18トリソミーと13トリソミー:違いと特徴を詳しく解説

 妊娠 や出産は多くの人にとって喜びとなりますが、赤ちゃんがなんらかの病気を抱える可能性を考えると戸惑いや不安が増すことでしょう。 不妊治療 を考えている方や実施中の方が気になるであろう赤ちゃんの染色体の異常が「トリソミー」です。この記事では、 染色体異常 としてよく知られる「18トリソミー」と「13トリソミー」に焦点を当て、その違いと特徴、診断方法、対応策について解説します。

トリソミーの基本概念

トリソミーとは何か、どのようなリスクがあるのか、そしてそれが私たちの遺伝情報とどのように関連しているのか。ここでは、これらの基本的な疑問を明確にしていきます。

トリソミーとは?

トリソミーとは、通常2つであるべき染色体が3つ存在する状態です。この状態は、赤ちゃんに様々な疾患や特徴をもたらす可能性があり、特に「18トリソミー」や「13トリソミー」は深刻な影響を及ぼすことが多いです。

発生確率とリスク因子

トリソミーが発生する確率は様々な要素に影響を受けます。一般的に母体の年齢、健康状態、生活習慣などがリスク因子と言われていますがはっきりはしていません。特に35歳以上の女性が妊娠する場合、そのリスクは高くなると言われています。不安を感じる方は、 NIPT (新型出生前診断)を用いて早期にリスクを評価することが可能です。

参考)厚生労働省  不妊に悩む方への特定治療支援事業等のあり方に関する検討会報告書

ゲノムと染色体の関係

ゲノムは、生物が持つ全ての遺伝情報を指します。この遺伝情報は染色体に格納されており、人は通常46本の染色体を持っています。トリソミーが発生すると、染色体の数が47本に増え、これが様々な疾患や障害につながる可能性があります。このような背景知識は、トリソミーの影響を理解し、適切な診断や治療に繋げるためには欠かせません。

18トリソミーと13トリソミー:違いと特徴を詳しく解説

18トリソミーの特徴

18トリソミーは、特に注意が必要な 染色体異常 の一つです。この記事では、その主な特徴から、身体的、発達的影響まで詳しく解説します。

1. 常染色体異常の中でも最も一般的

18トリソミーは、特に常染色体異常の中で見られる疾患です。通常、染色体はペアをなして存在しますが、18トリソミーでは18番目の染色体が3つ存在することが特徴です。この異常は特に高齢出産の際に発生する確率が高まることが知られており、出生前診断(NIPT)などで事前に確認が可能ですので医師とよく相談してください。

2. ダウン症に似た身体的特徴

18トリソミーは、ダウン症といくつかの身体的特徴が似ています。例えば、耳の位置が低い、顎が小さい、体格が小さい、筋緊張が低い、などが挙げられます。

3. 発達遅延などの全般的な特徴

18トリソミーにおける発達遅延は、身体的にも言語的にも発達が遅れるケースが多いです。特に、早期の発育段階での遅れが確認されやすく、つかまり立ちや歩行、言葉の発達についても遅れが見られることが多いです。また、この発達遅延は症状が多様で、一人ひとりの子供で異なる表れ方をします。例えば、一部の子供は重度の知的障害を示すことがありますが、全ての子供がそのような症状を示すわけではありません。そのため、診断された場合には、専門医としっかりとした診察や検査を行い、個々の症状に合った治療プランやサポートを組むことが重要です。筋力の低下や運動能力の制限もしばしば見られます。これは日常生活においても支障をきたす可能性があり、早期の介入が求められます。

4. 心臓や腎臓などの構造的異常

18トリソミーを持つ赤ちゃんは、心臓、腎臓、肺、消化器などの内臓器官に構造的な異常が見られることが多いです。これらの異常は非常に重篤な状態を引き起こす可能性があり、出生後すぐに手術や治療が必要な場合もあります。一部では、出生前に異常を察知して、手術を行う医療機関も存在します。

18トリソミーと13トリソミー:違いと特徴を詳しく解説

13トリソミーの特徴

13トリソミー、またはパトウ症候群とは、13番染色体に異常が生じることで引き起こされる遺伝子疾患です。この記事では、その特徴的な症状について深く掘り下げていきます。

1. 常染色体異常の中では稀

13トリソミーは、常染色体異常の中でも比較的稀なケースです。一般的には出生児の5,000〜12,000人に1人に1人程度の確率で発生するとされています。そのため、妊娠中の遺伝子診断で特に注意が必要です。

2. 顔の形状が独特

頭や眼球が小さい、くちびるや口蓋(口の中の上側)に裂け目がある、耳の形も一般的な形状とは異なり、小さいなどの特徴が確認されています。

3. 成長が遅れやすく低体重

13トリソミーの赤ちゃんは、生まれたときから体重が低く、成長も遅れる傾向にあり、特に、新生児期から幼児期にかけての成長が顕著に遅れることが多いです。栄養補給や療養が必要となるケースもあります。

4. 知的障害や発達の遅れ

多くの13トリソミーの子供は、知的障害や発達の遅れが顕著なのが特徴です。

参考)厚生労働省 NIPTの対象とされるトリソミーについて

18トリソミーと13トリソミーの違い

18トリソミー(エドワーズ症候群)と13トリソミー(パトウ症候群)は、いずれも染色体異常によって引き起こされる遺伝子疾患です。しかし、それぞれ異なる染色体に問題があるため、症状や特徴、発症頻度が大きく異なります。以下でその違いを詳しく解説していきます。

1. 原因

  • ・8トリソミー:18番染色体が1本多い染色体異常
  • ・13トリソミー:13番染色体が1本多い染色体異常

2. 発症頻度

  • ・18トリソミー :出生児の3,500〜8,500人に1人
  • ・13トリソミー: 出生児の5,000〜12,000人に1人

18トリソミーのほうが若干高い頻度で発症しますが、いずれも稀な疾患です。

3. 特徴

  • ・18トリソミー:手足の指の形状が独特であり、知的障害や心臓疾患が多い。
  • ・13トリソミー:顔の形状が特徴的であり、眼球や耳が小さく、多くの場合、顔中央部に障害を持つ。

症状は染色体の違いにより、それぞれ特有のものとなります。

4. 症状

  • ・18トリソミー:成長遅延、心臓疾患、呼吸器疾患、腎臓の問題などが多い。
  • ・13トリソミー:成長が遅れやすく、知的障害や発達の遅れなどが見られる

これらの症状に対する対処や治療は、専門医の診断とケアが必要です。遺伝子診断や早期の介入が、症状の管理に大いに役立つでしょう。

18トリソミーと13トリソミー:違いと特徴を詳しく解説

診断と対応策

診断と対応策は、18トリソミーと13トリソミーを正確に理解し、適切な治療計画を立てる上で非常に重要です。特に、これらのトリソミー疾患は発症が早く、時には妊娠中に診断されるケースもあります。以下では、診断方法の比較を中心に、どのように対応していくべきかについて解説します。

診断方法の比較

18トリソミーや13トリソミーの診断方法にはいくつかの選択肢があります。それぞれの方法には、特長と限界がありますので、ご自身の状況に最も適したものを選ぶことが重要です。

妊娠中の診断

妊娠中には、主に超音波検査、羊水検査、絨毛膜サンプリングなどが行われます。超音波検査は非侵襲的でリスクが低いですが、確定診断には至らない場合が多いです。一方で、羊水検査や絨毛膜サンプリングは侵襲的な方法ですが、より正確な診断が可能です。

出生後の診断

出生後は、身体的な特徴や症状に基づいて初期診断が行われ、その後で染色体検査が通常行われます。これによって、特定のトリソミーが確定的に診断可能です。また、MRIやCTスキャン、心エコーなどが行われる場合もあります。これらは、関連する臓器の状態を詳しく調べるためのものです。診断方法にはそれぞれ長所と短所がありますので、専門家の意見を求めながら最適な方法を選びましょう。

医療的対応策とサポート

18トリソミーや13トリソミーが診断された場合、何をすれば良いのか、多くの方が悩むでしょう。専門医と綿密に相談しながら、以下のような対応策とサポートが考えられます。

早期介入

特に新生児期から幼児期にかけては、早期に発達支援やリハビリテーションを開始することが推奨されています。これには、理学療法、作業療法、言語療法などが含まれます。早期介入によって、発達の遅れを改善する可能性があるのでよく相談することが必要です。

その他の治療オプション

  • ・薬物療法: 症状や合併症に応じて、適切な薬物が処方されることがあります。例えば、心臓の問題がある場合は、心臓の機能をサポートする薬が用いられることがあります。
  • ・手術: 構造的な異常(例: 心臓の欠陥)が見られる場合には、手術が必要なケースもあります。
  • ・心理的サポート: 患者本人はもちろん、家族にも心理的な負担がかかるため、心理的サポートも非常に重要です。
  • ・教育的支援: 学校年齢に達したら、特別支援教育が必要な場合があります。各地域によって支援体制は異なるため、詳しくは地元の教育委員会などに問い合わせると良いでしょう。

以上のような対応策とサポートは、症状や患者の状態に応じてカスタマイズが必要です。従って、専門の医師や関連する専門家との連携が不可欠です。最適な治療とサポートを受けられるように、情報収集と専門家との協力を怠らないようにしましょう。

まとめ

トリソミー症候群は確かに深刻な問題であり、家族にとっては多くの課題が伴います。しかし、医学とテクノロジーの進歩により、より良い診断方法と効果的な治療法が開発されています。また、一家族でのサポートと専門医との連携は、症状の管理と生活の質の向上に大いに寄与します。さまざまな治療オプション、心理的サポート、教育プログラムがあり、それぞれの症状や状態に合った対応が可能です。専門医や関連するサポート団体との協力により、家族全体でこの課題に立ち向かい、可能な限り最良の結果を追求することが重要です。希望を持って、一歩ずつ前進しましょう。

この記事を書いた人

東岡 えりこ

理学療法士
医療ライター