子どもがスマホを使う時間が増える中、「目が寄っている気がする」「見づらそうにしている」といった異変に気づいたことはありませんか?最近注目されている「スマホ内斜視」は、スマートフォンの長時間使用が原因とされる新しいタイプの目のトラブルです。この記事では、早期に発見するためのサインや、年齢別の特徴、家庭でできる予防策、治療の選択肢まで、専門的知見をもとにわかりやすく解説します。
スマホ内斜視とはどんな症状?
「スマホ内斜視」という言葉に聞きなじみがない方も多いかもしれませんが、これは近年急増している「急性内斜視」と呼ばれる目のズレの一種です。まずはその基本的な症状と背景を理解しましょう。
症状の特徴と発見しづらさ
スマホ内斜視は、物が二重に見える「複視」や、目の焦点が合わず視線が内側に寄るのが主な特徴です。特に子どもの場合、自覚症状がうまく伝えられないため、発見が遅れがちです。外見からは一見分かりにくいため、保護者の観察力が重要です。
スマホとの関係と近年の傾向
スマホ内斜視は医学的には「急性後天性内斜視(AACE)」と呼ばれ、特に1日4時間以上スマホを使用する子どもに多く見られます。近くを見続ける作業が目に大きな負担をかけ、眼の内側にある筋肉が緊張しすぎることで発症します。特にコロナ禍以降、オンライン学習やスマホ依存の増加により報告が急増しています。
年齢別:スマホ内斜視に気づくサイン
スマホ内斜視のサインは、年齢によって現れ方が異なります。年齢別の特徴を知ることで、より早く異変に気づくことができます。
未就学児(3〜6歳)の場合
この年齢層では「テレビを斜めから見る」「顔を傾けて見る」「片目をつぶる」などの行動に注目してください。また、スマホを長時間見た後に目をこする動作が増えるのも注意信号です。自覚症状を伝えるのが難しいため、保護者の観察が要です。
小学生〜中学生のサイン
小学生以降になると「ものが二重に見える」と訴えるケースも出てきます。また、スマホやタブレット使用後に「目が重い」「頭が痛い」などの症状が続く場合も注意が必要です。視線が合わない、集中力が低下するなどの行動面の変化もチェックしましょう。

見逃さない!親が注意したい行動・目の使い方
スマホ内斜視は初期にはごく軽微なサインしか出ないため、日頃からの観察と家庭でのチェックがカギになります。
家庭で気をつけるチェックポイント
- ・スマホを見るときの距離が極端に近い(20cm未満)
- ・片目だけを使って覗くクセがある
- ・使用後に黒目のズレが見られる
これらのポイントに気づいたら、すぐにスマホの使用を見直しましょう。
写真や動画でのチェック方法
顔正面からの写真を週1回撮影し、黒目の位置が左右対称かを確認しましょう。また、スマホ使用中の様子を動画で記録し、顔の傾きや目の寄り方などをチェックすると早期発見につながります。

今日から始める!スマホ内斜視の予防習慣
スマホ内斜視は予防できる病気です。家庭でのスマホルールの徹底と、日常習慣の工夫で子どもの目を守りましょう。
使用ルールとスマホ環境の整備
- ・30分使用したら5分休憩(30-5ルール)
- ・明るい場所で使う(暗所での使用は避ける)
- ・スマホは目から30cm以上離す
- ・寝る1時間前の使用は禁止
親子で楽しめる「目に優しい習慣」
- ・屋外での散歩や自然観察を日課にする
- ・親子での読書・ぬりえ・ボードゲームなど
- ・「目の休憩タイム」をアラーム設定することで習慣化

専門医による治療と相談のタイミング
早期発見・早期対応であれば、視力や両眼視機能への影響を最小限に抑えることが可能です。家庭だけで解決しようとせず、必要に応じて専門医を頼りましょう。
使用制限だけで治るケース
スマホ使用を制限し、生活リズムを整えることで自然に改善するケースもあります。ただし、2週間以上症状が改善しない場合は、眼科受診を検討してください。
治療の選択肢と眼科の対応
- ・視能訓練士による訓練(両眼視機能の回復)
- ・プリズム眼鏡による視線補正
- ・手術(重度または回復が見られない場合)
眼科では視力検査だけでなく、眼位(目の位置)の評価、立体視検査、両眼視機能検査などを通じて総合的に診断が行われます。
まとめ:まず“気づく”ことが最大の予防です
子どもは不調をうまく言葉で表現できないため、「親の気づき」がなにより重要です。スマホの使い方、目の使い方、生活習慣の小さな変化を見逃さず、必要に応じて専門医を受診することが、子どもの目の健康を守る第一歩になります。
参考文献・出典
日本眼科医会:若年者の後天共同性内斜視に対する提言
日本眼科医会:デジタルデバイスの小児および若年者に与える影響
日本眼科学会:子どもの斜視
国立成育医療研究センター: 若年者の後天共同性内斜視の特徴を明らかに—中高生に多く、使用時間を半減できた群で改善—日本眼科医会・日本弱視斜視学会・日本小児眼科学会・日本視能訓練士協会 :若年者の後天共同性内斜視に対する提言























