腫や、位置が子宮の外側にある場合は、不妊に大きな影響を及ぼさないこともあります。また、多くの場合、適切な治療法や対策を通じて、不妊の問題を解決できる場合があるので医師に相談してください。

不妊と子宮筋腫の統計

子宮筋腫は、30歳以上の女性の間で、おおよそ20~30%の割合で認められ、この中で、粘膜下筋腫が占める割合は15~25%になります。粘膜下筋腫や子宮内腔の変形を伴う筋腫は妊娠する可能性を低下させ、流産の原因となるので注意が必要です。ただし、子宮筋腫が不妊の原因となるかどうかについては、まだ研究が進んでいる段階であり、議論があることも確認されています。

引用)日本産婦人科医会 5.不妊の原因と検査

子宮筋腫と不妊:原因、症状、そして対策

子宮筋腫の診断と治療

子宮筋腫が妊娠を希望する女性の体に影響を及ぼすことを理解したところで、正確な診断と適切な治療法の選択が重要です。ここでは、子宮筋腫の診断方法から一般的な治療法、そして子宮筋腫による不妊の治療法について探っていきます。

子宮筋腫の診断方法

子宮筋腫の診断は、主に以下の方法によって行われます。

  • ・触診: 医師が身体を触診し、腹部の変化を評価する手法です。子宮筋腫が存在する場合、腹部に膨らみや圧迫感が生じていることが確認されることがあります。この方法によって、子宮筋腫の存在を推測する初歩的な手段となります。
  • ・超音波検査: 超音波検査は、子宮内の腫瘍の大きさや位置をメスを入れずに評価するために広く使用される方法です。子宮筋腫の大きさや数、位置などを確認します。この方法は病院やクリニックで比較的簡単に行うことができ、診断に重要な情報を提供します。
  • ・MRI(磁気共鳴画像検査): MRIは、より詳細な画像を提供するために使用される高度な診断ツールです。大きい筋腫や手術を考えていく必要のある場合にはMRI検査を実施することが多いでしょう。大きい筋腫は悪性の肉腫との区別が難しい場合があり、注意を要します。MRIは超音波検査よりも詳細な情報を提供するため、より正確な診断が可能となります。

これらの診断方法を適切に組み合わせることで、子宮筋腫の種類や状態を正確に評価し、適切な治療法を選択する上での重要な情報を得ることができます。医師との相談を通じて、最適な診断アプローチを決定することが大切です。違和感がなくても定期的に検査を受けることをおすすめします。

子宮筋腫の治療法

子宮筋腫の治療法は、腫瘍の大きさや症状の程度によって異なるアプローチとなります。筋腫が小さく、症状がない場合は治療の必要はなく様子見となります。以下に一般的な治療法について詳しく説明します。

薬物療法

薬物療法は、子宮筋腫の成長を抑えるために用いられる方法です。主に以下の種類の薬物が使用されます。

  • ・ホルモン療法: ゴナドトロピン放出ホルモンアナログ( GnRHアナログ )と呼ばれる薬物は、エストロゲン の分泌を抑制し、子宮筋腫の成長を遅らせます。これにより、腫瘍のサイズを縮小させることが可能です。卵巣の機能は抑えられるの更年期の症状が見られることがあります。骨密度も減少するなどの副作用もあるので、半年以上の長い期間の使用は不可能です。そのため、使用をやめると筋腫は再び大きくなり症状も出現します。
  • ・対症療法:子宮筋腫による月経量の多さや、長い月経、月経時の痛みなどの症状を緩やかにするのを目的とした治療です。

1・鉄剤、月経量が多い場合に貧血対策で処方されます。
2・非ステロイド性抗炎症剤:月経痛のコントロールが目的です。
3・低用量のエストロゲン、プロゲスチン:子宮内膜の成長を抑制し、出血量を軽減させる効果があります。稀ですが、血栓塞栓症などの重い副作用が見られることもあるので医師とよく相談して選択して決めましょう。自己判断は危険です。

引用)日本婦人科腫瘍学会 薬物療法

手術療法

大きな腫瘍や重度の症状を引き起こす場合、手術療法が考慮されます。一般的な手術アプローチは次の通りです。

  • ・子宮筋腫摘出術: 妊娠の希望がある生殖年齢の方はこちらの手術を選択します。この手術では、子宮筋腫だけを取り除き、妊娠するのに大切な子宮体部は保持されます。これにより、子宮を保ちつつも腫瘍の症状を緩和することが可能です。筋腫の場所や大きさ、数などにより、開腹手術になるか腹腔鏡かになるので、医師とよく相談してください。リスクとしては、子宮を残すため、筋腫は再発する可能性があります。
  • ・子宮全摘術: 子宮筋腫が著しく大きかったり、症状が重篤である場合、子宮全摘術が選択されることがあります。この手術では子宮全体が摘出されますが、将来の妊娠は不可能となります。

治療法の選択は、個々の症状、年齢、健康状態、そして妊娠の希望などを総合的に考慮して行われます。薬物療法は非侵襲的なアプローチとして、症状の緩和と腫瘍の管理に効果的ですが、再発する可能性があることを理解する必要があります。手術療法はより根本的な解決策を提供しますが、手術に伴うリスクや妊娠への影響も考慮すべきです。医師との詳細な相談を通じて、最適な治療プランを選択することが重要です。

子宮筋腫と不妊:原因、症状、そして対策

生活習慣と対策

子宮筋腫を持ちながら妊娠を望む方にとって、生活習慣の見直しと適切な対策は重要な要素となります。健康な生活習慣の確立と子宮筋腫による不妊のリスクを軽減するための対策を考えてみましょう。

  • ・健康的な食事:バランスの取れた食事を心がけましょう。繊維豊富な食品や抗酸化物質を摂取することで、ホルモンバランスの調整などが期待されます。
  • ・適切な運動:適度な運動は体重の管理や血流の改善に役立ちます。子宮筋腫の成長を抑える効果もあります。ただし、過度な運動は逆効果となることがあるため、医師の指導を受けながら行うことが大切です。
  • ・ストレス管理:ストレスはホルモンバランスに影響を及ぼす要因の一つです。リラックス法や深呼吸、瞑想などの方法を取り入れ、ストレスを軽減することが子宮筋腫の管理に役立つ可能性があるでしょう。
  • ・定期的な医師の診察:定期的な健康診断や医師の診察を受けることは、子宮筋腫の変化や成長を追跡し、適切な対策を取るために重要です。専門家のアドバイスに従い、最新の状況を把握しましょう。
  • ・情報収集とサポート:子宮筋腫に関する正しい情報を収集し、適切なサポートを受けることも大切です。専門家や支援グループからアドバイスや情報を得ることで、不安や疑問を解消し、健康的な妊娠を目指す道筋を描けると安心して子供を授かることについて考えられることでしょう。

生活習慣の見直しと適切な対策は、子宮筋腫と妊娠を望む方々の健康と幸福に向けた大切な一歩です。治療と共に、医師の指導のもとで具体的な日常での対策を実践することがおすすめです。

子宮筋腫と不妊:原因、症状、そして対策

専門家より

子宮筋腫は不妊の原因のひとつと考えられています。その中で、妊娠を希望することは、不安も多くあることでしょう。しかし、正しい知識と適切なアプローチにより、妊娠することは可能です。診断と治療は個別の状況により異なります。薬物療法や手術は一般的なアプローチですが、医師との相談を通じて最適な選択をしましょう。また、生活習慣の見直しやストレス管理など、自身の健康への取り組みも大切です。専門家との連携と自己ケアのバランスを大切にし、前向きな気持ちで、子供を授かれるように進んでいきましょう。

この記事を書いた人

東岡 えりこ

理学療法士
医療ライター