多くの女性が知らない生理不順の原因と改善方法

生理が遅れて来た、生理の間隔が不規則など、生理不順を経験したことのある人は多いでしょう。厚生労働省が発表した「国民生活基礎調査の概況(2016年)」では、20代で半数、30代・40代で約4割の女性が生理不順を含めた生理の異常を訴えていることがわかっています。

しかし、生理不順の原因や正しい改善方法を知っている人は少ないでしょう。生理不順について、くわしく解説します。

生理不順とは?

「生理不順」と一口に言っても、具体的にどういう状態かわからない人も多いでしょう。生理不順の定義と種類を見てみましょう。

生理不順の定義

「生理不順」とは、正常な生理の間隔よりも長かったり、短かったりする状態をいいます。正常な生理の間隔は、生理開始日から次回の生理の開始日までが25~38日です。

生理不順の種類

正常よりも短い間隔(24日以内)で生理が来た場合を「頻発月経」、正常よりも長い間隔(39日以上3か月未満)で来た場合を「稀発月経(もしくは希発月経)」といいます。

そして、3か月以上生理が来ない場合を、無月経 と呼びます。
頻発月経 や 稀発月経 を放っておくと 無月経 となり、排卵 が難しくなることを知っておきましょう。

生理不順の原因

生理不順はなぜおこるのでしょうか?原因として以下の6つが挙げられます。

ホルモンバランスの乱れ

生理は、卵巣 から出る2つの女性ホルモンと、脳から出るホルモンによって調節され、周期的におこるようになっています。このホルモンのバランスが乱れると、生理不順がおこります。ホルモンバランスは思春期や更年期に乱れやすく、また、体調や精神状態に左右されることも。

ストレス

ストレスはホルモンバランスを乱す大きな原因となります。人間関係や環境の変化、生活リズムの乱れなどもストレスになります。とくに最近は、新型コロナウイルス感染症の流行や物価の上昇など、ストレスを感じやすい状況です。自分自身も気づかないうちにストレスを溜めこみ、生理不順となって不調に気づくという場合もあります。

体重の変化

やせすぎや太りすぎ、急激な体重の変化はどれも生理不順の引き金となります。とくに、食事制限や激しい運動による急激なダイエットは、生理不順をおこしやすいため、ダイエットを行う場合は計画的に行うことが大切です。

運動不足や過剰な運動

運動不足は過剰な脂肪の蓄積を招いてしまい、生理不順になってしまうケースも。過剰な運動はからだにとって大きなストレスになり、ホルモンバランスの乱れを引き起こす可能性があります。適度な運動を習慣化できるといいですね。

食生活の乱れ

食生活の乱れは栄養の偏りや、太りすぎ、やせすぎの原因になり、生理不順の元です。栄養バランスの整った食事を3食とることが勧められます。

病気や症状による影響

生理不順がなんらかの病気によるものである場合があります。生理不順の原因として多い病気として下記が挙げられます。

  • ・多嚢胞性卵巣症候群( PCOS )

卵巣に未熟な卵胞卵子の元)が多数みられ、生理不順や不妊などの症状が表れる病気です。毛深くなる、声が低くなる、にきびが増えるなどの症状が見られる場合もあります。

排卵がおこらず、生理不順が続く状態です。不妊の相談で病院を訪れた人が、無排卵周期症と診断されるケースは珍しくありません。基礎体温を毎日測ってグラフにすると、妊娠が可能な年齢の女性は2相性(高温期と低温期に分かれる)になりますが、無排卵の場合には1相性の平坦なグラフとなります。

排卵後の女性ホルモンの分泌が少なく、排卵後の高温期の期間が短くなる状態です。生理周期が短くなるため、生理不順がおこります。また、排卵後の女性ホルモンの分泌不足によって、受精卵着床がうまくいかなかったり、着床できて妊娠の維持ができなかったりします。

引用元)「働く女性専門外来」に来院する女性に見られる、仕事に関連した不調
    日本内分泌学会 多嚢胞性卵巣症候群
    月経症状に及ぼす生活関連因子の検討

年代別の生理不順の原因

生理不順は、年代によって原因が異なる傾向があります。

10代の生理不順の原因

10代は生理が始まって間もないころであるため、ホルモンバランスが安定せず、生理不順となりやすい時期です。とくに生理が始まってから1年は排卵がないことも多いです。数年かけて定期的に排卵がおこるようになり、生理不順も改善していきます。

ただし、やせすぎや過度な運動が原因で生理不順をおこるケースもあります。

20代・30代の生理不順の原因

20代では、やせすぎや過度な運動、過労が原因で生理不順がおこりやすい時期です。また、20代・30代から少しずつ、多嚢胞性卵巣症候群などの婦人科の病気の発症率が上がってきます。

40代の生理不順の原因

40代は更年期に入るため、ホルモンバランスが崩れやすい時期です。閉経に向けて生理不順がみられるようになり、だんだんと生理の間隔が空くようになります。出血量が多くなったり、生理の期間が長くなったりすることが多くなります。

生理不順を改善する方法

生理不順は、生活習慣や日ごろの健康管理が影響します。生理不順を改善するために必要な生活習慣などを見てみましょう。

食事の改善

栄養バランスの整った食事をとることが勧められますが、具体的にどんな食事をとればいいのでしょうか?生理不順のある人の食事の傾向として、牛乳や卵などのタンパク質や、野菜の摂取量が少ないことが挙げられます。朝食で牛乳をコップ1杯飲む、卵や野菜を使ったメニューを意識的にとるとよいでしょう。

野菜をとるときには、サラダ1品程度では足りないため、野菜をたくさん入れたお味噌汁やスープを作るのがおすすめです。煮ることで野菜のかさが減り、1杯の汁物で多くの野菜を摂取できます。

適度な運動

適度な運動は、基礎代謝を上げ、太りにくいからだを作ります。いきなり激しい運動をするのではなく、負担の少ないウォーキングやサイクリングなどから始めてみましょう。ストレッチやヨガなどもおすすめです。

そして、その運動を習慣化することが大切です。通勤や通学の方法を変えたり、寝る前の日課に取り入れたりするとよいでしょう。できるところから少しずつ運動習慣を取り入れられるといいですね。

ストレスのコントロール

ストレスは気づかないうちに溜まっていることがあります。ため息の出る回数が増えた、やる気が出ない、寝つきが悪い、イライラしやすいなどの症状が見られたら、ストレスが溜まっているサインです。意識的にストレスを発散するようにしましょう。

おいしいものを食べる、友達や家族に会う、ゆっくり湯船につかる、休みの日に出かけるなど、自分に合ったストレス発散方法を考えてみることが大切です。

睡眠習慣の見直し

睡眠習慣は、ストレス解消やホルモンバランスを整えるのに欠かせません。必要な睡眠時間は人それぞれですが、毎日6時間以上8時間未満ぐらいと考えるとよいでしょう。

もし寝る前に、コーヒーやココアなどカフェインの入った飲み物を飲んだり、お酒を飲むのが習慣になっていたりする場合には、睡眠の質が下がるため、控えましょう。

医師の診断・治療を受ける

生理不順は、多嚢胞性卵巣症候群 や 無排卵周期症 など、なんらかの病気が原因である可能性もあります。生理不順が続いた場合には、早めに病院を受診し、医師の診察を受けるようにしましょう。

また、気づかないうちに無排卵になっていたり、婦人科の病気を発症したりする可能性があるため、1年に1回は婦人科検診を受けることをおすすめします。

引用元)月経症状に及ぼす生活関連因子の検討

生理不順と妊娠・不妊

生理不順があっても妊娠は可能なのでしょうか?生理不順と妊娠・不妊の関係を見てみましょう。

生理不順がもたらす妊娠への影響

生理不順がある場合、定期的な 排卵 がおこっていない可能性が高くなります。生理が来れば 排卵 がおこっているというわけではなく、生理のような出血があるだけで排卵がおきていない場合もあるのです。
そのため、生理不順がある場合は排卵の回数が通常より少なく、卵子 と 精子 が出会うチャンスも少なくなるため、妊娠の確率が下がってしまうことに。

また、生理不順を放っておくと 無排卵 の頻度が増え、妊娠が難しくなる場合もあります。原因や状態によって治療法が異なりますが、適切な治療を受けることで妊娠の可能性を高めることができます。

今すぐの妊娠を考えていない場合でも、将来の妊娠の可能性を高めるために早めに受診することが大切です。

生理不順と不妊治療

排卵がおこりにくくなっている場合、卵子と精子と出会うチャンスが少なくなるため、不妊治療によってそのチャンスを増やすことが必要です。方法としては以下が挙げられます。

飲み薬や注射によって排卵を促し、排卵のタイミングに合わせて性交します。また、精子の状態によっては、人工授精(カテーテルを使って状態の良い精子を子宮内に注入する方法)が勧められる場合もあります。

体外受精は 卵巣 から卵子を取り出し、体外で 精子 と 受精 させる方法です。受精卵 は数日培養され、順調に育ったものを子宮内に戻します。

顕微授精は 体外受精 の方法のひとつです。顕微鏡で見ながら、体外に取り出した卵子の中に精子を注入する方法です。

これらの不妊治療を行うことで、妊娠の確率を高めることができます。ただし、不妊治療をしても必ず妊娠できるわけではないことを知っておきましょう。生理不順は早めに治療し、生理周期を改善することが大切です。

引用元)日本生殖医学会 Q10.人工授精とはどういう治療ですか?
    日本生殖医学会 Q12.体外受精とはどんな治療ですか?
    日本生殖医学会 Q13.顕微授精とはどんな治療ですか?

まとめ

生理不順は多くの女性が経験する症状です。自然に回復する場合もありますが、数か月続く場合にはなんらかの病気が隠れている場合や、排卵がおこっていない場合もあります。
排卵ができない場合、妊娠が難しくなり、不妊となることも。生理不順が続く場合には、早めに病院を受診しましょう。
生理周期は女性の体調のバロメーターです。生理不順がおこったら、今一度、生活習慣や健診の頻度を見直してみましょう。

この記事を書いた人

田村 由美

子授かりネットワーク 編集長