妊娠を待ち望む方にとって、妊娠率を上げる方法はぜひ知っておきたい情報でしょう。どうすれば妊娠しやすいのか、どんな方法が妊娠率を上げるのか、具体的に解説します。
妊娠の仕組み
妊娠するには、下記の4つのステップを踏むことが必要です。
- ・ステップ1 排卵
約1か月に1回、左右どちらかの卵巣から卵管に向けて、卵子が飛び出します。生理周期が28日の場合、排卵が起こるのは前回の生理開始日から約14日後です。卵子は、卵管膨大部(らんかんぼうだいぶ)と呼ばれる卵管の端にキャッチされ、精子の到着を待ちます。
- ・ステップ2 受精
卵子のいる卵管膨大部に精子が到着すると、卵子の中に精子が入り、受精が起こります。ただし、卵子と精子にはそれぞれ寿命があります。卵子は約24時間、精子は女性の体内では約72時間の寿命です。この短い期間に卵子と精子が出会えば、受精する可能性があります。
- ・ステップ3 受精卵の移動
卵子と精子が受精すると、受精卵となります。受精卵は細胞分裂を繰り返しながら、卵管を進んで、子宮へと到着します。
- ・ステップ4 着床
受精卵が子宮内膜に到着すると、着床が始まります。着床とは、受精卵が子宮内膜に根を下ろしていくことをいいます。着床によって、受精卵がお母さんの体とつながり、子宮で育っていくための準備ができるのです。着床すれば、妊娠成立となります。
妊娠しやすいタイミングとは?
最も妊娠しやすいタイミングは、排卵日の1~2日前です。このタイミングに夫婦生活を営むと、卵子と精子が寿命を迎える前の元気な状態で出会えます。
そして、このタイミングをより正確に知り、妊娠率を上げる方法がタイミング法です。
タイミング法
妊娠しやすいタイミングに合わせて、夫婦生活を営むのがタイミング法です。
精子のほうが寿命が長いため、排卵したときに精子が卵管膨大部に到着していれば、妊娠する確率は上がります。そのため、病院で検査を受け、より正確に排卵のタイミングを知ることが必要になります。
排卵時期の予測方法は、経腟超音波検査(膣から超音波検査を行う方法)による卵巣内の卵胞(卵子の入っている袋)の大きさの計測です。卵胞はおよそ2cmの大きさになると排卵するので、大きさから排卵日を予測します。
卵胞の計測に加えて、尿検査や血液検査でホルモンの量を測ることで、より確実な排卵日の予測が可能です。
予測した排卵日の1~2日前に夫婦生活のタイミングを合わせることで、妊娠率のアップが期待できます。
行為前の過ごし方
妊娠率を上げるために、行為前に知っておきたいこと・できることについて確認しておきましょう。
基礎体温
基礎体温の変化は、排卵日や次回の生理開始日を予測するのに役立ちます。
基礎体温は、朝目が覚めたときに横になった状態のままで測った体温のことです。毎朝、基礎体温を測り、折れ線グラフに記録したものが、基礎体温表になります。
基礎体温表を記録すると、高温期と低温期の2相に分かれていることがわかります。低温期から高温期になる頃が排卵日、高温期から低温期になる頃が次回の生理開始日です。生理周期が安定している場合は、前回生理開始日から何日後に排卵日になるかを予測できます。
しかし、生理周期が乱れたり、不安定だったりする場合は予測が難しくなります。基礎体温だけでは、排卵日を正確に知るのは難しいため、他の方法とあわせて行うか、病院を受診するとよいでしょう。
おりもの
おりものは、子宮頸管(子宮内腔から膣につながる部分)や膣からの分泌物のことです。生理周期によって変化し、排卵日前になるとサラサラした水っぽさがありつつ、よく伸びる状態になります。これは、精子が動きやすく、子宮内に入りやすくするためです。
この変化を知っておけば、排卵日のおおまかな予測に役立つでしょう。
排卵日を過ぎると、おりものはドロッとした伸びにくい状態になるため、精子が入りにくくなります。
排卵検査薬
排卵直前に、LH(黄体形成ホルモン)というホルモンの分泌が急激に増えることが知られています(これをLHサージと呼びます)。
LHの増加は尿でも確認できるため、尿検査で排卵日の予測が可能です。排卵検査薬として、ドラッグストアで購入ができるため、自宅で簡単に排卵日を予測できます。
男性の精子は ためたほうがいい?
「男性は禁欲したほうが妊娠しやすい」という話を耳にした方もいるかもしれません。しかし、これは正しい情報とは言えません。
禁欲することで精子が増えたり、運動率が良くなったりすることはないため、禁欲する必要はないことがわかっています。むしろ、禁欲期間が10日を超えると、精子の質は低下します。
毎日SEXを行ったとしても、精子の数や運動率が低下することはないため、禁欲期間を設ける必要はないと言えるでしょう。
SEXの後、膣内を洗い流してもいい?
SEX後にすぐにシャワーを浴びたいという方もいるでしょう。子宮内に入った精子が洗い流されることはないため、シャワーを浴びても問題はありません。
ただし、膣内に残った体液を洗い流すのはやめておきましょう。膣内は乳酸菌の働きによって酸性に保たれており、外からの病原菌の侵入を防いでいます。膣内を洗うと、膣内の菌のバランスが崩れ、炎症を起こす原因になることがあります。
行為の仕方
妊娠率を上げるために、SEXの回数や頻度はどうすればいいか、みてみましょう。
回数
SEXの回数が増えれば、それだけ卵子と精子が出会うタイミングが合いやすくなります。
ただ、やみくもに夫婦生活の回数を増やすのは、ストレスの元になる場合も。妊娠しやすい時期を狙って回数を増やすのがよいでしょう。
頻度
米国生殖医学会は、排卵日の6日前から排卵日前日まで1~2日おきにSEXすると、妊娠する確率が高くなると報告しています。ただし、頻度が多い場合に減らす必要はありません。
また、無理に頻度を増やすことは、お互いのストレスとなりやすいので避けたほうがいいでしょう。
体位
SEXの体位によって妊娠率が変わることは確認されていません。そのため、お互いが満足できる体位が最適と言えます。
行為後の過ごし方
SEX後の過ごし方で妊娠しやすくなるのか、みてみましょう。
セックス後に腰を上げる と妊娠しやすい?
「射精後に女性が腰を上げると妊娠しやすい」という話を聞いたことがあるかもしれませんが、科学的根拠がありません。体位に関わらず、精子は子宮から卵管へと移動するので、好きな姿勢でゆったりと過ごしましょう。
妊娠率を上げるためのポイント
妊娠率を上げるには、日ごろから気を付けておきたい、いくつかのポイントがあります。詳しくみてみましょう。
痩せ・肥満
痩せすぎや太りすぎ(BMI19以下の痩せやBMI35以上の肥満)は、卵巣の機能に影響を及ぼし、妊娠しにくくなる場合があります。生理不順や無月経(3か月以上、生理が来ない状態)がある場合は、病院を受診し、ホルモンバランスや子宮・卵巣などの状態をチェックしてもらいましょう。
引用元)広島大学 【研究成果】肥満症や加齢による生殖能力(妊孕性)低下を卵巣の代謝機能の改善により回復させることに成功
食生活
妊娠率は、特定の食品を多く食べれば上がるわけではありません。栄養バランスの整った食事によって体調やホルモンバランスが整うことで、結果的に妊娠率のアップが期待できます。
特に、野菜や魚、乳製品、穀類、大豆製品などを意識的に取り入れることが大切です。
引用元)厚生労働省 妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針 ~妊娠前から、健康なからだづくりを~
禁煙
喫煙は妊娠率に重大な悪影響を及ぼします。女性の場合は卵巣の老化を早め、男性の場合は精子の質を低下させることがわかっています。
副流煙でも同様のことが言えるため、夫婦ともに禁煙することが大切です。
カフェイン
1日あたり5杯以上のコーヒーを飲むと、妊娠率に悪影響を及ぼすことがわかっています。カフェインの量でいうと1日あたり500mg以上になり、エナジードリンクや眠気覚まし用ドリンクなどの高カフェイン飲料にも注意が必要です。
温活
温活によって妊娠率が上がるかは、科学的にはわかっていません。しかし、冷えは卵巣機能の低下を招くことがあり、生理痛や生理不順の原因となることも。妊娠率にも影響を与える可能性があります。
そのため、体を冷やさないことが大切です。冷えやすい服装は避け、室温の調整や適度な運動を心がけるとよいですね。根菜類(かぼちゃやごぼうなど)や香味野菜(ショウガやニンニク)など、体を温める食品を取り入れるのもおすすめです。
引用元)厚生労働省 ヘルスケアラボ 冷え
助産師より
妊娠率を上げるためには、日頃の生活習慣の振り返りを夫婦で行うことがとても大切です。
最近は仕事をしながら妊活をしている方も多く、食生活が乱れていたり、体が冷えているケースが良くみられます。冷えを改善したことで生理痛も軽くなり、日常生活も楽になって妊活にも前向きに慣れたという方もいました。妊娠は自分の体でおこること。ぜひご自身値パートナーの心身を労ってあげましょう。