卵管閉塞と不妊:原因、症状、そして対策

はじめに

子供を持つ夢は多くの人々に共通するものです。しかし、その夢が現実に変わるのは容易ではないこともあるでしょう。不妊の経験をする方々の中には、卵管閉塞が原因となっているケースがあります。この卵管閉塞とは、どういった状態で、どのように不妊と関連しているのか。そして、対策はどうすれば良いのか。これらの情報を本記事で解説していきます。

卵管閉塞とは

卵管は、女性の生殖システムにおいて非常に重要な役割を果たしています。この管は 卵巣 から放出される 卵子 を 子宮 に運ぶ経路として機能しており、同時に 精子 が卵子と出会う場所です。この過程が順調に進行することで、受精 という奇跡が起こり、妊娠 へとつながります。しかし、さまざまな要因により、卵管が狭窄したり、完全に閉塞したりすることがあります。卵管閉塞とは、このような状態を指し、これが起きると 卵子 の移動が困難となり、自然な妊娠の障壁となるのです。狭窄や閉塞の原因は多岐にわたり、感染症や外傷、手術の後遺症、内部の癒着などが考えられます。

この状態が妊娠に与える影響は大きく、卵管閉塞は不妊の原因のひとつです。特に、受精前の段階で問題が生じるため、精子との出会いそのものが妨げられ、受精の可能性が低下します。現代医療の進歩により、卵管閉塞に対する検査や治療方法も進化してきました。適切な治療を受けることで、多くの女性がこの問題を克服し、妊娠することができています。

卵管閉塞の症状

卵管閉塞は、女性の生殖能力に大きな影響を及ぼす可能性がある状態です。その実情として、多くの女性が卵管閉塞の症状を自覚しづらいことが特徴的です。これは、卵管閉塞 そのものが直接的な痛みや不快感を引き起こすわけではないためです。しかし、その中で一部の女性は、周期的な腹痛や 不正出血 といった症状を経験することがあります。これらの症状は、卵管の閉塞や狭窄によって生じる異常な血流や炎症、あるいは 卵巣 の機能障害といった関連する問題から起きることが考えられます。それに加え、卵管閉塞は 不妊 の原因となるだけでなく、特に子宮外妊娠のリスクを増大させることが知られています。

子宮外妊娠とは、卵子が子宮ではなく、主に卵管内で精子と出会い、そこに着床する現象を指します。この状態は、卵管が破裂するリスクを伴い、深刻な腹痛や出血などの症状を引き起こすことがあります。さらに、放置されると生命を脅かす危険もあるため、早期の診断と治療が必要不可欠です。

周期的な腹痛や 不正出血 などの異常を感じた場合、無視せず医師の診断を受けることが大切です。正確な検査によって、卵管閉塞やその他の生殖器の異常が早期に発見されることで、適切な治療や対処が可能となります。

卵管閉塞と不妊:原因、症状、そして対策

卵管閉塞と不妊の関連性

卵 と精子 の出会いは、卵管 で行われます。卵管 が閉塞すると、この重要な出会いが妨げられ、妊娠への道が断たれることがあります。このため、卵管閉塞は不妊の大きな原因となり得ます。日本の不妊治療を受けている女性の中で、卵管閉塞 が原因であるケースは決して少なくありません。この問題に対する理解と早期の対応が、望む妊娠への近道となるでしょう。

不妊と卵管閉塞の統計

日本における不妊の原因としての一部の統計によれば、不妊治療中の女性の約20%が卵管に起因するものとされています。そのためこの20%は、不妊の主要な原因として非常に大きな数字であり、その多くの女性が卵管閉塞の存在を知らずに悩んでいます。卵管閉塞の主な原因としては、過去の感染症や手術、炎症などが考えられます。特に性感染症は、卵管の狭窄や閉塞を引き起こすリスクがあります。このような背景を持つ方々は、早めの医療機関での診断と対応が必要です。

引用)日本産婦人科医会 5.不妊の原因と検査

卵管閉塞と不妊:原因、症状、そして対策

卵管閉塞の診断と治療

診断と治療は、専門的な知識と技術を持つ医療機関で行われます。早期の発見は、不妊のリスクを低減するために極めて重要です。適切な治療を受けることで、妊娠への道が再び開かれる可能性が高まります。

卵管閉塞の診断方法

確定診断には、いくつかの検査手法が用いられます。まず、超音波検査は初期の診断手段として広く利用されています。これは非侵襲的で痛みが少なく、卵巣や子宮の状態、さらには卵管の狭窄や癒着の有無を視覚的に捉えることができる方法です。特に、卵巣 の位置や形状、さらには卵の質に関する情報を詳しく知ることが可能です。次に、卵管造影検査という手法も重要です。この診断法では、卵管に造影剤を注入し、X線撮影を通じて卵管の詳細な状態を確認します。 卵管 の通り道や狭窄、閉塞の位置と程度を非常に詳細に知ることができ、治療方針の決定に役立てられる検査です。

さらに、狭窄の原因を特定するための追加的な検査も行われることがあり、感染症や炎症が疑われる場合、血液検査や生検を行って、病原体の特定や炎症の程度を調査します。このような診断の過程は、不妊治療における大きな一歩となります。そのため、信頼できる医療機関や専門医との連携が極めて重要です。

卵管閉塞の治療法

卵管閉塞の治療は、その原因や症状の程度、そして女性の年齢や健康状態に応じて選択されます。

治療方法内容・特徴
薬物治療・卵管の炎症や感染が原因の場合に適用される。
・抗生物質や抗炎症薬が処方され、炎症や感染を抑制し、卵管の状態を改善。
卵管鏡下卵管形成術(FT) ・物理的な原因(癒着や組織の損傷など)での閉塞や狭窄の箇所に対応。卵管にバルーンカテーテルを挿入し治療する。
・ 卵管の通路を再開することを目的とする。
自然妊娠 が可能となることも。
卵管切除術・卵管の腫れなどの状態により卵管切除を選択する場合もある。
卵管水腫の場合は体外受精に影響を及ぼすと考えられ、体外受精 の移植前に切除出を行うことが多い。
卵管閉塞の治療法

治療を選択する際は、患者の状態や希望を十分に理解し、最適な方法を選ぶことが必要です。その上で、専門医と綿密に相談し、治療計画を策定することが妊娠への成功の鍵となります。

卵管閉塞による不妊の治療法

​​卵管閉塞の不妊治療としては、主に体外受精( IVF )が考えられます。卵管 が閉塞してしまうと、卵子と精子が出会う場所が塞がれてしまうため、自然な妊娠が難しくなります。この問題を回避するため、体外で卵子と精子を   受精 させ、受精卵を子宮内に移植するIVFが適用されることが多いです。IVFは卵管閉塞だけでなく、他の不妊の原因にも対応できる治療法であり、多くの夫婦にとっての希望となる手段として知られています。

卵管閉塞と不妊:原因、症状、そして対策

生活習慣と対策

私たちの日常の生活習慣は、健康や体調、さらには心の状態にも大きな影響を与えます。適切な生活習慣を維持することで、病気の予防や体調の向上、ストレスの軽減など、様々なメリットを享受することができます。

  • ・食生活: バランスの良い食事を摂ることで、必要な栄養素を適切に取得し、体の機能を最適化することができます。特に、野菜や果物を多く摂ること、過度な塩分や糖分を避けることは心血管疾患のリスクを低減させると言われています。
  • ・適度な運動: 日常的に適度な運動を取り入れることで、筋力や心肺機能の向上、メタボリックシンドロームの予防などの効果が期待できます。ウォーキングやストレッチ、軽い筋トレなど、無理なく続けられる運動を選ぶことが大切です。
  • ・休息: 必要な休息を確保することで、身体や心の回復を助けることができます。特に、質の良い睡眠は、免疫機能の強化や記憶の整理、疲労回復に効果的です。
  • ・ストレス管理: 長期的なストレスは、心身の健康を害する要因となり得ます。趣味やリラクゼーション、深呼吸や瞑想など、自分に合ったストレス解消法を見つけることが重要です。
  • ・禁煙と適量の飲酒: タバコは多くの疾患の原因となるため、禁煙は健康維持のための基本です。また、飲酒は適量に留め、肝臓への負担を軽減しましょう。

これらの生活習慣の見直しと対策を通じて、健康的な生活を送ることができるよう努めましょう。

専門家より

卵管閉塞は女性の妊娠に影響を及ぼすことがあります。現代医療の進歩により、卵管閉塞による不妊に対する治療法もあり、 体外受 精( IVF )は一般的な選択肢となり、多くの成功例が報告されています。治療に合わせて生活習慣や健康を見直すことも大切です。何よりも、希望を失わずに前向きな気持ちで取り組むことが大切です。不妊治療は時には長く、心身ともに疲れる道のりとなることもありますが、多くのご夫婦が乗り越えています。医師とよく相談して、希望を持って治療を進めて行きましょう。

この記事を書いた人

東岡 えりこ

理学療法士
医療ライター