赤ちゃんの目の健康は、今後の成長と発達にとって非常に大切です。しかし、赤ちゃんは自分で訴えることが難しいので周りのご家族や周囲の方が気づいて上げることが重要になってきます。赤ちゃんの目に起こる病気には様々なものがあり、その中でも弱視は重要な問題の一つです。
弱視は早期に発見できれば、将来的に大きな影響を及ぼすリスクを回避できる可能性があります。この記事では、赤ちゃんの目の健康を守るために、弱視の見分け方、治療や予防について詳しく解説します。ぜひこの記事を参考にして、赤ちゃんの目を大切に守っていきましょう。
弱視の原因とリスク要因
弱視は、1歳までに発症することが多く、正常な視力発達が損なわれ、視機能の異常を伴う状態です。原因として、生まれつきの眼の形や、先天的な病気、出生時の合併症などがあります。弱視の原因やリスク要因について知り、赤ちゃんの目に何が起こっているのか理解を深めてみましょう。
弱視が起こるメカニズム
ヒトの視機能は視入力、見る力により発達します。視力の正常発達に重要な視覚刺激。つまり視力発達の感受性は、生後1〜18ヶ月はとても高く、次第に感受性は減り8歳ごろまで続きます。弱視は、目の網膜や視神経が正常に発達せず、両眼の視力差が大きくなることで起こります。
弱視の原因には、斜視、近視、乱視、遠視、先天性白内障などの眼の病気があり、両眼性と片眼性があります。これらの病気によって、目の焦点がズレたり、光が正しく屈折されないことで、脳が適切な映像を認識できず、弱視を引き起こすことがあります。
弱視は、生後6か月から7歳頃までの期間に発見されることが多いため、早期発見と適切な治療が重要です。
引用)病気がみえる p.58 弱視
赤ちゃんが弱視になるリスク要因
赤ちゃんが弱視になるリスク要因は以下のようになります。
- ・屈折異常: 近視や乱視、遠視などの屈折異常がある場合、眼球の焦点が網膜に合わず、弱視につながることがあります。
- ・斜視: 目の筋肉がうまく働かず、片方の目が常に斜めになってしまう斜視がある場合、脳は正常な情報を受け取れず、弱視になることがあります。
- ・眼の病気や疾患: 眼の病気や疾患がある場合、視力の低下や目の動きの制限が生じ、弱視につながることがあります。
- ・先天性白内障: 赤ちゃんが生まれた時から白内障がある場合、眼の中のレンズが濁ってしまい、視力低下や弱視を引き起こすことがあります。
- ・早産や低出生体重: 視覚系が十分に発達していないため、弱視になりやすい傾向があります。
これらのリスク要因については、赤ちゃんの定期的な眼科検診で早期発見し、治療することが大切です。
弱視の症状と見分け方
赤ちゃんはまだ話せないため、視力に問題があっても自分で伝えることができません。しかし、弱視にはいくつかのサインがあります。早期に気づくことができれば、治療の成功率は高くなります。弱視の症状や見分け方について詳しく紹介します。
見分けるためのサイン
赤ちゃんが弱視である可能性がある場合、以下のサインに注目してください。
- ・目の真ん中が白く見えたり光るように見える。
- ・目の動きが不自然である
- ・光が入ったときに片方の目の瞳孔が小さく見える
- ・片目だけから頻繁に涙が出る
- ・目の前に物がある場合、片方の目で見づらそうにしている
- ・目をこする、擦る動作をする。
- ・目が急に動いたり、揺れる。
- ・片方の目で見ることが多く、片目を閉じて見たり、片目をつむって見たがる。
- ・見る方向が偏っているように見える。
- ・目の白目部分が、黒目の部分よりも多く見える。
- ・ご家族や親戚に子供の頃、目の病気(白内障・緑内障など)になった方がいる
これらのサインが見られる場合は、すぐに小児眼科専門医への受信をおすすめします。特に、赤ちゃんが3カ月以上になっても片目だけを使っているような場合や、目が不自然に動くような場合は早期の診断と治療が必要です。
赤ちゃんの成長とともに変化する症状
成長と共に症状は変化していきます。以下の表を参考にしてください。
年齢 | 症状 |
出生時~3ヶ月 | 目が泳ぐ、片目で見る。目の真ん中が白く見える。 |
4ヶ月~1歳 | 目の前を指で動かしても追えない、片目を閉じたまま見る |
1歳~2歳 | 片目を閉じたまま見る。まぶしがる。横目でみる。テレビに極端に近づいて見る。近くを見るときに目が寄る。 |
3歳~6歳 | 立体視ができずにボールなどを投げるのが苦手、視力検査で左右の目の視力差がある |
7歳以降 | 立体視ができずに球技が苦手、字を書くのが苦手、片目で見る |
上記の症状は一般的なものであり、必ずしもすべての弱視の子どもがこのような症状を示すわけではありません。また、これ以外の症状もあるので、眼科医に相談することをおすすめします。
弱視の診断と検査
弱視の診断と検査は、早期発見が重要です。赤ちゃんの視機能は成長過程にあるため、機能が発達しているかどうかを正確に評価するためには、専門医による検査が必要です。
診断と検査は、子供の年齢、症状の程度、および視力の問題の原因によって異なります。正しい診断と検査を受け、早期発見と治療に進めることができます。
正しい診断を受けるために
赤ちゃんの場合、まだ十分にコミュニケーションが取れないため、視力の問題を家族や周囲の方が気づくことが大切です。そこで、注意する点をいくつか挙げます。
まず、定期的に小児眼科医の受診を行うことをおすすめします。また、以下のような場合には早めに受診をしましょう。
- ・片目だけを使っているように見える
- ・頭を傾けたり、目をこらしたりしている
- ・黒目の中心が光る
これらの症状がある場合、視力の問題が疑われますので、専門家の診察を受けることが重要です。
赤ちゃんの弱視検査のポイント
赤ちゃんの弱視検査は、目の動きや視力をチェックすることが主な目的です。医師は、赤ちゃんの目を鏡で観察したり、瞳孔拡張剤を使い瞳孔を広げて、視力を測定します。
また、目の運動能力を確認するために、目を左右の動き、斜視の有無を調べます。3歳児検診ではかならず視力検査を受けてください。検査を受け、異常があればすぐに適切な治療を受けてください。
弱視の治療法と選択肢
弱視の治療法には、眼鏡や弱視トレーニング、手術などがあります。治療法の選択は、患者の年齢や弱視の重症度、原因などによって異なります。また、治療が早期に行われるほど、治療効果が高まり、放置すると視力の低下が進行するため、治療が不可欠です。
治療法の種類
治療法には、以下のような種類があります。
- ・健眼遮蔽:健眼を遮蔽し、弱視の目に多くの視覚刺激を与えることえ発達を促す療法
- ・点眼薬療法:アトロピンという瞳孔を開く薬剤を、視力の左右差をなくすために健眼に点眼する療法。
- ・眼鏡で矯正:屈折を矯正する眼鏡をかける
- ・手術療法:白内障手術や斜視手術
治療法により、効果や負担が異なるため、専門の医師と相談し、適切な治療法を選択する必要があります。また、治療には時間がかかることもありますので、根気よく治療に取り組むことが大切です。
引用)日本弱視斜視学会 弱視
弱視と眼鏡の役割
治療法の一つに眼鏡を使うことがあります。弱視の原因が屈折異常である場合は、眼鏡で視力を補正することが可能です。眼鏡を使うことで、眼球の焦点位置を調整し、明るさや色のコントラストを改善できます。ただし、眼鏡だけで完全に弱視が治ることはありません。
眼鏡は弱視を改善するために補助的な役割を果たします。弱視を治すためには、眼鏡とともに他の治療法も併用することが必要です。
早期発見と予防が大切
繰り返し述べていますが、弱視は早期に発見し、治療を始めることが大切です。特に赤ちゃんは、生後数ヶ月から1歳までの間が視機能の発達がスピードが早く、この期間に弱視が発見され、治療が行われることが重要となります。また、弱視の予防にも注意が必要です。注意ポイントや予防方法を解説します。
親が注意すべきポイント
弱視の早期発見には、親が注意すべきポイントがあります。例えば、日常生活の中で、
- ・テレビや本にかなり近づいて見ていることが多い
- ・視線がずれている
- ・頭を傾けたり、横目で見ている
目を観察してみて
- ・目の揺れがある
- ・黒目の中心が白っぽくなっている
などが挙げられます。
また、発達に遅れが見られる場合も、弱視の可能性があるため、定期的な健診を受けることも重要です。家族が日常生活でこれらのポイントに気を配り、早期発見につなげることが、弱視を予防するためには必要です。
弱視の予防方法と成長に伴うサポート
弱視の予防方法としては、赤ちゃんの目を刺激する遊びや視力を鍛えるトレーニングを行うことが大切です。例えば、おもちゃや絵本を左右に移動させたり、色や形を判断する遊びを取り入れて見るのも良いでしょう。
成長に伴うサポートとしては、定期的な目の健康チェックが必要です。スマホやパソコンを見せたままにしていないでしょうか。屋外での遊びや運動を増やすことも大切です。そして、眼鏡を必要とする場合は、早めに専門医の診断を受け、適切な眼鏡を使用することが望ましいです。
まとめ
赤ちゃんは症状を訴えることができず、弱視も見た目で判断するのも難しい病気です。そのため、少しでも気にかかるところがあれば、専門医の診察を受けることが大切です。
目の病気は不安になることも多いですが、医師やスタッフと共に、根気強く治療に取り組んでいくことで赤ちゃんを守ることができます。赤ちゃんの将来のために、ご家族や周囲の方と協力して赤ちゃんの目の健康を守っていきましょう。