はじめて男性不妊を疑ったとき、「泌尿器科で良いのか? それとも不妊治療専門クリニックか?」 と戸惑う方は少なくありません。結論から言えば、
- ・精液検査など一次スクリーニングは泌尿器科が最も身近で手早い
- ・タイミング法や人工授精の一般不妊治療をしている産婦人科クリニックで精液検査をできるところもある
- ・生殖補助医療を検討したり、夫婦同時に治療方針を立てたい場合は不妊治療専門クリニックが効率的
ただし、医師の専門性や設備、通いやすさによって最適解は変わります。本稿では診療科の違い、生殖医療専門医の役割、クリニック選定のチェックリスト、受診前の準備までを体系化しました。
この記事を読んで、“自分に合った受診先” を迷いなく選びましょう。
男性不妊の診療科と専門医
男性不妊は泌尿器科か不妊治療専門クリニック、で診ますが、両者の診療範囲と専門医の有無で得られる検査・治療は大きく異なります。まずは違いを整理しましょう。
泌尿器科 vs 不妊治療専門クリニック早見表
比較項目 | 泌尿器科 | 不妊治療専門クリニック(男性外来) |
主な診療内容 | 精液・ホルモン検査、前立腺・精巣診察、手術(精索静脈瘤など) | 精液検査+高度生殖医療(AIH/IVF/ICSI)を夫婦同時に計画 |
担当医の専門 | 泌尿器科専門医/生殖医療専門医 | 生殖医療専門医(泌尿器科 or 産婦人科) |
高度検査 | 陰嚢超音波・染色体検査 | DNA断片化検査・AI画像解析など最先端も導入しやすい |
メリット | 近隣で受診しやすい/手術対応が得意 | 夫婦同日受診&治療計画が一体化/ARTへ即連携 |
デメリット | 女性側治療は別施設になることも | 男性専門医が不在のクリニックもある |
男性不妊専門医とは?
日本生殖医学会の「生殖医療専門医」などの資格を持つ医師で、精索静脈瘤手術や精巣内精子採取術(TESE)の執刀経験が豊富。WHO 準拠の精液検査を詳細に読影し、結果を妊娠戦略に落とし込むのが強みです。

クリニック選びのポイント
男性不妊の治療は長期戦。アクセス・治療範囲・心理的ストレスまで見据えた総合評価が失敗しないコツです。
1. 検査・治療メニューの網羅度
- ・外科系:精索静脈瘤顕微鏡下手術、simple-TESE/micro-TESE
- ・検査系:DNA断片化検査・Y染色体微小欠失・ホルモン詳細パネル
- ・ART系:AIH(一般不妊治療)/IVF/ICSI を院内で完結できるか
2. 通いやすさとプライバシー
- ・仕事帰りに寄れる平日 19–20 時台まで診療
- ・土日診療・オンライン問診有無
- ・採精室の防音・個別番号呼び出しなど男性が通いやすい配慮
3. 医師・スタッフの説明力と相性
- ・初診 30 分以上かけ質問に答えてくれるか
- ・治療ステップを図解で提示し、費用と期間を明示するか
- ・カウンセラー常駐でメンタルサポートが受けられるか

受診前の準備と心構え
必要情報を整理して臨むだけで初診の質が上がり、治療開始までのタイムロスを防げます。
初診チェックリスト
準備物・情報 | 具体例 |
病歴・既往症 | 思春期以降の高熱/感染症、鼠径ヘルニア手術歴、内分泌疾患の有無など |
生活習慣 | 喫煙本数・飲酒量、夜勤有無、有害物質暴露、肥満、 など |
妻側の情報 | 妻の年齢、 AMH 値・排卵状況・治療歴(あれば) |
質問メモ | 精液検査の方法と費用、手術適応の基準 etc. |
夫婦受診のメリット
- ・医師の説明を二人同時に聞ける → 認識の齟齬防止
- ・男性側も妊活の当事者と自覚 → 生活改善のモチベーション向上
- ・ART に移行が必要な場合、治療計画を立てやすく、夫婦で治療コストとタイムラインを即決しやすい

男性不妊受診フローチャート
男性不妊は、自己判断では原因や治療法がわかりにくいものです。早めに受診し、精液検査で現状を確認することで、治療の必要性や進むべき方向が明確になります。
このフローチャートでは、受診のきっかけから専門医紹介、そして生殖補助医療(ART)までの基本的な流れをまとめました。

よくある質問(FAQ)
Q | A |
精液検査だけで十分? | 濃度・運動率・形態の一次スクリーニングには必須。ただし異常が軽度でも DNA 断片化検査やホルモン測定で深掘りすると治療方針が明確になります。 |
泌尿器科しか近くにないが大丈夫? | 初期検査と手術適応の判断は泌尿器科で完結可。ART が必要なら後日専門クリニックを紹介してもらえます。 |
受診費用は? | 精液検査は保険適用になれば 1,000 円前後。高度検査や手術も 2022 年以降多くが保険3割負担です。(一部の検査は自費となります) |

まとめ – “迷わず動ける” 3ステップ
- 最寄りの泌尿器科で精液検査:結果を数値化し、自分の立ち位置を把握
- 専門性と通いやすさで施設比較:表で示した3つの観点(メニュー/アクセス/相性)をチェック
- 夫婦で受診・情報共有:治療コストとタイムラインを二人で決定し、長期戦に備える
参考文献
こども家庭庁 男性不妊
WHO 1 in 6 people globally affected by infertility
WHO laboratory manual for the examination and processing of human semen, 6th ed
日本産婦人科医会 (3)男性不妊症の検査・診断
助産師からのメッセージ

「男性不妊かもしれない」と思ったとき、多くのご夫婦が「どこに行けばいいんだろう…?」迷ってしまいますよね。私がこれまでに関わってきた方々の中にも、泌尿器科に行くべきか、不妊治療専門クリニックに行くべきか悩み、なかなか最初の一歩が踏み出せなかったご夫婦がたくさんいらっしゃいました。
あるご夫婦は、最寄りの泌尿器科で検査を受けたことで「女性側と比べて検査はシンプルだった。もっと早く受ければよかった」と安心されましたし、別のご夫婦は不妊治療専門クリニックで同時に検査を受けることで「二人で一緒に向き合えて心が軽くなった」とお話しされていました。どちらを選んでも、動いてみることで答えは必ず見えてきます。
妊活の場面では、どうしても女性が「自分だけ頑張らなきゃ」と思ってしまいがちです。でも実際には、男性が一緒に調べ、生活を整え、夫婦で理解を深めることが妊活を長く続ける大きな力になります。
不安や迷いを抱えたときこそ、専門家を頼ってください。助産師として、私自身も身体のことだけでなく、心の伴走者でありたいと思っています。お二人が安心して前に進み、一歩一歩を一緒に重ねていけるよう応援しております。