子宮内膜症は、女性の生活に大きな影響を考える可能性がある疾患です。この記事では、子宮内膜症の基本的な症状や原因について詳しく解説します。
子宮内膜症とは
子宮内膜症とは、本来は子宮の内側にある子宮内膜またはそれに似た組織が、子宮の内側以外の場所で発生し、発育してしまう病気です。20~30代の女性に多く、特に30~34歳にピークがみられます。月経がある女性の約1割に発症すると言われています。
子宮内膜症の診断には、問診や画像検査、血液検査など用いられます。症状や検査結果をもとに医師が診断を行いますが、確定診断には腹腔鏡検査が必要になることもあります。診断の流れや具体的な検査方法について詳しく見ていきましょう。
子宮内膜症の基本的なメカニズム
子宮内膜症は、本来子宮の内側にあるべき子宮内膜組織が、子宮以外の場所で増殖と剥離を繰り返す疾患です。
最も有力な説として、月経血が卵管を通ってお腹の中に逆流し、その月経血中の内膜組織が骨盤内の臓器に付着・増殖することで子宮内膜症が発生すると考えられています。これは月経逆流説と呼ばれています。
子宮内膜症の種類
子宮内膜症は発生する部位によって以下のように分けられます。
- 腹膜病変: 腹膜内や臓器の表面に病変が発生する最も基本的なタイプです。
- 卵巣子宮内膜症(卵巣チョコレート嚢胞): 卵巣の中に発生する子宮内膜症です。月経時の出血が卵巣内に溜まり、卵巣嚢腫が形成されます。 嚢胞の中身は古い血液のためチョコレート色をしており、チョコレート嚢胞とも呼ばれます。
- 深部子宮内膜症: 子宮と直腸の間のダグラス窩と呼ばれる箇所とその周囲に高頻度で発生します。他の臓器との癒着を起こしやすく、診断や治療が難しいとされています。
- 他臓器子宮内膜症: 直腸、尿管、膀胱など、全身の様々な臓器に発生する可能性があります。
子宮内膜症の進行度
子宮内膜症の進行度は、病変の範囲や癒着の程度などによって、I期(微症)からIV期(重症)に分類されます。
子宮内膜症と月経の関係
子宮内膜症はエストロゲンという女性ホルモンの影響を受け、月経周期に合わせて増殖と出血を繰り返します。 月経がある限り、多くの内膜症は進行する傾向にあります。
子宮内膜症のリスク要因
子宮内膜症のリスク要因としては下記のようなものが挙げられます。
- 月経回数の増加: 初経年齢が早い、未出産、出産回数が少ない、月経周期が短いなど、月経回数の増加は子宮内膜症のリスクを高めます。
- 月経痛の強さ: 特に思春期以降月経痛が徐々にひどくなってきた場合は子宮内膜症の可能性があります。若年時から月経痛が強い、月経時に学校を休んだことがある、鎮痛剤が効かないほどの月経痛があるなどもリスク因子とされています。
- 家族歴: 遺伝性はありませんが、子宮内膜症と診断された患者の第1度近親者では発生しやすい体質である可能性が指摘されています。
- その他: ミュラー管欠損、ジエチルスチルベストロールの子宮内曝露などもリスク要因と考えられています。
子宮内膜症の症状
子宮内膜症は、月経痛や下腹部痛、不妊、さまざまな症状を気にします。 特に月経周期に伴って強いまる痛みは、日常生活に耐えることも少なくありません。の主な症状と、それぞれの特徴について詳しく解説します。
一般的な症状とその特徴
子宮内膜症の主な症状は痛みと不妊です。
痛みとしては、月経痛、下腹部痛、腰痛、性交痛、排便痛などが挙げられます。これらの痛みは月経周期と関連して強くなる傾向があります。
不妊は、子宮内膜症によって卵管が癒着したり、卵巣機能が低下したりすることで起こります。
痛みの原因とメカニズム
子宮内膜症の痛みの原因は、月経時に子宮内膜症病変からも痛みの原因物質(プロスタグランジン)が分泌されることや、炎症や癒着によって周囲の組織を刺激することなどが考えられています。
子宮内膜症による不妊の可能性
子宮内膜症は不妊症の主要な原因の一つです。子宮内膜症によって卵管の癒着や卵巣チョコレート嚢胞などが起こり、受精や着床が阻害されることで不妊症を引き起こします。
日常生活への影響
子宮内膜症の痛みは日常生活に大きな影響を与えることがあります。激しい月経痛のために仕事や学業に支障をきたしたり、家事や育児が困難になったりするケースもあります。
症状が悪化する要因
子宮内膜症の症状は月経のたびに進行し、悪化する傾向があります。また、ストレスや睡眠不足、冷えなども症状を悪化させる要因として挙げられます。
子宮内膜症の診断方法
子宮内膜症の診断には、問診や内診に加え、超音波検査やMRI、血液検査などが用いられます。確定診断のためには腹腔鏡検査が必要となる場合もあります。子宮内膜症の診断方法とその役割について説明します。
医師の診察と問診内容
子宮内膜症の診断は、まず医師による問診と内診が行われます。問診では、月経痛の程度や性状、性交痛や排便痛の有無、妊娠の希望などについて詳しく聞かれます。
画像診断とその役割
画像診断としては、超音波検査やMRI検査などが行われます。超音波検査では、卵巣チョコレート嚢胞や子宮筋腫などの有無を確認できます。MRI検査は、子宮内膜症病変の位置や大きさ、深達度などをより詳細に評価することができます。
血液検査の有用性
血液検査では、CA125の腫瘍マーカー測定が大切です。CA19-9のみが上昇することもあります。これらの腫瘍マーカーは子宮内膜症で上昇することがありますが、確定診断には用いられず、経過観察に利用されます。
病理検査の重要性
子宮内膜症の確定診断には、腹腔鏡検査や開腹手術で採取した組織の病理検査が必要です。顕微鏡で組織を観察し、子宮内膜に似た組織が認められれば子宮内膜症と診断されます。
診断の際の留意点
子宮内膜症の診断は、症状や画像検査の結果だけで判断することは難しく、病理検査による確定診断が重要です。また、子宮内膜症は他の疾患と症状が似ている場合もあるため、鑑別診断が重要となります。
子宮内膜症の治療方法
子宮内膜症の治療方法には、痛みを緩和する薬物療法や、ホルモン療法、手術療法など必要に応じて最適な治療法が選ばれます。ここでは、子宮内膜症に対する治療の選択肢とその効果について解説します。
薬物療法の種類と効果
子宮内膜症の薬物療法には、主に以下のものがあります。
- 鎮痛剤: 痛みを和らげるために、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)やアセトアミノフェンなどが用いられます。
- ホルモン剤: 子宮内膜症の増殖を抑えるために、以下のホルモン剤が用いられます。
- 低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP): 月経困難症の治療にも用いられる薬剤で、子宮内膜症の痛みを軽減し、進行を抑えます。
- プロゲスチン製剤: 子宮内膜の増殖を抑え、過多月経や生理痛、慢性的な痛みに効果があります。
- GnRHアゴニスト/アンタゴニスト製剤: 女性ホルモンの分泌を抑え、月経を止めることで症状を軽減します。
- ダナゾール: 排卵を阻害する合成アンドロゲンですが、アンドロゲン作用による副作用があるため、使用は制限されます。
- 漢方薬: 当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸などの漢方薬が月経痛の改善に用いられます。
手術療法の適応と手法
薬物療法で効果が不十分な場合や、卵巣チョコレート嚢胞が大きい場合などは、手術療法が検討されます。
手術療法には、腹腔鏡下手術と開腹手術があります。腹腔鏡下手術は、お腹に小さな穴を開けて手術を行う方法で、開腹手術に比べて体への負担が少なく、回復が早いという利点があります。
手術では、子宮内膜症病巣の切除や癒着の剥離、卵巣チョコレート嚢胞の摘出などが行われます。
生活習慣の改善とセルフケア
子宮内膜症の症状を和らげるためには、生活習慣の改善も重要です。特に、十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動、ストレスの解消などを心がけることが大切です。
最新の治療技術と研究
子宮内膜症の治療法は日々進歩しており、新たな薬剤や手術法の開発が進められています。
例えば、GnRHアンタゴニスト製剤であるレルゴリクス(レルミナ)は、従来のGnRHアゴニスト製剤よりも副作用が少なく、効果が高いとされています。
また、ロボット支援腹腔鏡下手術は、より精密な手術が可能となり、合併症のリスクを低減できると期待されています。
治療の選択とその指針
子宮内膜症の治療法は、症状の程度、年齢、妊娠出産の希望などを考慮して、患者さんと医師が相談の上で決定します。
痛みを和らげることを目的とする場合、妊娠を希望する場合、卵巣チョコレート嚢胞の治療を行う場合など、状況に応じて最適な治療法が選択されます。
まとめ
子宮内膜症は、月経痛や不妊など、女性の生活にさまざまな疾患です。正しくな診断と治療により、症状を管理し生活の質を向上させることが可能です。ホルモン療法、手術療法などの治療方法は、個々の症状や生活状況に応じて選択されます。 子宮内膜症のリスクや症状を冷静に、早期の対応と継続的なケアを行うことで、健康ような生活をサポートすることができます。