妊娠できる不妊治療クリニックの選び方

「もしかして不妊かも」「そろそろ妊活をはじめたほうがいいのかしら」そう感じたら、病院を探すタイミングかもしれません。
しかし、不妊治療を行う病院にはさまざまなものがあり、どこを選んでいいか迷ってしまうのではないでしょうか。
今回は、不妊治療クリニックの選び方を紹介します。

不妊症とは?

妊娠可能な年齢の夫婦が子どもを望んでいて、 避妊 せずに性交しているのにもかかわらず1年以上妊娠しない状態を「 不妊症 」といいます。
2021年に国立社会保障・人口問題研究所が実施した「第16回出生動向基本調査」によると、不妊を心配したことがある夫婦は3組に1組以上、不妊の検査や治療の経験がある夫婦は4.4組に1組となっています。

不妊の原因はさまざまです。
女性側だけに原因があるわけではなく、男性側に原因があることも。
その割合はほぼ半々だといわれています。
妊娠するためには、夫婦が協力して治療に向き合うことが必要です。

妊娠できる不妊治療クリニックの選び方

不妊症チェックをしてみよう

YesとNoだけで簡単に答えられるチェックシートを使って、不妊症のセルフチェックをしてみませんか。
チェックは2~3分で終わります。
チェックし終わるとすぐに医師監修の簡易な診断結果が得られ、解説を読めます。
これから受診するべきかどうかを判断する材料になるでしょう。

女性編と男性編の2つを用意しています。
ぜひ、夫婦でチェックしてみてください。

不妊治療を始めるタイミングとは?

不妊治療 を始めるのに、決まったタイミングはありません。
もしかして不妊かもと思ったとき、今の状況を変えたいと思ったときが、ベストタイミングです。
ただし、次のような場合には、できるだけ早く医師に相談することをおすすめします。

  • ・女性が35歳を超えている
  • ・生理不順
  • ・過去に骨盤髄膜炎などにかかったことがある

不妊治療を行う病院とは?

不妊治療を行う病院には、大きく分けて3つのタイプがあります。

一般産婦人科医院

自宅や職場の近くにある一般の産婦人科医院は、見つけやすく通いやすい病院です。
はじめの相談から、妊娠できた場合の妊婦健診まで、ずっと同じ医師に診てもらえることが多いため、安心できる存在となるでしょう。

ただし、どれだけ不妊治療に力を入れているかは病院によって異なります。
体外受精 などの 生殖補助医療 が必要になった場合には、他の病院を紹介されることもあります。

不妊治療専門クリニック

不妊治療にはタイミング法などの「 一般不妊治療 」と、 体外受精顕微授精 といった「 生殖補助医療 」があります。

専門知識を持った医師や 胚培養士 などの専門家がそろっていて、充実した設備があり、診療範囲が広いのが不妊治療専門クリニックの強みです。
なかでも、日本生殖医学会が認定する「生殖医療専門医」は、現代の高度な生殖医療に対応できるスペシャリストです。

不妊治療専門クリニックは大きな都市に集中していることが多く、通院に時間や費用がかかることもあります。
なお、2022年4月より不妊治療には公的医療保険が適用されるようになり、治療を受ける人の経済的な負担が軽減されています。

引用元)厚生労働省 不妊治療に関する取り組み

大学病院・総合病院

大学病院や総合病院には、産婦人科だけではなくさまざまな診療科があります。
入院施設があり、緊急の場合にも対応しているため、もしものときに安心です。

他の診療科と連携して持病の治療にも対応してもらえることや、医療設備が充実していることなどがメリットです。
一方で、多くの患者さんが訪れるため、待ち時間が長くなったり、診察のたびに担当医が変わったりするなどのデメリットもあります。

引用元)東京都福祉保健局 不妊症Q&A 不妊治療はどこで受けられますか?

妊娠できる不妊治療クリニックの選び方

不妊治療で行う検査は?

病院ではさまざまな検査をおこなって、不妊の原因を探ります。

女性側の検査

 

  • ・ 内診 ・ 超音波検査 : 子宮内膜症子宮筋腫クラミジア感染症 などがないかを調べる
  • 子宮卵管造影検査卵管の詰まりや、子宮の形の異常がないかを調べる
  • ・ 血液検査 :女性ホルモンの分泌量や、甲状腺機能などを調べる
  • ・ 性交後試験 ( フーナーテスト ):排卵直前に性交し、女性の子宮頸管粘液内に運動精子があるかを調べる

男性側の検査

  • 精液検査: 精液 の量、 精子 の濃度や 運動率 、運動の質などを調べる
  • ・泌尿器科的検査
    ・診察:これまでにかかった病気、 勃起 や 射精 などの状況の確認、 精索静脈瘤 (せいさくじょうみゃくりゅう)がないかどうかなどを調べる
    ・超音波(エコー)検査: 陰嚢 にエコーを当てて男性機能を調べる
    ・血液検査: 男性ホルモン や 性腺刺激ホルモン 、 染色体 や遺伝子などを調べる
    ・その他: 精子 の機能や、精子形成の状態などを調べる
妊娠できる不妊治療クリニックの選び方

不妊治療クリニック選びのチェックポイント

不妊治療 クリニックを選ぶ際にチェックする点を、1つずつ見ていきましょう。

  • ☑︎ 自宅や職場からのアクセスはよいか

不妊治療を行うには、月に数回クリニックに通う必要があります。
無理なく治療を続けるためには、できるだけ自宅や職場から通いやすいクリニックを選ぶとよいでしょう。

  • ☑ 仕事をしていても通いやすい診療時間か

土日や祝日、朝や夜間の診療をしているクリニックもあります。
仕事をしている人には、無理なく通院できる診療時間・曜日であるかが重要になるでしょう

  • ☑ 子連れで受診できるか

一人目は授かったものの、二人目の不妊に悩む夫婦もいます。
受診の際に子どもを連れて行く必要があるなら、子連れでも受診できるクリニックを選びましょう。

  • ☑ 大学病院や総合病院か

持病がある場合や、不妊関係の手術が必要な場合などには、他の診療科との連携が取れ、手術にも対応できる大学病院や総合病院を選ぶとよいでしょう。

  • ☑ 不妊治療専門クリニックか

体外受精や顕微授精などの 高度生殖補助医療 を考えているなら、不妊治療専門クリニックに相談しましょう。

  • ☑ 生殖専門医がいるか

不妊治療に関して専門的な知識を持つ医師がいるかどうかも検討しておきましょう。
体外受精や顕微授精などを多く実施している医師であれば、個々の患者に対して豊富な経験から適切な治療法を導きやすくなります。

  • ☑ 大手有名クリニックか

大手の有名なクリニックには、 体外受精 の成功のカギとなる 胚培養 の専門家「 胚培養士 」がいることが多いです
最先端の設備を導入し、スタッフの研修に熱心なクリニックでは、最新の治療を選択できる可能性が高まります。

  • 地元の小規模クリニックか

地元のクリニックは、通いやすいことが大きなメリットです。同じ医師に最初から最後までずっと診てもらえることが多いのも安心ですね。

不妊の原因が男性にある場合、自覚症状があることは少なく、精密検査ではじめてわかることが多くなっています。
婦人科と泌尿器科が連携できる 男性不妊 の専門医は、日本にはまだそれほど多くありません。

  • ☑ 女性医師がいるか

デリケートな産婦人科の診療では、女性医師に担当してもらいたいと考える人もいます。
女性医師がいるかどうかを、事前に調べておくとよいですね。

  • ☑ 医師・スタッフが信頼できるか

不妊治療には、長い時間がかかることもあります。
信頼できる医師やスタッフがいるクリニックで、ストレスなく治療に向き合えることが大切です。
受付スタッフの対応や、看護師がどのように接してくれるか、医師の説明はわかりやすいかなどをチェックしましょう。

  • 治療実績を公開しているか

公開されている治療実績は、クリニックの評判や実力を判断する材料になります。

  • ☑ 治療方針は合っているか

医師と自分たちの治療方針が合致するクリニックで治療を受けましょう。
仕事や家庭のことも考えて自分たちの納得できる方針を決めていってください。

  • 口コミはよいか

できるだけ多くの情報を集めて、自分にとってよい病院かどうかを判断しましょう。
有名な医師か、どんな検査をするのか、待ち時間はどれくらいか、たらい回しにされることはないかなど、口コミが参考になります。
ただし、オンラインの情報には誤ったものや古い情報も含まれていることがあるため、情報の確かさの判断には注意が必要です。オンラインの情報だけでなく、知り合いの評判などもチェックしましょう。

  • ☑ クリニック内でカウンセリングなどの相談が可能か

不妊治療中は不妊の悩みだけではなく、家族のことや仕事のこと、人間関係のこと、経済的なことなど、思い煩わされることがさまざまにあります。カウンセリングを受けられるクリニックなら、心も一緒にケアすることができますね。

  • 漢方や鍼灸の取り扱いがあるかどうか

不妊治療に漢方や鍼灸を取り入れているクリニックは少数です。
希望する場合は、取り扱いのあるクリニックをチェックしておきましょう。

  • 費用が明確か

治療が長引いたり、より高度な治療に取り組んだりする場合、費用負担が重くなります。
はじめに明確に説明してくれるクリニックを選び、納得したうえで治療にのぞみましょう。

  • 体外受精が可能か

タイミング法 や 排卵誘発法 、 人工授精 までは「 一般不妊治療 」の範囲ですが、 体外受精 や 凍結融解胚移植 などは「 生殖補助医療 」となります。
どこまでの治療が可能か、体外受精をする場合には、採卵時の 卵巣刺激方法 や麻酔の種類、移植方法などが選べるのかについても、あらかじめ調べておくと安心です。

  • ☑ 培養室の設備や管理は適切か

体外受精の際に、精子や卵子受精卵 を扱う場所が培養室です。
温度や湿度が一定に保たれているか、チリや菌のないクリーンな空間となっているか、クリニックのサイトで確認したり、説明会で聞いておくとよいでしょう。

  • ☑ 医療安全対策が徹底されているか

精子や卵子、受精卵の取り違えは決してあってはならないことです。
院内感染の対策ができているか、診療時の本人確認が徹底しているか、などをチェックしておきましょう。

妊娠後に 流産 や死産を繰り返してしまう状態を「 不育症 」といいます。
不育症には 染色体 や子宮の形、血液の状態などが関係していると考えられています。
不育症かもと思ったら、不育症に対応できるクリニックを選ぶとよいですね。

引用元)東京都保健福祉局 不育症についての基礎知識

妊娠できる不妊治療クリニックの選び方

まずは説明会に参加してみよう

自分たちに合った病院やクリニックを選ぶために、まずは、積極的に情報収集をおこないましょう。
ホームページやInstagram、YouTubeなどで発信しているクリニックもあります。

クリニックが説明会を実施している場合はできるだけ参加して、どんな設備があるか、治療方針や医師の考え方は自分たちと合っているか、などを見ておくとよいですね。
いくつかのクリニックの説明会に参加して、自分たちに合った病院を見つけてください。

専門家より 

不妊治療クリニックを選ぶ際は、ネットの情報だけでなく、実際に医師や看護師と話してみた雰囲気や、信頼して一緒に治療に臨めると思えるかどうかがとても大切です。患者さんにしかできないこと、医療者にしかできないこと、それぞれ役割があり、ともに力を合わせていくことが妊娠への近道と感じます。不妊治療経験者の方の意見としては、通院回数を考えると、近いと通いやすくて良かったという声や、通院帰りに買い物やお茶をして気分転換できる場所であることがよかったなど、メリットに感じる項目は人それぞれです。情報に流されすぎず、ご自身にとってどの項目が優先順位が高いのかを考えてみると良いでしょう。

この記事を書いた人

田村 由美

子授かりネットワーク 編集長