子宮内膜症がある人でもFTは受けられる?

子宮内膜症は、骨盤内で炎症や癒着を起こしやすく、卵管の「通り道」に影響することがあります。 そのため、卵管造影(HSG)で「通過性が低い」「詰まりが疑われる」と指摘されるケースは珍しくありません。 とはいえ、HSGは通りやすさを推定する検査であり、結果は 年齢・妊活期間・卵巣予備能(AMH など)・精子所見・卵管因子を合わせた総合評価の中で位置づけるのが基本です。本記事では、内膜症と卵管因子が重なるときの考え方を、FTが合う/合わないの目安、 FT(卵管鏡下卵管形成術)の位置づけ、受診ステップ、よくある質問までを整理します。

子宮内膜症と卵管因子

内膜症があるからといって、すべての方が同じ方針になるわけではありません。 症状の強さ・進行度・既往手術・妊活の時間軸によって、検査の読み取りや治療の優先度が変わります。 HSG の「狭い/詰まり」という表現も、一時的なけいれん(攣縮)による通りにくさと、 癒着や水腫といった構造的な通過障害を区別して理解する必要があります。

進行度・症状・既往手術で方針は変わる

痛みが強い、月経困難症が顕著、腹腔鏡歴がある――といった背景があると、卵管の遠位(卵巣側の卵管の出口部分)で癒着や 卵管水腫が示唆されることがあります。遠位病変が強い場合は、 IVF(体外受精) 前処置(例:癒着剥離や切除の検討など)を先に考える場面が出てきます。 一方、日常生活の痛みは軽度で既往手術もなく、HSG で近位(子宮側の卵管の入口部分)の通りにくさが示唆される場合は、 卵管造影で再評価(必要に応じて再開通の試み)を検討する価値が生じます。

HSG 所見の読み取り:近位か遠位か、左右差はあるか

画像を読む際は、以下の 4 点をセットで確認すると整理が進みます。

  • 部位:近位(子宮側の卵管の入口部分)か遠位(卵巣側の卵管の出口部分)か。
  • 左右差:片側だけか、両側か。繰り返し同じように現れるか。
  • 拡散:腹腔内へ「もやっと」広がる像が確認できるか。
  • 形状:遠位の袋状膨大(=水腫の示唆)がないか。

なお、検査の刺激や緊張で生じる攣縮によって近位が細く見えることがあり、持続的な閉塞を意味しない場合もあります。 結果票と画像を同時に見ながら説明を受け、疑問はメモに残しておくと、次の検討がスムーズです。

子宮内膜症がある人でもFTは受けられる?

参考元:厚生労働科学研究成果データベース リプロダクティブヘルスからみた子宮内膜症の実態と対策に関する研究

FT は誰に合う?誰に合わない? ─ 目安と選択肢の比較

FT の目的はあくまで通過性の改善治療であり、妊娠の成立を保証するものではありません。 「合う/合わない」は、所見と希望(自然妊娠志向/IVF 志向)、そして年齢×期間×因子の交点で判断します。 次のリストはその目安です。

合う可能性があるケース

  • ・HSG で片側近位の通過性の低下や途絶が繰り返し示唆される。
  • ・他因子(卵巣予備能・精子所見など)が比較的軽度と説明を受けている。
  • ・年齢的に一定の時間余裕があり、自然〜AIH(人工授精)の検証期間を組み立てたい。

合わない可能性があるケース(目安)

  • ・遠位の癒着/卵管水腫が疑われる、または両側の通過不良が強い。
  • ・年齢要因が強く、短い時間で次段階に進む方針が適している。
  • ・卵巣機能低下が顕著、重度の男性因子など、卵管以外の要因が大きい。
選択肢向いている状況の例通院負担検討期間の目安補足
計画的待機/タイミング年齢若め・他因子軽度・片側通過が保たれる数周期(見直し必須)HSG 所見と年齢で上限を決める
AIH(人工授精片側通過、排卵因子軽度、負担を抑えたい低〜中数周期(回数で総合見直し)回数の比較
FT(卵管の通りの整備)近位の構造的な通過障害が疑われる中(一般に日帰りのことあり)術後 数周期で検証→見直しINF前に検討されることがある
腹腔鏡/IVF 前処置遠位の癒着や水腫が示唆、両側重度中〜高術後の回復を見て判断IVF 計画とセットで検討
IVF(体外受精年齢要因が強い、他因子が複合中〜高周期単位時間の観点を重視する状況

※表の内容や実施体制・保険適用・自己負担は施設・制度により異なります。本ページは特定施設の標準運用を示すものではありません。

参考文献:厚生労働省 不妊治療の保険適用について

受診ステップと「迷ったとき」

治療の選択には迷いが出てしまうものです。そんな時は 目標時期(◯年◯月)と評価点(AIH◯回/HSG 再評価/精子所見の推移)を先に決め、 「思うような改善が見られなければければ次の治療へ」という条件を決めましょう。生活・仕事の制約、心理的負担も考慮し、 現実的に続けられるものかを確認しましょう。

一般的な受診の流れ

  1. 初診:症状・HSG 画像と結果票・治療歴・希望(自然妊娠/IVF )を共有して現状整理。
  2. 追加確認:必要時に HSG の再チェックや卵管通水検査、超音波等で近位/遠位の鑑別を確認。
  3. 方針カンファレンス:計画的な待機/AIH/FT/腹腔鏡/IVF の期待と限界を同じ軸で比較。
  4. 実施:FT が合うと判断した場合は手術を行い、数周期(目安 3 か月で検証→見直し。遠位病変が強ければ腹腔鏡や IVF 前処置を優先。

よくある質問(FAQ)と持ち物チェック

  • 内膜症があっても FT を検討できますか?
    近位の通過不良が疑われ、他因子が軽度のときに検討されることがあります。
  • FTと IVF、どちらを優先すべき?
    年齢・因子・期間で異なります。遠位病変や水腫が強い場合、IVF 前処置や IVF を先に検討する選択肢が考えられます。
  • 術後はいつから妊活を再開?
    担当医の指示に従います。生活・仕事への影響は個人差・施設差があります。
  • 再び通過性が下がることは?
    可能性はあり得ます。数周期での振り返りを計画に組み込み、必要に応じて方針を見直します。
  • 費用や制度は?
    条件・制度・施設で異なります。最新の自己負担は院内案内でご確認ください。
子宮内膜症がある人でもFTは受けられる?

助産師より

子宮内膜症と聞くと、それだけで妊娠が難しいのでは…と不安になる方も多いと思います。けれども、内膜症があっても妊娠される方はたくさんいらっしゃいます。

大切なのは、「どのくらいの進行度で」「どの部分に影響があるのか」を正しく知ること。卵管の通り道を整えるFTやIVFなど、治療の選択肢は一つではありません。あなたの体の状態や希望、生活のリズムに合わせて、最適な方法を一緒に見つけていきましょう。


焦りや比較よりも、まずは「自分の体を知ること」から。結果や数値だけで判断せず、あなたの努力や想いを大切にしながら、寄り添えるサポートを続けていきます。

あわせて読みたい関連記事

この記事を書いた人

田村 由美

子授かりネットワーク 編集長

この記事を監修した人

中 友里恵